第4話
次の日、風は学校でいつも通りの一日を過ごしていた。昨日の剣道部の出来事は、少しだけ気になる程度だったが、それを気にする間もなく放課後が訪れた。剣道部の部室に向かうと、部員たちの顔が少しそわそわしているのが見えた。どうやら何かがあるようだ。
その時、部室の扉が開き、部長が姿を現した。部長の名前は神陽花涼里(じんようかすずり)。彼女は、風の知らない新しい風が吹き込んだような、堂々とした雰囲気を持つ女子部長だ。
「風さん、ちょっと話があるんです。」
神陽花部長が風に向かって微笑みながら声をかけてきた。風が一歩近づくと、部長は少し神妙な顔つきになり、周りの部員たちが静まり返る。
「実は…昨日の城松の行動について、私から謝罪させてもらわなければならないんです。」
風が少し驚いた表情を見せると、部長は続けた。
「城松は、口が悪いところはありますが、性格が悪いわけではないんです。ちょっと女子慣れしていないところもあって、ああいうふうになってしまったのかもしれません。でも、新入部員に対する態度としては、あれはよくなかったと思います。」
部長は、落ち着いた口調で城松について説明し、そして少し間を置いてから、再び風に向き直った。
「だから、城松にはしっかりと謝罪させます。」
その言葉を受けて、部員たちの目が城松に向けられる。しばらくして、城松が部室の奥から顔を出した。顔は昨日と変わらず無愛想で、少し恥ずかしそうにしている。
「昨日は…すまなかった。」
城松は、しぶしぶとした様子で頭を下げた。風はその姿を見つめ、何も言わずに黙っている。風の冷静な視線に少しばかりの緊張を感じながらも、城松はなんとか言葉を続けた。
「言い過ぎたよな、俺。悪かった。」
風は一瞬、目を閉じてから、ゆっくりと口を開いた。
「謝るなら、もういいです。昨日のことは終わりですから。」
その一言に、部室にいた誰もが少しほっとしたような表情を浮かべる。城松も少し安堵したような顔を見せ、深く頭を下げた。
「本当にすみませんでした。」
神陽花部長は、風が受け入れてくれたことに安堵し、部員たちにも何気なく目を向ける。
「これからは、城松もきちんと対応するように言いますから、みんなで協力して部活を盛り上げていきましょうね。」
部員たちもそれぞれ軽く頷き、空気が少し和らいだ。風はその様子を見て、やっと緊張がほぐれるのを感じた。
その後、風は剣道部に正式に参加することになり、みんなとの関係も徐々に改善されていった。城松もその後は風に対して、少しずつだが少し礼儀正しく接するようになり、風の実力と冷静さに対して尊敬の念を抱くようになった。
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