第2節 小樽へ
2ー1
第2節 小樽へ
PM 4:00 札幌駅
地下鉄でさっぽろまで行き、そこから乗り換えてからJRに乗る。地下街を歩きながら、周りを見渡すと、マスクをつけてる人しかそこにはいなかった。
落ち着き出したとは言え、未だに例のウィルスの脅威は消えたわけじゃない。これも何かのお役所仕事かと思うと、何だか嫌気が指す。
この国の同調圧力は変なところがあるので、私たちは一応マスクをつけるのだ。
地下街を抜け、改札を経由してJRのホームに着く。すると、明らかにおかしいローブを纏った人物達が、駅のホームでうろついていた。
「しかしまぁ、相変わらず人が多いね。小樽にはどれだけの観光客が来てるのかな?」
「あの街は日本でも有数な観光地ですからね。本州とかから人が来ますよ」
ラスティアと明日香は、この人だかりについて話す。かく言う私は、ローブの人物達に視線を向ける。どうやら、彼らは何かを警戒しながら、JRを待っているようだ。
「姉さん?」
「あの感じ、魔術師か?」
私は、彼らに向かって視線を合わせる。向こうはすぐにでも私を殺したいだろうが、この人混みでは安易に魔術を使えなく。渋々と私を観察することくらいでしかできないのだ。
そうしているうちに、JRがホームに到着する。乗る列車は、新千歳空港から来た快速便だ。
私たちは、その列車に乗る。列車の中は、観光客と下校や退勤した人たちで溢れかえっている。肌寒い外とは違い、人肌の熱気で車内は蒸し暑いくらいだ。
ガタンゴトンと、列車の移動する後が聞こえる。いつも地下鉄ばかり使う私には馴染みのない音だ。
だが、その雰囲気を壊すものもいる。そう、あそこで立っている魔術師達だ。彼らは、私の隙を見ているのか、視線を私の方に向ける。
しかし、私は魔力を探知しているので、彼らが攻撃してくるタイミングを見計らい、それを迎撃する構えを整っている。
彼らも馬鹿ではないらしく、私に探知されていることは察し済みのようだ。
列車がトンネルを越え、列車の真横の風景は海が広がる。この路線は海の近くを走行しているので、こういう景色が見れるのが醍醐味だ。
明日香とラスティアは、その風景に興奮している。だが、私は以前として魔術師達を観察している。彼らもまた、私にいつ殺されるか警戒しているのだ。
「すごい街だね。崖と海の間に、人の住む場所があるみたい」
「そうですね。私も、小樽は初めてですし」
「札幌で暮らすようになってからは、旅行なんてできやしなかったものね。例のウィルスといい、魔術院の規則といいでそんな気分じゃなかったよ」
「でもいいの? 事務所預かってもらって」
「あの2人なら大丈夫でしょう。私の信頼における奴らだし」
「それもそうか」っと安心するラスティア。変に知らない奴に、任せるよりは100倍マシなのも事実だ。
『まもなく、小樽。小樽』っと車内のアナウンスが流れる。それに伴い、荷台に乗せていた荷物を下ろし始めていく。
小樽駅に到着し、徐々に降り始めていく。私たちも降り、改札を抜けて小樽の街に入る。
「すごい……。レトロな雰囲気が漂う不思議な街だね」
「あの建物から、歴史を感じる。明治の開拓期の名残りなのかな?」
2人は、初めて足を踏み入れる小樽の街に興奮を覚える。確かに、かつての北海道の中心地だった頃の名残が色濃くに残っている。奥の建物だって、その時の建物を再利用しているものが多い。
それに、沖が近いのか、やたらと魚介系の居酒屋が多い。どれも値段が高いのは、観光客向けだろうか。
「……」
にしても、魔術師達が私のことを見ている。どうやら、彼らは警戒しているらしい。私が魔術院の回し者なのかが把握したのか、無理に出ることができないでいるみたいだ。
「姉さん? 何かいるの?」
「あぁ、さっきから魔術師の気配が感じる。例の噂話に釣られた連中だろう」
「それだけじゃないよ? 前にも数名、私達のことを見ている」
明日香がいうに、観光客に紛れて潜伏しているものもいるらしい。彼らは観光をしているふりをして、例の『
しかし、ホテルのチェックインが迫っているので、私達は今日から泊まるホテルに向かう。
ホテルに入ると、まずは荷物を置く。3人一部屋で取ったので、ベットが3つある。
「うぅ〜。疲れた〜」
「ただ移動しただけだろう?」
「でも、隣町なのに、旅行をしてるって気分。不思議だね」
「北海道に住んでいると、不思議とそうなるよ。そのくらい、広いんだからさ」
札幌と小樽は、地図上では隣同士になっている。だが、お互い観光地としては有数の街なので、不思議と旅行気分になるものだ。
ラスティアがいうに、国道一本で行けるらしい。しかし、その道のりが険しく、山を切り抜いて作ったような道路を進むしかない。それに、札幌と小樽の繋ぐ重要な道路なので、交通量も多いそうだ。
私は、煙草を吸うために部屋を出る。喫煙室に入ると、誰かから電話がかかってきた。
「もしもし」
『あら、もう着いたのね。意外と早かったじゃない?』
電話の相手は『
「まぁね。それより、何のよう?」
『一応、警告にね。どうやら、あなたの現地入りが魔術師達の間ですでに広まったそうよ。連中、今はあなたにマークしているみたい』
「だろうね。ここに来てから、何人かに目をつけられている。どうも、私が例の噂話とやらに嗅ぎつけて来たと思っているらしい」
『そうね。この街にいる間は、妹君と、あなたの所の野良猫と一緒にいなさい。みんな、あなたが1人になるのを待っているわ』
「肝に免じておくよ。では、またね」
そういい、私は通話を切る。そして、私は煙草を吸い終え部屋へと戻る。部屋へ戻ると、2人は夕食に向かう準備をしていた。
こうして、私は3人で小樽の街でディナーをするのだった。
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