2枚目の花びら

 「えっ、お姉さんこそ、こんな時間に何して・・・。」明らかに自分より年上の彼女に向かってとっさにそう言う。「やだなぁ。お姉さんって呼び方。私、そんなに年齢いってそうに見える?」そう言って自嘲した彼女は、教卓の上から飛び降りた。  飛び降りた時の音が全く聞こえなくて、思わず目を見開いた。「今、音がしなくて驚いたでしょ!」僕の表情から察したらしい彼女が楽しそうにそう言う。あっ笑うと意外と子供っぽいんだな。そんなことを考えるくらいには彼女に魅了されていて、気がついたら「お姉さんは何者ですか?」と言う言葉が口から出ていた。

 「だからぁ!お姉さんじゃないってば!失礼だなぁ!」彼女は僕の方に歩み寄ると、僕の前で両手を腰に当てて屈み、頬を膨らませてそう言った。「じゃあ、いくつなんですか?」と年齢を尋ねると、「レディに年齢を聞くなんて失礼だなぁ。」と呟いた後で、「成人済み!でも、お酒は飲めない年齢だよ!」と言って笑った。

 「成人してるならお姉さんでいいじゃないですか。僕、10歳ですよ。」と返すと、「じゃあ、もしかして、ここのクラスの子?」と質問された。何者なのかという質問に答えが返ってこなかったので、少し警戒して「そうですけど。」とだけ言っておいた。


 「わぁ!現役の男子小学生じゃん!やば!」先ほどまで年上扱いするなと怒っていたのに、年上っぽいことを言ってきた彼女。「さっきまで、年上扱いにキレてませんでした?」と指摘すると、「いやっ、ちがっ!」と慌ててから、「ほら、成人すると学生時代が懐かしくなるじゃん!」と共感を求めてくる彼女。いや、僕成人してないから分からないんだけどと思ったが、彼女が共感してほしそうな表情をしていたのでこくりと頷いた。

 「うわ、めちゃくちゃ気ぃ使えるじゃん!小学生の時の私にも見習ってほしかったわぁ。そしたら死ななかったのにぃ!」手を前で組んで、ふらふらしながらそう言う彼女。彼女の動きを目で追っていたが、死ななかったという彼女の発言が引っ掛かって、「死ななかった・・・?」と聞き返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る