第10話
朝練の後、風はやや疲れた様子で教室に入ってきた。授業が始まる前、もう少し休憩したかったのだろう、眠そうに机に顔を伏せる風を千歌は気にかけていた。
風は実は、少し頭が良くて、学校の勉強は自分のペースで進めてしまうタイプだ。教科書はすでに家で先に読んでしまっているため、学校ではほぼ復習の時間になっていた。それが彼女にとっては退屈で、授業中にすぐに眠くなってしまう原因だった。
「風、また寝ちゃうの?」と千歌は呆れたように声をかける。
風は目をこすりながら、「ああ、だってもう習ったことだし、家で全部終わらせちゃったから…」とぼんやりと答える。
千歌は少し苦笑いを浮かべながら、「でも、授業中に寝ちゃうのはダメだよ。せっかくみんなが勉強してるのに。」
「いや、でも…教科書読んだりしてるし、今更ここでやっても無駄だなって思って。」風はちょっと不満げに言うものの、千歌の指摘に反論する気力もない様子だ。
千歌はため息をついて、「まあ、分かるけど、せめて授業を聞いておくのが礼儀だよね。」と、やや優しい口調で言った。
「うーん…そうだけど。」風はあまり乗り気ではない様子で、再び机に顔を埋める。
千歌は目を細めて、「あんまり寝てばかりだと、後で大変だよ?」と心配そうに言ったが、風はやはり眠気に勝てず、再び目を閉じてしまった。
その姿を見た千歌は、呆れながらも「本当に、風って学校の勉強、どうしてそんなに軽く考えるんだろうね。」とつぶやいた。
風は寝ながらも、「だって、すぐ終わるし…」と、夢の中で答えるような声を漏らした。
千歌は風の無頓着さに呆れながらも、やっぱりどこか面倒見が良くて、心配している自分がいることに気づき、少し微笑んだ。
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