第2話
梅雨の重い空気が漂う中、千歌はいつものように学校へと向かっていた。しかし、心の中はいつもと違っていた。昨日と同じ景色が広がっているけれど、昨日の自分とは何かが違っているような気がする。その理由をまだ言葉にできないままで、彼女はただ無心に歩いていた。
そして、突然、学校に到着した矢先、目の前を一人の少女が走り抜けた。その少女は、まるで風のように軽やかで、ただ一度も千歌の目を合わせることなく、校門を通り過ぎていった。
「また新しい転校生が来たんだ」と、千歌は心の中で呟く。
その後、教室で転校生が紹介されると、千歌はその少女が自分が見たあの子だと気づく。その少女は「夏伊川風(なついかわかぜ)」と名乗り、自己紹介をした。
その時、顔に貼られた絆創膏がクラスの注目を集め、すぐにクスクスという笑い声が教室に広がった。
「お、なんだよその顔、喧嘩でもしたのか?」と誰かが冗談を言ったが、夏伊川風は顔を赤くしながらも、少しだけ笑って「ちょっとした事故です」と答えた。
千歌はその言葉に何かを感じた。彼女の強がりや、少しの照れくささが、まるで自分と重なるようだった。
放課後、千歌はひとりで歩きながら思った。新しい転校生、風はどんな人なのだろうと。顔に絆創膏を貼っていることから、少し荒っぽい性格なのかもしれない。しかし、どこか彼女が持つ鋭さが千歌にはわかる気がしていた。
その夜、千歌は部屋の窓を開け、外の静かな風を感じていた。幸せは淡い、そんな思いを改めて感じながら、眠る準備をしていた。
でも、何かが違う気がした。風が、また新たな何かを千歌にもたらす予感がしていた。
そして、風の影響で、彼女の世界は静かに、でも確実に変わり始めていた。
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