第8話

剣道部にとって初めての大会の日がやってきた。小さな大会ではあったが、部員たちは緊張と興奮の入り混じった気持ちで会場に向かっていた。試合に出るのは風、城松、部長を含む8人の部員たち。しかし、全員が本試合に出られるわけではなく、その中で選ばれたメンバーが本試合に臨むことになる。


風は、試合の初戦を担うことになった。部長の指示で、最初の試合に出るのは風だ。風は緊張しつつも、しっかりと気持ちを引き締めて試合に臨んだ。相手の選手が竹刀を振り下ろす瞬間、風はそれを躱そうとするが、相手の素早い攻撃にやや反応が遅れてしまう。その結果、風は面を一撃で決められてしまい、初戦で敗北を喫した。


試合後、風は少し落ち込んでいたが、すぐに立ち上がり、城松に向かって言った。「次、頼んだよ。」


城松はその言葉を聞くと、無言で頷き、二番手として試合に向かう。彼は力強く、どこか自信に満ちた目をしていた。試合が始まると、城松は速さと力強さを駆使して、相手の隙をつき、無事に勝利を収めた。少し余裕を見せながら、城松は風に向かって軽く笑ってみせる。


しかし、次に出場した部員たちが立て続けに敗北。3番手の部員が相手に一撃で決められ、4番手も同じように負けてしまった。試合の流れは完全に相手チームに傾き、部員たちは焦りと悔しさを感じていた。残すは部長だけ。状況は厳しい。


そして、最後に出てきた部長。涼里部長は冷静に竹刀を握り締め、深呼吸を一つしてから試合に臨んだ。部長は落ち着いていて、相手の攻撃を巧みに避けながら反撃を繰り出し、見事に勝利を収めた。その勝利はチームのための最後の勝点となり、部員たちは安堵の表情を浮かべた。


「よし、これで終わりだ。」涼里部長は勝利後に息を吐きながら言ったが、その表情には誇らしげなものがあった。


試合が終わり、剣道部のメンバーは悔しさと達成感を交錯させた。しかし、試合の結果に関わらず、この初めての大会で得た経験は、彼らの成長に繋がる貴重なものとなった。


風は少し肩を落としながらも、次回への意気込みを新たにしていた。「次は絶対に勝ってみせる。」 その言葉には、試合で感じた悔しさをバネにした強い意志が込められていた。


試合が終わり、剣道部はその日の経験を次の練習に生かすため、チーム一丸となって努力を誓ったのだった。

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