第3話 よわよわ夏くん

「ね、冬兄!! 『愛してるゲーム』しよう!!」


今時なかなか珍しい回覧板を届けに家に来て、そのまま僕のお母さんに誘われてお茶を飲みまったりしてる冬兄。

椅子に座るその膝に上体を乗せながら冬兄を見上げて、声をかけた。

僕の事を気にするついでに、冬兄は膝掛ひざかけみたいになった僕で思う存分あったまったら良いんだ〜!!


「愛してるゲーム……?」


「そう!! お互いに『愛してる』って言って、照れた方が負けなんだ!!」


今日学校で友達に聞いた説明を、ふんっと胸を張りながら言う。

膝の上でぐでぇとなってるから、あんまり胸張れてないけど。


「……それ、恋人がやるゲームじゃない?」


「冬兄、なんか言った?」


「う、ううん。何でもないよ」


この満面の笑みをくもらせるなんてのは、出来ないよなぁ……。


顔を隠して天をあおいだ冬兄がボソボソと何を呟いたのかは聞こえなかったけど、やっても良いと言ってくれたから気にせず始める。


かっこよく愛してるって言って、冬兄に僕がかっこいいって思ってもらうんだ!!


「冬兄、愛してるよ!!」


お茶を机の奥の方に置き直した冬兄に、そのままの流れで抱えられて乗せられた膝の上から、冬兄の目をじっと見つめて真剣な表情で言う。


「ん〜、俺も夏くんのこと愛してるよ?」


優しい笑顔で僕の頭を撫でながらそう言った冬兄に、ボンッ!! と音を立てたように僕の顔が赤くなるのと……。


「これ、結構恥ずいなぁ……あ、夏くんの負けだ」


と、少し顔を赤くした冬兄が言うのはほとんど同時だった。



「むぅ……」


結局、愛してるゲームは何回やっても僕の負け。

冬兄が笑顔で全勝した。

これが「れた弱み」っていうやつか……。


愛してるゲームでは、冬兄に僕のかっこいいところを見せられないっ……!!

僕がずっと冬兄を好きだと思わせられるだけだ……。

いや、それはそれで幸せだけど!!

けど、僕は冬兄にかっこいいって思われたいんだ!!


何か、冬兄にかっこいいって思ってもらえる良い方法はないのか?

そう思って、う〜ん……と唸っていると、お母さんに渡すために机の上に置いた一枚のプリントが目に入った。


「これだっ……!!」


これを利用して、絶対に冬兄に僕をかっこいいって思わせて見せる!!

僕はそう決めて、心の中で拳をグッと握った。

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