第12話

 唇と唇が触れ合う子ども騙しのキス。

 今の私には悲しいけれどそれが精一杯背伸びしたキスだ。経験値ゼロの状態から急に上級者向けの行為をしようなんて絶対に無理である。


 例え長年イメージトレーニングをしていたとしても、実際の空気感や力加減やメンタルは全然安定しない。


「……嬉しい」


 小さくつぶやいた羊子ちゃんの頬が上気する。……ああ、なんて可愛いんだろう。

 羊子ちゃんが喜んでくれると私も嬉しくて、私はもう一度自分から羊子ちゃんにキスをした。


「ん、……ぁ……」


 私からの触れるだけのキスを羊子ちゃんが大人のキスへと変化させる。

 私の唇を舌先で割り開いて、私の舌に羊子ちゃんの熱い舌が絡んできた。


 息継ぎがなかなか出来なくて鼻から抜ける私の甘えたような吐息に頭が茹だる。

 羊子ちゃんの手は自然と毛布の下の私の素肌に触れていた。


 羊子ちゃんの手がちょっと冷たいせいで、ゾクゾクと肌が粟立つ。……嘘。それだけじゃない。


 キスも羊子ちゃんが触れた所も全部全部気持ち良くて、羊子ちゃんから与えられた初めての快楽を思い出して体が期待している。


 無防備な私の体。毛布以外何一つ身を守る術がない私の体だけど、羊子ちゃんはひたすら腕や背中、腰とかそういうところにばかり触れてくる。

 つまりには触れてこない。


 それが焦れったくて、でも焦れったく思う自分がはしたなく感じて……、を延々と繰り返している。


「ん、……羊子、ちゃん……」

「なぁに? センパイ」

「ふ、ぁ……」


 羊子ちゃんは返事を返すと私の耳たぶに吸い付いた。

 普段は感覚の鈍い耳たぶなのに何故だか酷く気持ちがいい。


 ちゅ、ちゅぷ。

 至近距離で聴こえる耳たぶを吸う音に私はすっかり腰砕けになってしまって、体の力が抜けて羊子ちゃんに体を預けてしまう。


「センパイ、とっても可愛い。ねぇ、もっとあたしに溺れて……?」

「ひぁ、ぁ……」


 羊子ちゃんが私の耳に吐息混じりで囁いてくる。艶っぽい羊子ちゃんの声に体が跳ねた。


 羊子ちゃんの手は私の体温と交ざりあってもう冷たくない。

 その温かな手が私の胸を優しく包み込む。優しく感触を確かめるように揉まれて親指の先で胸の突起をコリコリといじられるともうダメだった。


「あ、あっ、ん……」


 だらしなく開いた私の口から言葉に出来ない声が漏れる。

 恥ずかしいから口を閉じたいのに、羊子ちゃんが嬉しそうに私を見ているとどうでも良くなって来るのだ。


「センパイも触ってみる?」


 羊子ちゃんはそう言うとベビードールを脱ぎ捨ててブラも脱いで豊満な胸を私の目の前に晒した。

 恋い焦がれて触りたくて仕方なかった羊子ちゃんの裸体が目の前にある。


「好きに、……していいですよ?」


 私は飢えた子どものように羊子ちゃんの胸の突起に吸い付く。

 馬鹿の一つ覚えみたいに、ちゅう、ちゅうと吸っているとすごくすごく満たされた。


「ふふ、赤ちゃんみたいですね……」


 そう言って羊子ちゃんは自身の胸の突起を吸い続ける私の頭を優しい手付きで撫でてくれる。


 羊子ちゃんの胸は大きくて柔らかくて私とは違う甘いバニラの香りがした。

 それが羊子ちゃんの体臭なのか香水なのかは私には分からない。

 ただその香りを嗅いでいると羊子ちゃんがほしくてほしくて仕方なくなる。


 不意に羊子ちゃんの手が私の下生えの下に伸ばされる。


「ん、ぁっ……や、……そこ……」

「……センパイ、やらしい」


 案の定、私の秘部は濡れていた。


 くちゅくちゅ。

 羊子ちゃんが私にやらしいって言うように、やらしい音と私の嬌声が部屋に響く。

 秘部の中心を擦られると頭の奥がじんじんと痺れて何も考えられない。


「センパイの初めて、全部ください」


 もう全部羊子ちゃんにあげている。初めての彼女もキスもエッチも全部羊子ちゃんだ。

 これ以上、何をあげればいいのだろう? でも私にまだあげられるものがあるなら、私は喜んで羊子ちゃんに差し出す。


「……挿れますね」

「へ、えっあっ、そこっ……」


 秘部の中心を擦る羊子ちゃんの指が止まり、そして蜜を溢れさせる秘口へと指がゆっくりと挿入された。

 知識としては知っていた秘口への挿入は私には関係ない事だと思っていた。


 痛くはない。少しの異物感が不思議な気持ちにさせる。僅かな快楽の名残と中心から快楽を得られない物足りなさに腰が揺れた。


 羊子ちゃんが手を動かす。

 先程よりも大きな水音がして、すごく恥ずかしい。


 出し入れされる羊子ちゃんの指。根本まで挿れられる時に羊子ちゃんの手のひらが秘部の中心を押して、それが気持ち良くて蜜はどんどん溢れてくる。


 何度も何度も出し入れして、秘口や内壁がじんじんと痺れてきた。

 それが快楽だと気付く頃には挿れられていた羊子ちゃんの指の本数も三本に増えていた。


「あっ、あ、んぁっ、は、あぁ」

「センパイ、中でイッて?」


 羊子ちゃんがキスしてきた。

 舌を吸われて甘噛みされて、私の喘ぎ声はくぐもる。

 重なりあった体。互いの胸の突起が擦り合わされてすごく興奮した。

 羊子ちゃんの声に眼差しに手管に翻弄される。


 気持ちいい。イッちゃいたい。頭の中はそれだけ。


「あっあ、あ、よ、羊子ちゃ……ぁ、だめぇ、もう……」

「うん、センパイ、イイ子」

「んぅっ、っ〜〜! イッ……く……! あ、ああっ!」


 羊子ちゃんの『イイ子』って言葉を合図に体中に力が入る。目の前がチカチカして背中が弓なりになり、脚がガクガクと動いて腰も上下に動いた。


 止められない体、止まらない快楽。


「センパイ、まだ頑張れますよね?」


 小悪魔みたいに笑う羊子ちゃんによって、私は許しを乞うまで喘がされ続けたのだった。

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