放浪
森の中なのにも関わらず、まるで砂漠を歩いているような気分になりました。砂漠なんて、見たことも行ったことありませんでしたが、あてもなく彷徨い、途方もなく喉が渇いているこの絶望は、きっと同程度のものだと思いました。
墜落してから何日経ったのかは定かではありません。全身壁に打ち付けられたような鈍痛により目が覚めた時、森の中にいたことは覚えています。日は高く、若干の肌寒さを感じたことから早朝であることを察しました。自分の身体の具合と、自分の飛空挺が木に突き刺さっているのを見て、「ああ、私は墜落したんだ」と初めて認識が出来ました。
肌の感覚は普段通り、いえ、いつもより鋭いものになっていたと思います。不気味でした。文化を築けどやはり人間、生命の危機となれば野生の勘は戻ってくるでしょう。
どれくらい歩いたでしょうか、歩くのも一苦労だった私は、ついに膝をついて地べたに倒れ込みました。土のひんやりとした感触と草の香りだけが鮮明に伝わります。
「み……ず……」
あまりの喉の渇きにそう呻きました。ただのうわ言でしたが、誰かに届いて欲しくもありました。
身が焼けそうな渇きを抱えながら、このまま土へと還るのか。軍人なんかになるんじゃなかった。
そう思った時でした。
「ほら見てください、ヴァランタンさん……」
「うーん、服装からして軍人かな」
「軍人!?なんでそんな人が……」
2人の声が聞こえてきました。
1人は声が高く、女性であることがわかりました。私のことを軍人だと推察した人は成人男性と思わしき声色でした。
その時の私はもう藁にも縋る思いでしたから、最後の力を振り絞って言いました。
「……みず……くだ……」
「……ん!?今喋りませんでしたか!?」
「……確認しよう」
そこで私の意識は途切れました。
ただ、最後に目にした2人の手には散弾銃と、"何か"を運ぶための手押し車が2台見えました。
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