第3話【米国に放たれし禁断の矢】

「9・11我々はテロリストどもに大切な人を奪われた。我々はこの悲劇を忘れてはいない。テロリストに屈してはならない。しかし、テロ支援国家である北朝鮮は度重なる挑発行為を繰り返し、ICBMの射程距離は一線を越えようとしている。我が国はかつて核を放った。その威力、被害、放射能の恐怖、すべて今日の友である日本国が教えてくれた。我々は北朝鮮による核戦争計画ならびにそれに伴う挑発外交に終止符を打つべく、本日、九月十一日、北朝鮮に宣戦布告するものである。我々は裁きの鉄槌を下すだろう。」

大統領の言葉に米国は揺れた。しかし国民は楽観的だった。なかには狂喜乱舞する者までいた。ベトナム戦争などを除いて、負けたことが無い上に太平洋戦争の日本海軍の小規模な爆撃以外本土を敵国に襲われたことはないからである。

「ロケットマンに何が出来るって?懺悔の祈りの中で自らの行いを悔やみながら死ぬことさ。だって言うだろ?身から出た錆って!」

米国男性は嘲笑気味に言った。

「みんな楽勝ムードで騒いでいるけど大丈夫なのかしら?アメリカのどこにでも落ちる可能性はあるのよ?ミサイルがどれだけ来るかもわからないのに。本当に男は単純ね。」米国女性の中には迫りつつある危機を危ぶむ声もあった。

「これで、我が社は大儲けだ。戦争はアメリカの錬金術さ!負けなければね!おっと、こんなことを某団体に聞かれたら我が社が傾いてしまう。自由の国だけど自由じゃないよね。我が社はアメリカの犬にライセンス契約で生産させて儲かればいいのさ。大統領は雇用を生んだのさ。」

米国軍需産業関係者は大喜びしていた。 


そして、悲劇は起きた。宣戦布告から二日後の九月十三日、アメリカの某州に北朝鮮の核は落ちたのである。 政府報道官は、

「人類史上最大の被害者数を出した。落下地点は機密事項であり明かすことはできない。」と発表した。アメリカは総動員で被害者の救出・救援活動・救援物資の提供や医療行為にあたったが場所の口外は禁じられた。場所は他ならぬ『ペンタゴン』だったからである。ホワイトハウスはその夜、声明を出した。

「何ということだ!このような兵器を使う、ならず者国家をいつ叩き潰す?そう!今すぐにだ!我が国は核にさらされた。しかしロケットマンと同じことはしない。何故か?アメリカだからだ。覚悟するがいいロケットマン!あの国は核戦争に踏み切ったことで自ら国を亡ぼすことを選んだのだ!」

 さかのぼること九月十一日、『オペレーション9・11』は実行された。予定通り米軍の戦略爆撃機による爆撃が始まった。手当たり次第に。その状況下、拉致被害者救出部隊は血眼になって拉致被害者を捜索した、複数人の救出と戦火の中で死亡した被害者、行方不明者の確認が成された。救出作戦の末、多数の自衛官が戦死、殉職となった。実戦での自衛隊公式戦死認定者となった。結果として多大な犠牲を払いながらも、日本の目標の一つであった、拉致被害者の救出は一応の成功をおさめた。しかし、その

情報は日本政府の機密事項であった。


アメリカの誤算はそのあとにある。韓国軍とともに北朝鮮へ侵攻した米軍は板門店を越え平壌めがけて進軍。しかし、米軍はゲリラ戦術とは相性が悪い。ゲリラ戦術を駆使されたことにより、9月13日に北朝鮮による核ミサイル発射の隙を与えてしまったのだ。平壌にたどり着いた時には、平壌防衛特殊部隊によってさらに犠牲者が増え、北朝鮮軍に対する常識が実情とは異なることを知った。

北朝鮮はこの日の為に相当の準備を重ねてきたのである。そして、米韓主力を引き付けた北朝鮮は、党委員長の肝いりの核の矢を米国に放ったのである。

「今こそ忌まわしき米帝に我らの核の正義の矢を放つのだ!」

党委員長の号令と共に北朝鮮最大の軍事行動が開始された。まさに青天の霹靂であった。核の矢は日本を通過、Jアラートが鳴り響いた。

「またか。迷惑だよな。」

「まさか、核入りミサイルじゃないでしょ?」

日本国民の大半がオオカミ少年のオオカミが来たぞ!のパターンに陥っていた。危機感がまるでなかった。

だが、このJアラートはいつもとは違った。スマホ速報で「ミサイル日本通過。太平洋上を尚飛翔中。到達点は不明」と号外が表示され、それから数分後、ニュース速報が流れた。


《米国に核ミサイル落下》

(つづく)

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