第2話【開戦と新しい戦時体制】

「本日九月十一日、我が同盟国であるアメリカ合衆国が北朝鮮に宣戦を布告し、交戦状態となりました。これを受けて政府は、『国家存立危機事態』並びに『防衛出動』を発令致します。国民の皆様は偽の情報に惑わされないよう気をつけてください。これを受けて、海上自衛隊はすでに自衛艦隊を編成し、展開しております。政府そして自衛隊は国民の皆様の生命の安全と財産の保護をすべく活動しています。」


 総理の冒頭会見から始まった日本国の防衛戦争はこの国を戦前でも戦後でもなく戦中に叩き落した。総理の言葉そのものが既にフェイクなのは明らかだった。が、『特定秘密保護法』『機密漏示罪』『共謀罪(テロ等準備罪)』の存在により、第三者情報の提供による電子情報の入手、警察によるメール発着信の履歴の取得、その内容の開示請求などの名目でSNSも取り締まりの対象となり、事実の核心に迫る者はことごとく逮捕・勾留された。ネット民も自由奔放な発言をしていたが同様に逮捕・勾留された。その見せしめの効果はあった。国民の言論の自由は無きに等しくなろうとしていた。


新聞は政府広報の説明文を掲載してお茶を濁すしかなかった。国と汝の隣人による相互フォロー監視社会が構築されてしまったのである。

(つづく)

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