居残り

「雄太くん今日も居残りー?」

と貶すような声が聞こえる。

いいだろ、僕は勉強ができないんだ、

宿題終わらせてから帰るんだ。

いいだろ、いいだろ?

誰もいない教室の後ろの方に誰かいる?

だれだろ?

髪はボサボサで白髪、

継ぎ接ぎのような衣服を着ている。

げげ、こんなの幽霊に違いない。

怖い、帰ろう、そう思い、

ランドセルに教科書を入れた。

それを避けるように教室を出ようとする。

あ‥あ‥と声がする。

怖い、やっぱり幽霊だ。

逃げよう、逃げよう。

「宿題が終わらない」

そう彼は震えた声で言った。

不思議に思い声をかける。

「どうしたの?」

「宿題が終わらないんだ」

「終わらないの?」

「今何年だ」

「今は2024年だけど」

「安政7年じゃないのか」


とても不思議な体験をした。

彼は1860年から居残りをしているのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る