第12話
ある日の帰り道、風と千歌は並んで歩きながら、風のテストの成績について話していた。千歌は不思議そうな顔をして、「風ってどうしてそんなにテストの成績が良いの?」と、再びその理由を尋ねる。
風は少し考えた後、無邪気に笑いながら、「実はね、家で塾をやってるから、学校の勉強はだいたい終っていて、勉強は全部自分でやっちゃうんだ。」と答える。
千歌は驚きながらも、「え?家で塾?」と聞き返す。
風はうなずきながら、「うん、父親と母親が一緒に塾を経営してるんだ。だから、勉強も家でやるし、学校の勉強なんかもう復習みたいなもんだよ。」とさらっと言う。
千歌はちょっと驚いた表情を浮かべて、「…勉強しないと、ご飯とか作ってくれないの?」と聞く。
風は少し笑いながら、「いや、さすがにご飯作らないわけじゃないけど、親が共働きだから、家のことも自分で手伝わなきゃいけないんだ。」と話す。「だから、学校の勉強も家でやっちゃうし、塾の仕事も手伝ってるから、自然と勉強に力入れるようになっちゃった。」と続ける。
千歌はその話を聞いて、少し顔を曇らせる。「大変なんだね…でも、家のことも塾の手伝いも、全部風がやってるってこと?」
風は少し照れくさそうに肩をすくめ、「まあね。でも、それが普通だと思ってるし、家族みんなで協力してるから。」と言う。
千歌はその話を聞いて、風の負担に気づき、優しく言った。「本当に大変だね…。でも、すごいな、ちゃんと自分で頑張ってるんだね。」
風は照れ隠しに笑って、「そんなことないよ。ただ、みんなが頑張ってるから自分も頑張らなきゃなって思ってるだけ。」と答える。
千歌はしばらく黙って歩きながら、その背中を見つめていた。風が持っている強さや責任感に、なんだか心が温かくなるような気がした。
そして、少し歩きながら、「風、すごいなって思う。私ももっと頑張らなきゃって思うよ。」とポツリと言った。
風は振り返り、にっこりと笑う。「千歌も頑張ってるじゃん。お互い、頑張ろうね。」
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