第4話

 暗い部屋の中央に、再び一枚の紙が置かれ、そこには複雑な数式が記されていた。今回の数式は、数学的な難解さだけでなく、まるで「生きる意味」を問いかけているかのような深い構造を持っていた。


「この数式に正解すれば、二人の命を取り戻せる。しかし、誤れば君たちも命を失う」


 一真はペンを握りしめ、目を細めて数式を見つめた。その横で、翔太もまた、その問いの答えを必死に考えていた。


「翔太、この数式の問い…『生きる理由』を聞いているように感じる」


 翔太は深く考えた末、静かにうなずいた。


「そうだな。俺らにとって今生きる理由は、二人を救い出すこと。あいつらと一緒に生きてここを出ることだ。それが俺らの答えだ」


 一真も微笑を浮かべる。


「友情か…いい答えだな。僕にとっても、こうしてお前の隣で戦ってきたこの友情が、生きる理由だ」


 そう言って一真は、最後の解答を記入した。問題を解き終わり、しばらくの沈黙が流れた後、老店主が声高らかに言った。


「おめでとう。君たちは”生の解”を導き出した」


 その瞬間、暗闇から、優斗と玲奈の姿がゆっくりと浮かび上がった。二人は自分たちがどうしてここにいるのか理解できない様子で、混乱した表情を浮かべている。


「…優斗!玲奈!」


 翔太は驚きと喜びで声を上げ、駆け寄った。優斗も、翔太の姿を見て一瞬呆然としながらも、すぐに笑顔を見せ、駆け寄って翔太と抱き合った。


「翔太…お前、また助けてくれたのかよ…!」


 翔太は涙をこらえながら、優斗の背中を力強く叩いた。


「当たり前だろ。お前を置いてなんか行けるわけないだろ、バカ!」


 その言葉に優斗も笑いながら、「お前、本当に俺のことずっと助けてくれるんだな」と、小さな声でつぶやいた。一方で玲奈も、一真と再会してほっとした表情を浮かべていた。玲奈は一真をじっと見つめ、「一真、ありがとう。いつも冷静で頼りになるあんたがいてくれて、本当に良かった」と言葉を絞り出した。


 一真は少し照れたように顔をそむけたが、微笑みを浮かべて玲奈に答えた。


「そんな大したことはしてないさ。ただ、僕も君たちとここで別れたくなかっただけだ」


 四人は再会の喜びに包まれ、命の重みと絆の深さを改めて実感していた。


 その様子を静かに見守っていた店主が、ゆっくりと口を開いた。


「若者たちよ、試練を乗り越え、再び仲間を取り戻したその絆を、どうか忘れるな」


 店主の言葉に翔太はうなずき、真剣な表情で言った。


「あたりめーだ」


 店主は深くうなずき、少し優しい目つきで彼らに言葉を続けた。


「では、君たちに脱出の道を開こう。これが最後の試練だった…君たちは自由だ」


 言葉とともに、部屋の奥に一筋の光が差し込み、出口が現れた。優斗が翔太の肩を叩きながら笑顔を見せた。


「よしゃ、おまえら!これで本当に外に出られるなっぽいな!!」


「もうこんな場所、二度とごめんよ」


 玲那は吐き捨てるようにそう呟いた。一真も小さく笑って、「そうだな、こんな命のかかる数式なんてもうたくさんだ」と返した。


 四人はまばゆい光の中に足を踏み入れた。

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