愚痴が言いたい。

明鏡止水

第1話

仕事の愚痴が言いたい。

母に言うと辛い言葉が返ってくるからいつも父に聞いてもらってる。

今日は利用者の男性に「コイツ!」とか「アンタ」って呼ばれて。

車椅子で足轢かれて、脛にガンガンぶつけられて、手で体をはたかれた。


途中で割り込んできた看護師はこっちの事情も汲み取らないでやさーしく利用者に接して良いところだけ掻っ攫ってく。


さんざん人のこと痛めつけておいて、トイレ誘導になったら人を貶めたことなんて忘れたようで、下半身をこちらの手で露出させられて、利用者は用を足している。


こちらが複数の利用者が転倒しないように注意深く見守っているのに。


すぐにころっと忘れる利用者にははたかれて、因縁の正論看護師さんには頭を下げなきゃいけないやるせなさ。


どうせ今頃融通効かない不出来な新人、いや、もう新人扱いでもないのだろう。


これくらいやればいいのに。できないやつ。そういう発想も実行力もないやつ。


そんなふうに思われてそうで腹が立つし、現に遠くから


「あーあ、また××さんばっか見てる、もう私しーらない!!」


看護師は大人気なく私の介助の様子を諦観している。


こんなふうに言われたら統合失調症が再発しそうだ。

遠くからのパワーハラスメントや発言や陰口が余計に被害妄想を膨らませて悪い方向へと進んでいく。


「負けない」


とか思っちゃダメだ。絶対に。


なぜなら利用者さんや昔からの職員には甘口で、仕事できない奴には塩対応のど正論冷静ヒステリーという破綻者だから。


闘っちゃだめなやつ。


気にしちゃうくらいでいいんだ。気にしない時は気にしないし、気にしてても日々の積み重ねで限界ってくるし。


最近、職員さんがまた退職した。事情があったようだ。よくは知らないけど。


あたりのキツイ人のせいで辞めるのも馬鹿らしい。私にも事情があるんだからこの「事情」を大切に続けていけばいい。


今日もうまく立ち回れなくて「大した働きもできず、すみません」とせめてもと。言って帰ろうとするとその先輩は無言だった。


あ。


私、今日、大した働きしてないんだ……。


先輩公認。


年の近い子持ちの年下の先輩も助言をくれない。

場を和まそうと私がジョークを言うと馬鹿らしいというように笑う。


べつに、お馬鹿キャラになりたいわけじゃないんだけど。なんでいつもこんな立ち位置になるの。

なんで私は仕事がわかんないの?

できないの?

一から十まで教えてもらおうとか思ってないし、そんなつもりで発言した訳でもないものを悲鳴のように叫ばれて叱咤されて。


それでも、そんなやつらは上の人に掛け合う時だけ。

「私辞める覚悟で言います」

とか普段人を精神的に追い込んでるくせに伝家の宝刀をすぐ持ち出す。


わかってるよ。この人がいないと成り立たないし、いないと大変なことになるって。


でも、もっと良い人が入ってくれたら。


すごく潤うんじゃないかって。


あんまり悩みそうなら教育係の人に連絡して相談する。でも自分の力不足で、知識不足でそれらが起きてるから、何度も悩む。


介護職員て、なんだろう。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愚痴が言いたい。 明鏡止水 @miuraharuma30

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ