第7話

剣道部のマネージャーとしての初日、千歌は道場の隅に座り、部員たちの動きをじっくり観察し始めた。彼女はただの見学者ではなく、部員たち一人一人の強みと弱点を冷静に分析し、メモを取ることに集中していた。剣道は技術的な競技でありながら、個々の精神状態や態度も大きく影響するため、千歌はその点も見逃さないようにしていた。


最初に目をつけたのは、エースの城松だった。彼は力強く、早い動きが特徴的で、攻撃的なスタイルで圧倒的な強さを持っている。しかし、時折その自信過剰な態度が隙を生むことがある。次に、風の動きを観察した。風は落ち着いていて、技のキレがあり、相手の動きを予測する力が強い。しかし、剣重に少し欠ける部分があり、体力を消耗しやすいようだ。


千歌はその分析をノートにまとめ、思ったことを書き込んだ。「城松は力強いけれど、集中力が足りない時がある」「風は技術は高いけれど、体力が足りない。練習を重ねて体力をつけるべき」など、彼女なりの視点で部員たちを評価していった。


その日の練習後、涼里部長が千歌の元に歩み寄った。涼里は少し興味深そうに千歌のメモ帳を見つめてから、にっこりと笑った。


「千歌、君、なかなか面白い視点を持ってるね。こういうレポートを書いてくれると、部の方針にも役立ちそうだ。」涼里はそう言って、千歌にパソコンを渡した。「これ、自分のパソコンだから、使っていいよ。もし、この分析をもっと詳しくまとめたいなら、ここでやってみて。」


千歌は驚きながらも、涼里の親切な提案に感謝した。「え、いいんですか?ありがとうございます!」


涼里は少し照れくさそうに笑って言った。「うん、部活の強化には、こういうデータも大事だから。君の観察力を活かして、もっと詳しくまとめてほしいな。」


千歌はその言葉を胸に、涼里のパソコンを使って部員たちの分析を更に深めることを決意した。これからも剣道部の成長をサポートするため、千歌は自分の役割をしっかりと果たしていくことを誓った。

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