第2話 トモちゃん
「おはよぉ―湿気やばいね」
「お、トモちゃんおはよ。今日は早いね」
「うん、雨降りそうだったから早めに来たの」
時刻は午前七時半。薄暗い教室の中、私たちはいつもより少し大きめな声で話す。教室には私とトモちゃんの二人しかいないので、開放的な気分でいられる。
前に言ったが私は家だと勉強が進まないので、こうして朝早く学校に来て課題を終わらせている。家と違って教室だとやっぱり集中できるし、トモちゃんにも答えを教えて貰えるので一石二鳥だ。
それに、朝の冷たい空気が漂うこの教室雰囲気もとても気に入っている。
「あっ、ここ答えなしだよ―」
「ほんとに?」
「うん、覚えてるも―ん!」
――トモちゃんは嘘をついたことがない!
「信じよう」
トモちゃんとは小学校の頃からの仲なのだ。どうやって友達になったのか未だに二人とも思い出せないが、私が親友と呼べるのは彼女くらいだ。トモちゃんは昔から人懐っこくポジティブで明るい性格だ。そのため昔から友達がたくさんいる。
一方で私と言えば、コミュ障というわけでは決してないが友達は少ない。ある程度仲良くなれば普通に話せるが、初対面の人とは気まずい雰囲気になってしまうことが多い。自分のような人間を陰キャと呼ぶのだろう。
トモちゃんを羨ましく感じることは多かった。でもやっぱり話している時は楽しいし、とっても良い子なのだ。それに約束は絶対に守る、嘘もつかない。
さすがトモちゃんである。
「何考えてるの―?」
と少しかすれた声で話しかけてくる
「や―、いい友達を持ったな―ってね」
「なんじゃそれっ、自分で解け!」
*
~チャイムの音~
やっと授業が終わった。チャイムが鳴ったとたん目が覚めるのはなぜだろうか、ほんのさっきまで眠かったのに。
そういえば今日は委員会があるんだった。一か月ぶりなので、すっかり場所を忘れていた。教室の後ろにある掲示板を見に行くと、同じく委員会の場所を確認しに来ているクラスメイトがいる。やっぱり皆も忘れちゃったか、
福祉委員⋯三年一組
そうだった、三年生の教室でいつ入ればいいかタイミングがよく分からなくてキョドってたんだった。そう考えているうちに、ここ二組の教室にも顔の知らない上級生達が入ってきた。学年は靴紐の色で区別がつく。一番前の席でまだ寝ているトモちゃんを見つけた私は、ここが広報委員会の活動場所だということを思い出した。
私は足早に教室を出ると、廊下は押し競まんじゅうの状態になっていた。教室を出遅れた新入生と委員会に来た上級生とデカいリュックのせいで、ぎゅうぎゅうである。それでも小さな声で「すみません」と言いながら身を縮めて進む。
やっとの思いで満員廊下を通り抜けた私は、また足早に三年一組に向かい出す
――間に合ったか
息を落ち着かせながら前回と同じ席に座る。教室のつくりは同じはずなのに、私の教室と雰囲気が全く違うのは不思議である。まもなくしてガラガラと戸が開き、担当のおじいちゃん先生がやってきた。全員揃ったようで、委員長と副委員長らしき人も前に出てきて話を始める。
「・・・コホン、時間になったので委員会を始めます。前回の自己紹介と大雑把な活動内容の説明で流れは掴んで貰えたと思うので、この時間から活動に取り掛かろうと思います。」
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