箱庭の冒険譚
ぱるぷ
第1階層 広がる草原
「だからアタシは冒険者になるんだって!何回言ったら分かるんだ!」
「そんな危険なことやめなさい!ウチの家の評判まで悪くなるでしょう!?」
「知るか!もういい、出ていく!」
「あ、ちょっと待ちな…
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「…ん………さん……レイさん!!」
誰かの声が頭に響く。
(あれ…確か今馬車に乗ってて…)
「レイさん、ダンジョンに着きましたよ?」
銀色の髪の少女が、オーシャンブルーの瞳でこちらを覗き込む。
「ああ、悪い。少し寝ちまってた」
(またこの夢か…もう10年も前なのに…)
仲間たちは先に馬車から降りているようだ。
「ほうほう、なかなか大きいですね。腕がなります」
「………」
4人の仲間はとある国の冒険者をやっている。
オールラウンダーの「アタシ」ことレイ。
魔法使いと生物学者を目指す少女、リル。
糸目の僧侶のニルス。
そして無口なゴーレムのランド。(リルの使い魔)
「そんじゃ、行きますか」
ダンジョンの入り口と思われるドアに手を掛けると、ギギ…と開いた。
「広い…というか、草原?」
恐らく魔術の類いで作られた空間だろう。
バァン!!
咄嗟に全員が振り向いた。
「あ!ドアが!」
ドアは閉じ、音を立てずに消滅してしまった。
「嘘、だろぉ……どうすんだよこれ…」
「食料も持ってきていませんし。あ、塩胡椒などの調味料、香辛料は大量にありますね。しかし厳しい状況です」
リルが手を挙げた。
「あ、あの。一度探索魔法を使ってみますね、出口があるかもしれませんし」
「………」
リルは杖を地面に突き立て、詠唱を始めた。
「精霊よ…この地を知る精霊よ…我にこの地の叡智を授けたまえ!」
しばらくすると、リルが目を開いた。
「ど、どうやら出口かは分かりませんが、少し離れたところに階段のような物があるみたいです。」
(精霊を介した魔法が使えるということは…単純な異空間というわけでもない…)
「どう思う、ニルス?」
「そうですね、見たところ他の生物もいるようですし…例えるなら、箱庭と言ったところでしょうか」
「箱庭ねぇ…確かにそうだなぁ、風も吹く、植物も生えてる、でも閉鎖されてる。」
足元を見ると、石板を踏んづけていた。
よく見ると文字のようなものが刻まれている。
その文字を見て、珍しくランドが口を開いた。
「オレ、コノモジシッテル。」
「本当か!?なんて書いてある!?」
「コノチノナ、ムゲンノメイキュウ。アラユルイノチ、アラユルモノ、フウジコメタ。デグチハ、サイカソウニ」
「つまり、このダンジョンを攻略しないと出れないってわけね…トホホ」
「まあ、リルさんの魔法で大まかな場所は分かりますし。ゆっくり行きましょう」
歩き始めて5時間ほどが経った
ザザッ‼︎
草むらの音に気付き、振り返るとホーンウルフの群が居た。
「魔物もそりゃいるか…!」
「ひゃわぁ!ほ、本物!初めて見ました!」
「ミンナ、マモル…!」
「頑張りましょう、皆さん!」
グオオォン!!
一匹がリルに飛びかかるも、ランドの拳が直撃した。
アオォン……
怯んだ隙に斬りかかり、トドメを差した。
「風の精霊よ…我が敵の前に、一陣の風の刃を放ちたまえ!」
ビシュッ!ビシュッ!
的確に弱点を切り裂き、群を撃退したよう
だ。
「で、できました!」
「よくやったリル!上出来だ!」
「せっかく倒したんだ、肉を貰って食糧にしよう」
そうこうしているうちに日が沈み、夕食を取ることにした。
「ホーンウルフの肉は臭みもなくて食べやすいんだ、ホレ」
串に刺して焼いた肉をリルに突き出す。
リルは大きく口を開けて肉に齧り付く。
「んーーっ!!美味しいです!」
心なしかランドが微笑んでいるような気がした。
そうして夜が明けた。
「っふう!やっと着いたぜ!」
「次の階層はどんなの待ってんのか、楽しみだな!」
「ですね!」
「いきましょうか」
「…ウン」
続く。
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ここからはキャラクターと本作の生物について解説!
キャラクタープロフィール紹介1人目
名前:レイ
青色の髪をしている。
性別:女
身長:172㎝
体重:「ンなもん聞くな!!」
趣味:料理
迷宮生物図鑑No.1「ホーンウルフ」
和名:キヅノオオカミ
頭頂部に大きな黄色いツノが生えているオオカミ。一般的にホーンウルフと言えばこの種類。しかし最近は外来種のブルーホーンウルフに生息域を奪われている。
3〜5匹程度の群れで行動し、獲物を分け合う習性がある。
とある冒険家の手記
「肉は癖がなく食べやすい、シンプルな塩胡椒でも良いが、個人的にはシチューなどに入れる方が美味しくいただけた。100点」
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