第2話 中嶋 洋子 ②

 フライング・ヒューマノイド・・・・


 なんだか、最近の流行りは、男女カップルで飛んでいるらしい。

 いやいや、UMAユーマだぞ。ただ空を飛んでいる人間の事ではないぞ、フライング・ヒューマノイドって。

 まったく、ふざけた記事だと思って、私はその続きを読んでみた。

 それは、美男美女をルアーにして、宇宙人が「釣り」を楽しんでいるのでは、と言うトン デモ都市伝説。

 まったく、傷心の私には丁度良いバカ内容だ。こんなこと、一体誰が考えるんだか。

 宇宙人が釣り?

 なんでそんな回りくどいことをする必要が? 宇宙人なら、直接人を誘拐することなんて容易いはず。釣りって、おじさんの趣味講座じゃないんだから!

 笑う気にもなれない私は、写真フォルダを開く。 フォルダに入った来栖君の写真集は、私の秘蔵コレクションだ。


・・・・ああ、やっぱり来栖君はカッコイイなあ。


 これも、明日の朝になったら消去しよう。でないと、気持ちに整理が付かないから。

 翌朝、目が真っ赤に腫れた私の顔は、自分でも嫌になるほどに不細工だ。

 昨日まで見ていた来栖君秘蔵コレクションフォルダ・・消去のスイッチが、私にはどうしても押せない。

 そうして、再び私は苦しくなって、一人で大泣きする。

 ・・・本当に私はどうしようもない女だと思う。

 でも、いいよね、写真くらい。

 私の気持ちが、外に漏れ出さなければ、誰にも気が付かれることはない。


 そう、私は内側に引き籠るのが得意なんだから。



 学校へ行くと、案の定の事が起きていた。

 まったく、わかり易い人たちだ。こんなあからさまな嫌がらせ、今時こんなことをすれば世間のコンプライアンスは、きっと許してはくれないと言うのに。

 まず、下駄箱の中に沢山のゴミ。

 教室に入ると机が倒れて、中にもゴミ。

 本当に写メでも撮って、社会的に抹殺してやろうかとも思ったが、来栖君を諦めた私は、傷心を引きずり抵抗しようと言う気にはなれなかった。

 私は倒れた机を元に戻し、そのまま何事も無かったように机に座り、ただ前を見てい た・・・・教室の隅で、カースト上位のグループがこっちを見て笑っている。


 なんだか疲れた。

 もういっその事、今日は早退でもしてやろうか。

 そんな時だった。来栖君が教室に入るなり、私を見つめている。

 ・・もういいよ。やめて。私にはあなたの真っ直ぐな瞳が眩しすぎるよ。

 彼が動いたのは、そう思った直後だった。

 思い詰めたような顔をして。きっとクラスの女子による私への嫌がらせに気づいているんだろう。それはもう堪らないって表情で。

 力強い歩みは私の前で止まり、来栖君は私の手を掴むと強引に教室の外へと連れ出した。

 あれ? これは今、一体何が起こっているの? 

 教室は騒然となり、カースト上位グルーブが驚きの表情で私たちを見送る。

 廊下に出た来栖君は、私の手を引いたまま、全力で走り出す。

 

 これではまるで、青春映画じゃないか。

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