7 女子生徒たちから誘われる


 翌日、登校すると僕のスキル紋章のことはもう誰も話題にしなかった。


 どうやら昨日頼んだ通り、マルグリット先生が上手く報告してくれたらしい。


 そして、その報告の概要が生徒の間にも広まったんだろう。


「はあ、よかったぁ……」


 僕は自分の席で安堵の息をついた。

 と、


「ねえ、ちょっといい? アーロンくん」

「今日の放課後、予定ある?」

「よかったら、あたしたちに付き合ってくれないかなぁ?」


 女子のグループにいきなり囲まれた。


 いずれもBランクやCランク――クラス内では上位のグループである。


 Aランク以上になるとクラスに一人いるかいないか、といったところで孤立していることが多い。


 だから学内カーストの最上位は、実はBランクが中心だったりするのだ。


「どうして、僕を誘うの?」

「だって、興味あるじゃない」

「あなたのスキルって、あなたが女とかかわることで効果を発揮するんでしょ?」

「えっ……?」


 どうして知ってるの――?


 もしかしてマルグリット先生がその辺を報告してしまって、情報が漏れたからか……?


 まあ、そこはバレたところで僕が断罪されるような話じゃないんだけれど。


「あたしたちにどういう恩恵があるのか、知りたいなぁ」

「そうそう。ステータスとかスキルがパワーアップするとか?」


 うっ、正解に近いぞ。


 スキルはパワーアップしないけどね、たぶん。


「試してみたいなぁ、アーロンくんのスキル」

「あたしたち、もっと強くなりたいのよ」

「もっとランクを上げたいのよね」

「将来、有利な条件で冒険者デビューしたいからね」


 女子たちは興味津々の様子だ。


 まあ、僕としてもこのスキルについて、もっと調べてみたい部分はあるし、誘いに乗ってみてもいいか――。




 というわけで、放課後になり、彼女たちと軽く食事に行くことになった。


 ただ――正直言って、僕は舞い上がっていた。


 今までの人生でモテ期というのを一度も経験していないから、こうやって大勢の女の子からチヤホヤされながら誘われたのが嬉しかった。


「ふふ、アーロンくんと今まで全然接点がなかったけど、けっこう可愛い顔してるね~」

「うん、綺麗な顔」

「ちょっと女の子っぽくない?」

「あ、わかる~」


 などと、女子生徒たちが口々に僕のことを話題にする。


 今までの僕は、女子から空気のようにしか扱われてこなかった。


 いるのかいないのかも分からない。


 存在感がまったくなく、存在価値もなく。


 それが女子から見た僕――アーロン・ゼラだったんだろう。


 なのに、今は違う。


「ねえねえ、アーロンくんのこと、もっと知りたい~」

「あたしも!」

「私も~!」


 女子たちが口々に騒いだ。


 ちなみにこの部屋は貸し切りになっていて、個室状態だ。


「僕のこと……って言われても、ええと」


 困った。


 そんな風に話を振られても、何を話せばいいのか全然分からない。


 いや、自分のことを話すだけなら、できなくはない。


 けれど、彼女たちに受けるような、興味を引くような話……となると、全然分からないのだ。


 何せ女の子に囲まれた経験なんてないし、なんなら女子と話す経験値自体が不足しすぎてるからね……。


 前世でも今世でも非モテだから、こういうときは本当に困る。


「ん? なんか緊張してない?」

「女子の中に男子が一人だから?」

「いや、その……」

「そうだ、アーロンくんの緊張をほぐすためにゲームでもやらない?」

「いいねいいね~」

「じゃあ、定番のあれ、いってみよっか!」


 女子の一人が叫んだ。


「王様ゲ~~~ム!」


 えっ、この世界にもあるの? 王様ゲーム。


 正直、そういうノリは苦手だ。


 とはいえ、断りづらい雰囲気で……そのままゲームは始まってしまう。


 僕は流されるままだった。


 ずっと非モテだったから、こういうときに上手く立ち回りができないんだ。



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