第3節 魔術師連続変死事件

3ー1

第3節 魔術師連続変死事件


小樽滞在 3日目 AM 7:00 小樽市内のホテル


 それからと言うもの、私は今日も一睡することが出来ず、ずっとタブレットを眺めていた。

 例の噂話にまつわる死者の大半は、殺し合いによる外的損傷か、毒などによる間接的殺害が多いらしい。だが、『魔素マナ中毒』によるものは、このタブレットには何も記載されていないようだ。

 どうもそれが引っ掛かる。そうと決まれば、魔術院で調査が始まるのだが、それすらも起きていない。噂が広まり過ぎて、確証的な物が得られていないみたいなのだ。

 だが、そろそろ本腰を入れて行わないといけないのも事実だろう。

 しかし、魔術師が動かない以上、こちらも迂闊には動けれない。私達は、今日も小樽の街を観光するのだった。

 食堂に行くと、昨日と同様、私は席番をしながらコーヒーを飲む。すると、『優越の魔女』が言った通り、昨日の魔術師の遺体のついてのニュースが流れていた。

 ニュースでは、大々的に『急死』した事と伝えているみたいだ。


「急死ね。それならしっくり来るか」


「またニュース?」


「あぁ、昨日の魔術師が発見されたようだ。他の魔術師に毒殺されたのかもね」


「そうなのかな? でも、あの運河には色々調べないといけないね」


「そうだね。でも、全容が掴めきれてない以上、私達が迂闊に手を出した面倒になる。まだ静観をするつもりだ」


「それがいいね。ねぇ、姉さん。今日は水族館に行かない?」


 ラスティアは、水族館に行きたいことを提案する。


「別にいいよ? 運河の調べは夜にするし、それまでは時間があるからね」


「ありがとう。朝食が終わったら、行く準備しよう?」


 私は、やれやれと思いつつ、彼女の提案に乗る。どの道、夜までは時間がある上、やることも特にない。

 それなら時間を潰し、その後にすればいいだろう。私は、ラスティアと明日香の食事を見ながら、コーヒーを飲んだ。

 ラスティアにまた別の服を着させられながら、私達はホテル出てバス乗り場に向かう。

 どうやら、水族館に行くには、バスで移動するのがいいらしい。ラスティア的には車を借りたかったが、バスで行くのがいいとのことで、仕方なくバスで行く。

 バスで数十分で移動し、水族館に向かう。どうやら、険しいところに立っているらしい。

 ここが俗に言う『おたる水族館』だ。北海道でも有数な水族館で、県外、国外からいろんな所から来場するらしい。


「……」


 やはりと言うべきか、今日もつけられている。いい加減にしたい物だが、運河に何かかある以上、彼らは魔術師と思ったものは見境なく追尾するらしい。

 仕方がないので、私は気がついていないふりをすることにした。入場料を支払い、私達は水族館に入場する。

 水族館らしく、水棲の生き物たちが出向いてくれている。私達は、しばらく水族館の中を歩き回った。

 屋内を歩き回り、屋外の展示場に向かう。そこでは、ペンギンのショーをやっていた。飼育員の言うことを聞かないペンギンたちを見て、観客は笑いだす。2人はそれを見て、他の観客と同様に笑う。

 だが、私は上から私達を見ているだろう魔術師の動向を観察する。


「やはり見ているな」


「姉さん?」


「いや、何でもないよ」


 ラスティアが心配そうに私を見る。明日香も同様に私を見るが、その後すぐにペンギンショーの方に視線を戻す。

 その後はトドの食事ショーを見て、3人で驚く。ダイナミックに、鮭を飲み込み、観客は皆驚く。

 こうしている内に、時刻は午後になっていた。


「そろそろご飯にしよう?」


「もうそんな時間ですね。姉さんもする?」


「そうだね。私は席を取っておくから、2人は買って行くといい」


 私は、席をとりに行き、2人は食券に向かう。席に座っていると、後ろの席で誰かが座った。


「意外と呑気なのね。いつまでも動かないから、来ちゃったわ」


「『仮面の魔女ジャンヌ』か。そっちは忙しそうだね」     


「あら、『優越の魔女マリー』とあったのね。まぁいいわ、あなたに伝えたいことがあるわ」


 いつもの女子生徒の姿で、「『仮面の魔女ジャンヌ』が現れる。どうやら、私に用があるらしい。


「ことを急ぐべきよ。小樽このまちに、魔術師が次々と来ているわ。早くしないと、面倒な事になるのは必然ね」


「どう言うことだ?」


「例の噂話、それに釣られてきた魔術師が数を増しているってこと。あなたも知っているてしょう?

 今だって、結構付けられてるわよ」


「なるほど。では、早い内に手を打つべきか?」


「そうね。向こうも、あなたの動向を見るのに必死でしょうね。なら、あなたなら分かるでしょう?

 こちらから動けばいいのよ。あなたなら楽勝でしょう?」


「結局はこっちから攻めればいいことか」


「そう言うことね。それと、私が渡したあれ、無くしちゃダメよ? あれは後々大事になるんだから」


「肝に免じておくよ。君はどうする?」


 私がそう言ううちに、「『仮面の魔女ジャンヌ』は去っていた。彼女は珍しく多忙を極めているらしい。

 すると、食事を持ってきた2人が、私のいる席に戻ってきた。


「どうしたの?」


「いや、ただ待っていただけさ。それと、トイレ行ってくる」    


「うん、私達はご飯食べてるね」


 私は、そそくさとトイレに向かう。トイレに向かうふりをして、魔術師の動向を探る。その時に、私は魔力を遮断することで、彼らの行動を観察した。

 彼らは、私の魔力を感知できなくなったことで、私のことを探す。その隙をつき、私は小杖タクトを召喚し、彼らの影を拘束する。


「な、なんだ!?」


「体が動かない……!! どうなっている!?」


 彼らは、影を縛られたので、動揺している。それを見ていた私は、遠くから彼らに近づいていく。

 さて、何から話してもらうか。そう思い、私は彼らを尋問するのだった。       

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