1ー4
PM 1:00 探偵事務所 如月
それから一週間が経過し、いよいよ小樽に向かう準備を整える。私はいつもの鞄に、自分の荷物を入れ終え、ラスティア達も旅行用の鞄に荷物を入れ終える。
後は魔術院からの要人が来るのを待つだけだが、まだ来ていない。どうやら、また遅れているみたいだ。この間のセシリアの事といい、東欧での戦争は、西欧の交通網までに影響が出ているらしい。
今日からは休業にしているので、客は誰も来ない。私は、魔術書を読みながらコーヒーを飲みつつ、魔術院からの要人を待つのだった。
「最近、小樽で連続変死事件が起きているみたい。やっぱり、例の噂話に乗った魔術師なのかな?」
「もう隠蔽が追いつかなくなったのか? それほどまでに、犠牲者が増えているようだね」
「警察も、観光地だからという理由ですぐ切り上げているらしいよ。そうしないと、印象が悪くなるようだしね」
ラスティアと明日香は、ネットニュースを見ながら話す。噂話には嗅ぎつけていないが、どうもマスコミにも知れ渡っているらしい。
まぁ、現状は変死事件として取り上げられているようだが。ともあれ、それが間接的に魔術師に知れ渡っている可能性を考えると、マスコミを口封じで抹殺しにかかることも考えられる。
それが私個人的な杞憂であって欲しいが、日本のマスコミと言うのは、余計な事をよくする為、そうなってしまうにも時間の問題だ。
「ん? それ、持っていくの?」
明日香は、私が鞄に『グリモワル真書』を入れるところを見る。
「一応ね。例の噂話の正体が、これに載ってるかもしれない。まぁ、備えよければ何とやらさ」
私は、『グリモワル真書』を鞄にしまい、鞄の封を閉める。しばらく3人でお茶を嗜んでいると、事務所のベルが鳴る。ドアを開けると、そこには小さな朱い髪の秘書官がそこに居た。
「お久しぶりです、アルトナさん。リリィ議長の任命で一時的に派遣されました!」
「君だったのか? てっきり美羽が来るものかと思ってたよ」
イロハが事務所に訪れてきた。どうやら、魔術院から派遣されたらしい。私はイロハを出迎えると、後ろから知ってる顔が現れる。
「待たせたわね。色々とやってたら1週間待たせたわ」
「いや、十分だ。それより、引き続きとかしないとならないから上がってくれ」
イロハとセシリアを迎え入れ、事務所の引き継ぎを行う。3泊4日とはいえ、『
面倒だと思うが、『
「さて、早速だけど、こっちとしては引き継ぎ事項は特にないよ。ただ、そこの部屋には入らないで欲しいくらいかな? 寝床は空いている部屋を好きに使ってくれて構わないよ」
「承知しました。こちらとしては、やはりと言うべきか、例の噂話についての隠蔽が間に合っていない事ですね。
死体が散見し過ぎて、隠蔽に動ける魔術師が少ないのです」
「間に合ってないのか?」
「そうね。このままでは、世間一般様の不穏な噂になるのも時間の問題ね」
どうやら、ことは一刻を争う状況のようだ。日を追うごとに死者が増え、今となってはその処理に人を避けれない状況のようだ。
そうなる前に、早いところ小樽に行く必要がある。だが、かといって事を急かすわけにもいかない。
「――――――」
状況が颯爽と変わり続ける。この一週間で、ここまで酷くなるのかと思うと、虫唾が走る。
この噂話には、何があるのか? 私は、この一週間でまとめたファイルをみんなの前で開ける。
「驚いた……。まさかここまで調べていたなんてね」
「師団ですら辿り着いていないところまで行ってるなんて。さすがアルトナさんですね」
2人は私が調べたファイルを見て驚く。記載されている内容は以下のとおりだ。
① 魔術師達がなぜ集まるのか?
・そこには、膨大な『
②そもそも魔術師達がなぜそれを求めるのか?
・膨大な『
③ 膨大の『
・現状不明。あるいは、知っているものによるハッタリなのかも真意がわからない状態である。
以上が私はまとめたものとなる。だが、文面だけじゃ全てがわかるわけではない。実際に、この目で見ないとわからない事だってあるのだから。
「でも、これだけ調べても、実態が読めないのが事実だ。それを確かめるためにはまず――――」
「小樽に行く以外ありえないっと言うわけね」
「そうだ。現状、実態がわからないものを調べるには、現地に赴くしかない。それが手っ取り早いのもある」
セシリアとイロハは頷く。ラスティアも、同じく頷く。
「そうなら、もう行くしか無いわね。ここからは結構の距離だけど、問題はないわね?」
「あぁ、だが、今回は車が使えないのがネックだが、仕方ない。小樽まではJRで行くよ」
「そう。では、私はイロハと留守を預かりつつ、何かあったら連絡するわ」
「あぁ、頼んだよ。それと、私の酒なんだが、飲んでもいいが散らかすなよ? あれ、結構いい値をする代物しか置いていないんだから」
はいはいと言わんばかりに、セシリアは私たちを見送る。久々の旅行もあってか、心が昂る。しかし、目的は例の噂話の実態だ。
こうして、私たちは邸を後のし、札幌駅へと向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます