第3話
私の人生初のそして人生最後(重い)の彼女の名前は
今年、
ダークブラウンのふわふわウェーブのセミロングの髪、パッチリお目々にぷるぷるの唇。
身長はギリギリ一五〇センチ無い小動物みたいな小さめGarl(良発音)
私を見上げて照れ臭そうに笑う姿に何度昇天しかけた事か。
「……ミサちゃん、私、彼女出来た」
昼休みが終わりに近付いたので、羊子ちゃんと連絡先を交換して教室に帰ってきた私は夢見心地でミサちゃんに報告する。
雲の上を歩いているみたいな(歩いた事ないけど)気分で、ポーッとする頭のまま帰ってきたけど怪我しなくて良かった。
「あ、とうとう
「へ? 永遠じゃないけど?」
「……………………熱ある? 妄想? 可哀想に。早退する? とりま、永遠ッチに連絡しとくね?」
「待て待て待てィ! 本当だってば!」
「はいはい。嘘は良くないよ〜。てか嘘吐かないのが悠の良いところなんだからやめな〜?」
スマホを片手に操作しつつ私の額に手を当てて熱を計る仕草をするミサちゃん。優しいのだが永遠に連絡するのは、ダメ、絶対。
最初で最後(?)の彼女が永遠に取られてしまう危機感に身震いがする。
あまつさえ、あの可愛さを見たら、流石の永遠も羊子ちゃんを好きになる、かもしれない。
そうなったら、なんか、ショックだ。
多分、立ち直れない。
いや、私が永遠を好きとかそう言う話じゃなくてね?
説明が難しいんだけど、私が本気で好きになった子を――腐れ縁なだけで友達とか絶対に認めたくはないけど――長いつき合いのある友達の永遠が本当の意味で横取りするなんて…………考えたくない。
私は確かに永遠関連で過去痛い目に何度も合わされてるけど、別に永遠の事が嫌いな訳じゃない。いけ好かないとは思うし、ムカつく事も多いし、正直離れようと思ったんだけどね。
でも悪い子じゃない。ただ友達離れが出来ないだけ。
それに永遠だって女の子だし? 私が女の子を嫌いになるはずがない(断言)
根っからの女好きって、そのレベルなんだよ?
どんなに嫌がらせを受けても、からかわれても、相手が女の子だったら悲しい気持ちにはなるけど全部許しちゃう。
ふくよかな子でも世間が言う顔の造形が悪い子も、女の子ならみんな好き。みんな可愛くて愛しい。
まあ、今は大大大好きな羊子ちゃんがいるから、他の女の子はOut of 眼中。……鑑賞はするけど(矛盾)
「悠、熱があるなら早退しましょう。小松さん(永遠専属運転手)に車を手配してもらったわ」
「って、もう来てるじゃん!
「ミサさんから『悠が妄言を吐いてしまう程の熱があるみたいだからどうにかして欲しい』と連絡を頂いたのだけれど」
「間違ってるから、小松さんを帰してあげて!!」
「一体、どうしたの? ミサさん、説明してくれる?」
「かくかくしかじか、で」
「流石に伝わる訳……」
「悠、彼女が出来たなんて嘘はダメよ?」
「伝わったー!? じゃなくて! 嘘じゃないもん、彼女いるもん!」
小さな子どもよろしく思わず地団駄を踏む私をミサちゃんと永遠が残念な生き物を見る目で見てくる。今にも図鑑に登録されそう。
「そんなに言うならさー。証拠、見せてよ」
埒のあかない私の態度にミサちゃんがため息を吐きながら腕組みする。
ミサちゃん、いいけど机の上であぐらかくのやめよ? み、見え……、ないけども。
「今日、告白されて、さっき付き合ったばかりだから証拠という程の物はないけど、連絡先は知ってるよ」
「ふーん。じゃあさ、今日の放課後、カノジョ? ウチらに紹介してくれない?」
「ミサさん、そこまでしてもらうのは……」
「ダメダメ! 永遠ッチ! もしも悠がその子に騙されてたりしたら、どーすんの? 傷付くのは悠だよ? あ、傷付いた悠を慰めてのハッピーエンド狙いならほっとくけど?」
「……一理あるわね。どのみち悠が騙されてるなら傷は浅い方がいいわ。決まり、ね」
「そーいうこと!」
「うぅ……。紹介しなきゃダメ……?」
「「ダメ」」
二人の異様な圧を感じ、ミサちゃんに見張られながら私は渋々と羊子ちゃんに連絡する。
うぅ……。初めての連絡が友達に紹介させて欲しいとか重すぎないか? 頼む、断ってくれ!
羊子ちゃんからの既読はすぐに付いた。
心臓が早鐘を打つ中、すぐ様、可愛いウサギのハートマークのOKのスタンプが返ってきた。
続いて『どこで待ち合わせしますか?』と返事が来る。
「えっと、えっと、どうします?」
私は謎の敬語を使いつつ、二人にお伺いを立てる。
「そうだねー。このクラスに来て貰おうか? 永遠ッチもそれでいいよね?」
「それで構わないわ」
「りょ、了解です」
返事を送るとまたすぐに返事が来る。何かいいな、こういうの。こうやって愛が深まるんだろうなって現実逃避する。
可愛いヒツジがペコリとお辞儀をした「よろしくお願いします」のスタンプを最後に返信が途切れた。悲しい。
でも、本当に予鈴が鳴る三分前ぐらいなので仕方がない。
というか、永遠は自分のクラスに帰れよ。帰ってください。お願いします。
とうとう予鈴が鳴り名残惜しそうに教室を出て行く永遠の姿にホッとした。
永遠は優等生なので授業をサボる概念が無いようで良かったと思う。
「……何? ミサちゃん」
「……別に〜? 悠も薄情だな〜って思うだけ」
「別に〜? じゃないじゃん!」
「三沼うるさいぞー。今日最初にお前に問題問いて貰うからなー」
「すみません、先生。あの、やめてください」
「もう遅い。じゃあ授業を始めるぞ」
「ガッデム!!」
私は数学教師の理不尽な名指しに涙しながら午後の授業をこなしたのだった。
あー……胃が痛い。
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