5 少しずつのパワーアップ
今までの僕はピンポン玉くらいの大きさの魔法弾しか作れなかった。
けれど、今作ったのは野球のボールくらいの大きさだ。
……まあ、それでも他の生徒よりは小さいけど。
「はあっ!」
そのまま撃つと、魔法弾は見事に的の真ん中に命中した。
「おお、コントロールも上がってる!」
そういえば、【アスモデウス】の効果は『女と交わると、僕自身と相手の女の力が上がる』――という趣旨のことをエルメリアが言っていた。
「もしかして僕がエルメリアと交わったから、魔法能力が上がった……!?」
厳密に言えば、彼女と契ったのは僕が紋章を授かる直前だけど――。
でも、僕の魔法能力が明らかに上がっているのは、他に理由が思い浮かばない。
「ってことは、やっぱり女の子とエッチなことをすれば、僕はもっと強くなれる……ってこと?」
と、
「ええええええええええええええええええええっ!?」
「な、なんだよ、それ!?」
「え、Fランのアーロンが、第一等級のスキル紋章を……!?」
周囲の生徒たちがいっせいに騒ぎだした。
「えっ? えっ?」
何のことだろう?
そう思って右手を見ると――そこにはハート型の紋章が浮かび上がっていた。
魔法弾を作ろうと魔力を集中したときに自然と浮き上がってしまったらしい。
僕の元に生徒たちが集まってくる。
「おい、それ第一等級のスキル紋章だよな!?」
「Fランクのアーロンがどうして……!?」
驚きと疑念の入り混じった声が、周囲から投げかけられる。
「アーロン・ゼラくん、君のスキル紋章は確か第五等級のはずよね? 一日のうちに突然スキル紋章の等級が四つも上がるなんて前代未聞よ」
と、背後に教官が立っていた。
ショートヘアに知的な雰囲気の容姿をした、三十代半ばくらいの色気のある美女だった。
マルグリット・パター教官だ。
ゲームのメインヒロインの一人で、彼女のルートに入ると、主人公のアイゼリックとの間に教師と生徒の『禁断の恋愛イベント』が発生したりする。
「詳しく話を聞きたいわ。放課後、私の教官室に来てちょうだい」
「は、はい……」
うっ、なんだかまずいことになって来たのか……!?
そして、放課後。
「アーロン・ゼラ、入ります」
僕は気が進まないながらも、マルグリット教官の元を訪れた。
絶対、この紋章のことを追及されまくるんだろうなぁ……。
さて、どう立ち回るべきか。
まさか、魔王から力を与えられて新しいスキルを身に付けました、なんて言えないし……。
「さっそくだけど、君に聞きたいことがあるの」
マルグリット先生は僕の正面で椅子に腰かけている。
長い脚を組んで座っていて、ドキッとするほど艶めかしかった。
「……どこを見ているの?」
「はっ! す、すみません……」
僕が先生の足に見とれていたことは、すぐにバレてしまったみたいだ。
うう、気まずい。
「まあ、いいわ」
けれど先生は大人なのでそれ以上は咎めず、
「昨日までの君のスキル紋章は最低ランクの『第五等級』。使用可能スキルは【魔法弾】と【シールド】【ヒール】の三つだけ。間違いないわね」
「は、はい」
ちなみにゲーム内では魔法についても『スキル』扱いである。
「それが今日、一限目の個別練習の授業では、君の手に第一等級のスキル紋章が浮かんでいた。たった一日のうちにどうやってスキルをそこまで強化できたのか……あるいは別種のスキルが身についたのか、教えてほしいわね」
先生の視線が厳しい。
「そ、その、たとえば僕のスキルが突然強くなったとして、それって何か問題でもあるんでしょうか?」
「あるわね」
ますます視線が厳しくなった。
「一つや二つならともかく四等級も一気にスキル紋章のランクが上がるなんて、通常ならあり得ないの。それを為しえるのは、おそらく神や悪魔並の力がいる……たとえば高位の悪魔と契約した、とかね」
「……!」
いきなり核心に迫られ、僕は言葉を失う。
「私が今言ったことが正解なら大問題よ」
「あ、悪魔だなんて、そんな……あはは」
どうしよう。
誤魔化すか?
それとも本当のことを話すか?
「えっとですね……」
僕は焦ってパニックになりかけていた。
魔王から力を与えられた、なんて知られたら、僕の処遇はどうなるだろう?
もしかしたら、魔王に属する人間として――世界への反逆者とみなされたりするんだろうか?
さながら魔女狩りのように。
「どうしたの? 何か説明しづらいことでもあるのかしら?」
マルグリット先生が椅子から立ち上がり、僕に近づく。
「魔族はね、有史以来この世界に何度も攻め入ってきている。だから魔族に味方をしたり、彼らから力を授かるような存在は許されないの。これは世界の共通認識――こんなことは言わなくても分かるよね?」
「え、えっと……」
つまり、魔王に力をもらった僕は『世界の敵』ってことか?
いやいや、僕は別に人類に敵対するつもりとかないから!
ポウッ……!
その時、僕の右手の甲に勝手に紋章が浮かび上がった。
「これは……?」
先生が訝しげに僕の手を見た。
同時に、紋章全体が光を放つ――。
『紋章保持者の危難と判断、スキルを自動発動します』
『【魅了】レベル1を発動しました』
『【発情】レベル1を発動しました』
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※ここからは1日1話、昼12時更新です!
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