2ー4
小樽滞在 2日目 AM 6:00 小樽市内のホテル
昨夜は全くと言うほどに寝付けられなかった。2人が寝ている所をよそに、持ってきた魔術書を読みながら、ただ朝を待っていた。昨日の殺害に使われていた魔術を調べていたが、持って来た魔術書にはそれを記載していなかったのである。
風呂あがりに買ったビールを飲みながら、魔術書を完読したら、時刻は6時になっていた。
私は朝早くに風呂へと向かう。大浴場での朝風呂も醍醐味といえよう。
風呂に入りながら、体を癒していると、人が入ってくる。同じく、小樽に観光しに来た者達だろう。彼女達も、ここの大浴場に朝風呂をしに来たのだろう。
「ねぇ聞いた? また運河の近くで殺人事件があったんだって」
「聞いた聞いた。てか、今日のネットニュースに上がってたよ、それ」
「怖いよね〜。しかも、凄惨だったんだって。すごい斬られ方してたんだとか」
「やめてよ〜。せっかく、旅行ができた思ったのに〜」
前で体を洗っている女性達が、話し出す。どうやら、魔術院の隠蔽が間に合っていないのか、惨殺事件として上がっているらしい。
実態なんて知らなくてもいい。そう願いたいが、野次馬は自分が知らないと満足しないものだ。
勘弁したものだが、知ってしまったらどうしようもないものもある。そうあって欲しくないのが、切なる願いだ。
大浴場から上がり、体を拭きながら、ルームウェアを着る。バスタオルを回収の箱に入れ、部屋に戻るとラスティア達が起きていた。
「おはよう、姉さん。昨日は眠れなかったの?」
「おはよう、ラスティア。あれからずっと起きていたよ」
「そうなんだ。大丈夫?」
「なんとかね。それで、何処に行くんだい?」
ラスティアは、チケットを見せる。どうやら、朝食をしに大広間に行くみたいだ。
「これからご飯に行くんだよ? 姉さんも行くでしょ?」
「そうだね。コーヒーの一杯くらいは飲むさ」
そういい、私たちはバイキングがやっている広間に向かった。その広間には、大勢の宿泊客で賑わい、皆各々が料理を皿に移していた。
ラスティアと明日香は、それぞれ料理をさらに運んでいく。私はというと、コーヒーを淹れ、席番をしていた。無論、それは食べ物が食えない訳じゃない。食べる所を見るのが好きだからだ。
コーヒーを飲みながら2人を待っていると、大広間にあるディスプレイから、ニュースが流れる。
『昨晩、小樽市で、新たに3名の旅行客が遺体で発見されました。これで一連の殺人事件での死者は8人です』
どうやら、魔術師達の遺体が警察に回収されたようだ。メディアでは、例に噂話にまつわる出来事を、連続殺人事件として取り上げているようだ。
これも、魔術院が仕組んだ『表向きの事件』とやらだろう。実際は、血みどろの殺し合いとは、固唾を飲んでも言えないのが事実だろう。
だが、犯人が誰なのかもわからない。その元凶は、やはりと言うべきか魔術師が流したデマが広まったのか、はたまたあの運河には、喉から手が出るほどの代物が眠っているのか。
でも、それを座して考察するにはメリットがない。こうして観光しながら、調べるしかないのだ。
「姉さん。どうしたの?」
「あぁ、ニュースを見ていたんだ。例のアレ、世間一般様じゃ『連続殺人事件』と取り扱われているらしい」
「まぁ、魔術なんて、所詮は
ラスティアと明日香は、料理を持って来て戻ってきた。彼女達も、戻って来た際にニュースが目に映ったらしい。
明日香は両手いっぱいの料理を持ちつつ、皮肉混じりに例の噂話について言う。彼女の言うことは、一般人の視点からしたら正しいことではあるのだ。
そうして、2人が食事をしている所を見ながら、私はコーヒーをおかわりする。機械で淹れたコーヒーだとしても、やはり侮れないものはある。でも、私はラスティアが淹れたコーヒーの方が好きだ。
それからなんだかんだで時間が過ぎ、私たちは食事を終え部屋に戻る。ルームウェアから私服に着替えると、ラスティアがキャリーケースから服を出す。
「これって、ラスティアの?」
「ううん。これは、姉さん用に持ってきたの。せっかくの旅行なんだから、オシャレもしないとね」
「別にいいよ。旅行で来ている訳じゃないんだから」
私が拒否すると、ラスティアは無理やりルームウェアを脱がす。下着だけになった私に、持って来た服を着させる。
そして、満足したのか、着させた服に合う髪型を整える。
「よし! 我ながら上出来だね」
「上出来だねって、私は許可した記憶はないんだが?」
「別にいいじゃん。おしゃれするくらいさ」
明日香はニヤけながら、私の服装を見る。彼女は彼女で、パーカーにジーンズとその上にコートを着ている服装だ。
私は、ロングのワンピースにブーツを履かされている状態だ。ノースリーブにしたのはラスティアのオーダーメイドだろう。そして、銀色の長い髪は、後ろに一本の編み込みとしている。
ラスティアはブラウスにロングスカートという組み合わせだ。だが、服の関係か、ラスティアの自慢の豊胸が目立ってしまう。
おかしいな。同じ物を食べているだけなのにな。
「そろそろ行かないと、ルームサービスに人が来るね」
「そうだね、んじゃ、行こうか」
ラスティアと明日香は急いで部屋を後にする。私も、2人の後を追うように出る。
こうして、私達は小樽市内を観光するのだった。
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