3ー2

PM 2:00 おたる水族館


 尾行して来た魔術師達を束縛し、これから尋問を行う。彼らは、拘束されている影を無理矢理剥がそうとしているが、自身の体を蝕むだけと知らず、それでも解こうとしている。


「無駄だ。そいつは私が解かない限り拘束し続ける。まぁ、欠損してもいいなら、無理矢理剥がしてもいいがな」


「くそ! 何故、俺たちが付けていたのかわかったのか!?」


「馬鹿だな。魔術師なら、尾行するなら、魔力を消すのが常識だろうに。バレバレだったんだよ」


 魔術師達は、私に逆探知されていた事に、驚愕する。まぁ、魔力を消した時点で、彼らを誘い出すには成功したが。

 ともあれ、私は彼らに聞き出すことは多い。何せ、これ以上厄介ごとを起こされてはせっかくの旅行の意味が無いからだ。


「さぁ、お前達には聞きたいことが山ほどある。まずは、何故この街に?」


「へ! お前に行っても意味がない!! お前も、あの噂話に釣られて来たんだろう!?」


 減らず口を叩く魔術師に向けて、私は小杖タクトを振るう。すると、彼の影が、人体から離すように引っ張られる。


「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!! 腕が!!」


「一応警告しておくが、お前達には発言権はないぞ? こいつみたいになりたくなかったら、おとなしく言うんだな」


「こ、こんなのは不当だ!! 貴様、それでも魔術師か!?」


「そうだとも。私も魔術師の端くれ、くだらん噂話に釣られて殺し合う魔術師だ」


 彼らは、私の発言にどよめきだす。すると、1人の魔術師が、私に向かって話し始める。


「わ、わかった。私が知っていることを話そう! だから、そいつを解放してくれ!!」


「……いいだろう。発言を許す」


 私の圧に屈したのか、彼は例の噂話について話しだす。


「あ、あれは、ミュンヘンにいた頃の話だ。私も魔術の探究に勤しんでいた頃だ。とある魔術師の話でな、どうも、『オタル』と言う街には、かなり上質で莫大な『魔素マナ』が眠っているという噂が広まっていたんだ。

 そしたら、その『魔素マナ』を手に入れた者は、現議長を上回る魔力をこの手にすることが出来るという話だったんだよ!

 でも、実際はそれをめぐっての殺し合いだった! 私達は騙されたのだよ!! 奴に!!」


「奴? そいつは誰だ?」


「し、知らないんだ!! 奴は私達が殺し合う様を見ながら、あの運河に潜む何かを独占しているに違いない!!

 だが、奴から話があったんだ! ある魔術師を監視し続けたら、あの運河に潜む物を山分けしようって!!

 そうすれば、命の保証はするっと!!」


「なるほど、脅されたという訳か。それで、話はそれだけか?」


「あぁ、私が知っているのはこれだけだ!! だから、頼むからこれを解いてくれ!!」


「まだ話は終わってないぞ? それと、このくだらん噂話を流した奴は誰だ?」


「だから知らないと言っているんだ!! 頼むから、私を――――――――」


 尋問している最中、魔術師の体に異変が起きる。なんと、彼の体が膨れ上がって来たのだ。


「おぼぼぼぼ!! だ、誰か……だすげ……」


「まさか、人間爆弾か?」


 私は、彼から距離を置くようにして離れる。その時だった。彼の体が破裂し、肉塊が四方八方に飛び散る。

 彼の物と思われる血が、おたる水族館の壁に飛び散ってしまい、肉片に一部も壁に飛び散る。


「い、いやああああああ!!」


「待て! まだ話が!!」


 私は、慌てて束縛した魔術師達を止める。すると、その中に1人が、私とぶつかり、何かを落としてしまった。

 そして、彼らも先の魔術師のように破裂する。どうやら、元凶と思われる魔術師により、時限式の術式を付与され、人間爆弾に変えられたみたいだ。


「ここまでやるとはな。よっぽど、リリィに反抗的な魔術師らしい。だが、これをどうにかしないと、騒ぎになるな」


 私は眼鏡を外し、ダーインスレイヴを展開する。ダーインスレイヴを鞘に収めた状態で地面を叩き、彼らの血を回収した。


「――――!!」


 眼鏡を外しているせいか、いつも以上に魔力を感じる。ここまで、魔力を感じることは滅多にない。


「何だこれは? まさか、『仮面の魔女ジャンヌ』から貰ったものが、抑えていたのか?」


 どうやら、『仮面の魔女ジャンヌ』から貰ったものは、『魔素マナ』を抑える代物だったらしい。先の、魔術師と衝突したせいで、それをどこかへと落として待ったみたいだ。

 だが、今のところは抑えられているみたいだ。封印形態でも、ダーインスレイヴは魔力を吸い取るので、それの影響だろう。

 しかし、『仮面の魔女ジャンヌ』から貰ったあれがない以上、私の魔力感知が運河の方に集中してしまっている。

 これでは、尾行している魔術師を捉えるのは難しいだろう。そう思い、私はラスティア達が待っている所へと向かう。

 ――――――――――その時だった。


『愚かな。『仮面の魔女ジャンヌ』より貰ったあれを失くすとは。損なことをしておる』


「何が言いたい?」


『あれはお前の魔力の探知を阻害するもの。愚かな魔術師どもを捉えられたのもそれがあってのこと。

 だが、それを失くした今、お前の魔力は全てあの運河に引き寄せられたようだ。

 これでは、魔術師を捉えるなんざ、不可能に近いだろう』


「つまり、運河に潜む何かをどうにかしないと、私の体が害されるのか?」


『さぁな。だが、まずは実態を知ることだ。対処は、それからにすればいい』


 そう言い残し、『魔女やつ』を姿を消した。その反動で、私はひどく汗をかいた。

 どうも、『魔女やつ』が出てくるとひどく体力を消耗するようだ。

 スマホを見ると、ラスティアからの連絡が溜まっていたみたいだ。

 こうして、私はラスティア達がいるであろう場所へと向かうのだった。 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る