第2階層 白銀の洞穴

階段をゆっくり降りて行くと、扉にぶつかった。


「なるほど、こういう感じで進んでいくわけね」


扉に力を込めて開くと、強烈な風が吹き込んで来た。


「ッ!」


とてつもなく寒い、どうやら第二階層は雪山を模しているようだ。


「とりあえず探索魔法を使ってみますね」


一階層の時と同じように杖を地面に突き立て、詠唱を始める。


「…?」

リルは詠唱を終えたが、不思議そうな顔を浮かべている。


「どうかしたのか?」


「いえ…特には。ただ、一階層の時よりも精霊の数が少なくて…大まかな位置しか分かりませんでした。も、問題はないと思います!」


兎にも角にもこの寒さでは移動する他ない。

四人は白銀の大地を進み始めた。


1時間ほど経っただろうか、洞窟を発見した。まるでこちらを誘うかのようにそびえ立っている。


「ちょうどいい、一度暖を取りましょう。この寒さでは人間に限界が近づいてますからね」


「アタシが先行する、魔物に警戒しな」

火の灯った松明が、ゆらゆらと揺れている。


「だいぶ広いな、大型の敵と戦うかもしれねぇ」


洞窟の奥から、カサカサと音が聞こえる。


いや、カサカサというよりももっと激しい


「…!来るぞ…」


     キシャー!!


現れたのはヴェノムスパイダーだ。


身長はゆうに5メートルを超えているだろうか、発達した毒牙がギラリと光る。


「な、なんか図鑑の情報より大きいです!」


「奴の毒は強酸性、神経毒、なんでもござれだ!ランドは下がれ!」


レイは急接近して攻撃を仕掛ける。

    ガキィン!


振り下ろされた脚と激しくぶつかり合い、両

者共に弾かれた。


どうやらなんらかの原因で異常な成長を遂げた個体のよう、膂力が桁違いだ。


「だが、弱点は変わってないはずッ!」


ヴェノムスパイダーの弱点、頭部へと渾身の一撃をお見舞いする。


    ザシュッッ!


一撃を与えられたものの、やはり通常と違い致命傷には至らないようだ。


激昂したヴェノムスパイダーは剣を頭に刺したままレイを振り落とし、本気の毒牙を剥いた。


「やばっ…」


「レイさん!!」

     ドスッ


鈍い音が響いた。


間一髪短剣で牙を受け止め、貫通こそしなかったが、腹部にダメージを負ってしまった。


「しくじった…でも、これでテメーもチェックメイトだ。」


瞬間、空気を切り裂き、稲光が走った。


「レイさん!大丈夫ですか!?」


「ああ、だい、じょぶだ。それよりあれ見てみろ」


レイが指差すと、ヴェノムスパイダーの体からキラキラした何かが溢れ出ていた。


「精霊ですね、あれを吸収して成長したのでしょう。探索魔法を使った際、はっきりしなかったのもこの個体が原因でしょう」


「ニルス…喋ってないで治してくれ…」


「全くあなたは無茶をする…仕方のない人ですね」


ニルスが祈りを捧げると、たちまちレイの傷が塞がった。


「いつも言っているように、これはあくまでも応急処置です、くれぐれも激しい行動は控えてください」


「へへ、わーってるよ」


レイは立ち上がり、ヴェノムスパイダーを解体し始めた。


「さて、ひと段落したところで、暖を取りますか」

食料は幸いにも一階層で取ったホーンウルフの干し肉がある。しばらくは困らないだろう。


メラメラと燃える焚き火は、普段より暖かく感じた。


続く。

      ーーーーーーーー

ここからはキャラクターと生物について解説!

キャラクタープロフィール紹介2人目

名前:リル

身長:144㎝

体重:「42㎏です…」

趣味:読書


迷宮生物図鑑No.2「ヴェノムスパイダー」

和名「ベニキバグモ」

ギラリと光る鮮やかな紅色の毒牙が特徴の魔物。通常は1メートルほどの大きさだが、まれに10メートルを超える個体も現れるという。頭部には多数の神経系が密集しているため、衝撃を受けるとしばらく判断力が鈍る。

非常に攻撃的な性格をしているのが大多数で、縄張りに入るものには容赦しない。

とある冒険家の手記

「評価の分かれる味、一部のマニアの間では珍味として高値で取引されるそうだが、外殻が非常に硬く、加工がしにくい、さらには身もかなり酸味が強く、個人的にはお勧めしない食材だ。100点満点中30点」

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