第6話
剣道部の朝練は、他の部活と少し違った。部員たちはまず道場に集まり、部長の指示で静かに正座をして精神を整える時間が始まる。部長の神陽花涼里(じんようかすずり)は、剣道の技術よりも精神的な集中を重視していた。剣を振ることよりも、座禅を組んで心を落ち着けることに価値を置いていたのだ。
「今日は、少し長めに座禅を組んで、気持ちを整えてから始めよう。」涼里は部員たちに声をかけながら、静かに指示を出した。
部員たちはそれに従い、道場に静寂が広がる。風も初めてその光景を見て、少し戸惑いながらも静かに座った。心を無にし、深い呼吸を繰り返す。剣道部の練習が、ただ技術を競うものではないということを感じ取った。
しばらくすると、座禅の時間が終わり、涼里がゆっくりと立ち上がった。
「それじゃあ、今日は少しだけ剣を振ってから、基本練習を始めよう。」涼里は微笑みながら、みんなに声をかけた。
風もその後、竹刀を手に取り、軽く素振りを始める。しかし、練習のペースは他の部活に比べて少しゆっくりで、技術的な訓練よりも心を落ち着けることに重点を置いているのがわかる。剣道の動きだけではなく、心を整えることが重要だと、風は少しずつ理解し始めていた。
その後、涼里が部員たちに向かって言った。「そうだ、今日はひとつお願いがあるんだ。うちの部、マネージャーがいないから、誰か手伝ってくれる人を探してるんだ。もし、誰か良さそうな人がいれば、声をかけてほしい。」
その言葉を聞いて、風はふと思い立ち、千歌に後で声をかけようと思った。
剣道部の練習を終え、風は千歌を見つけて、話しかける。
風
「千歌、剣道部のマネージャーやってみない?」
千歌は少し考えた後、明るい笑顔を浮かべて答える。
「面白そうだね!やってみようかな!」
風はその返事を聞いて、少し驚いたが、すぐにうなずいた。「頼んだよ。」
次の日の放課後、剣道部の部室の前で千歌はワクワクしながら、部長の涼里に近づいていった。「あの、私、マネージャーやりたいです!」
涼里は少し驚いた様子で千歌を見たが、すぐに柔らかな笑顔を浮かべて言った。「ありがとう!これで、少しは剣道部も助かるかな。」
その後、千歌は剣道部のマネージャーとして、練習をサポートすることになった。
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