第23話 細谷 淳平 ③

 俺は少し有頂天になっていた。

 まさかと思うけど、俺に彼女が居るかどうかが問題なのは、目の前の二人ではなくて、二人の共通の知人である「中谷さん」?

 ・・あるんだな、こういう事って。


「えっと、ごめん、俺なんだか早とちりで」


「いいよ、私たちも聞き方が悪かったし。・・でね、貴美ちゃん・・中谷さんの事なんだけど」


「ああ、富田から聞いた、なんだか病気だって」


「あ、細谷君、そこまでは知ってるんだ」


「うん、一度さ、去年北高で練習試合の時に、中谷さんの事見かけて」


「で? 気になっていたと」


 島崎さんが、冷ややかな目で俺を見下す。

 ああ、もう、俺のバカ、どうして次から次へと墓穴を掘る!

 はい、そうですよ、気になっていましたよ! 好きですよ、中谷さんの事が!


「なんだよ、何が言いたいんだよ」


「あのね・・・・細谷君さ、さっき去年の練習試合で貴美ちゃんの事、見たって言ってたじゃない? 実はさ、貴美ちゃんも細谷君の事、見てたらしいのよね」


「はあ、貴美ちゃんって、中谷さんのことっだよね? なんで? 俺を?」


「だから・・・・ねえ島崎さん、どうする? 言っちゃう?」


「それは、貴美ちゃんの決めることだから、やっぱり直接の方がいいよ」


「んー、そうよね」


 ちょっと、なに? なんの話? 期待しちゃうでしょ! 高2の男子捕まえて、そんな思わせぶりな話、やめようよ!。

 結局、中谷 貴美さんが、俺の何をそんなに気になったのかは、ついに説明してもらえなかった。

 その代わり、明日の放課後、自分たちと一緒に来て欲しいところがあるとの事だった。

 話の流れから、さすがにそれが中谷 貴美さんの入院先であろう事は察しがつく。

 いいのか? 行ってしまっていいのか? 今の俺、病院には不釣り合いなほどに不謹慎ですけど!


 ザワザワとした気持ちのまま、俺は家路に着く。

 高坂さん達が言っていた病院、やっぱりここなんだな。

 そこは、俺の家からほど近い、あの清潔感と開放感のある市立病院だった。

 ネットで俺は、何かお見舞いをと思いながら検索するけど、高校生の小遣いで買える気の利いたものなんて見つからず、仕方なく母親に何か言いアイディアが無いか聞いてみた。


「あら、どうしたの? 同級生の子? あの病院だったら、そうね食べて無くなるものの方がいいかもね」


「なんで? ネットでは鉢植えの植物とかはダメってあったけど」


「そうね、あの病院は、結構長引くか、極端に悪い病状の人が多いのよ。そう言う外来のある病院だから」


 おい、今なんて言った母さん。そう言う事、言うなよ。

 失意の俺を気にするでもなく、母さんは明日、何か買っておいてくれると言ってくれた。

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