第5話【日米それぞれのマスメディア対応-そして-】

日本では、このタイミングで政府が閣議決定に基づき、自衛隊が拉致被害者救出部隊を派遣していたこと、国外での戦闘行為ではなく、あくまで邦人救出のための強硬的手段であったこと、武器等の使用は自衛隊員の生存権に基づくものであり、問題はないと公表した。


これに反発する向きもあったが、『暗黙の言論統制法』によって揉み消された。拉致被害者は救出されたと発表されたが、死亡者も確認されたとの発表もあった。行方不明者は捜索及び救出不可能とされた。


「政府・自衛隊と致しましてもとりわけ救出に当たった自衛隊員は懸命に救出にあたりました。救出活動において、自衛隊員に初の戦死殉職認定者が出ました。拉致被害者のご遺族並びに救出にあたった自衛隊員のご遺族には心よりお悔やみ申し上げます。全ての拉致被害者を救出できなかったことは痛恨の極みであります。残酷ですがこれが有事なのです。政府と致しましては今後、有事特例法や有事特措法の制定を急ぎ、今回の有事に立ち向かう所存でございます。国民の皆様の生命・財産を守りぬく。そのために私はシビリアンコントロールに於ける自衛隊の最高司令官として内閣総理大臣という立場で皆様の前にいるのであります。」




一方でアメリカは、核にさらされたにもかかわらず、戦意を失うことなく、むしろ激しい憎悪が戦意を高揚させていた。


「もうこれ以上落下地点を隠しても意味はないだろう。私の口から伝えよう。」


9月末、アメリカ内外から報道関係者が押し寄せた。そして、会見が始まった。米国大統領「今まで核の落下場所を伝えなかったのはそこが我が国の重要施設が含まれる場所だったからだ。そこにあるもの、それはペンタゴンだ。現在はべつの場所で極秘で活動中だ。今現在の臨時的施設の位置は勿論公表できないので承知してほしい。私は明後日、日本へ首脳会談に行くことにした。総理とこれからの方針について互いに確認する。」


「核の被害状況はどうなっているのですか?」


「いい質問だ。しかし答えられない。次。」


「大統領の判断ミスがこの事態を招いたと言われていますが?」


「それはフェイクだ。次。」


「今回の訪日の目的は?」


「それはまだ言えない。非常に高度な政治的なものとだけ言っておこう。次。」


このような調子で米国大統領の会見は終わった。




「やれやれ記者どもは同じようなことしか聞かない。あれではこちらも疲れる。補佐官、今後の日程は?」


「10月25日にエアフォース1の準備が整い日本へ行く日程となっています。」


「わかった。ロシア・中国への首脳会談の打診も怠るなよ。」

(つづく)

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