第53話 無くす訳にはいかない

そんなばあちゃんとお茶を飲んでから家に帰って来ると...郵便受けに見慣れない手紙が入っていた。

差出人は...まさかの人物だった。

それは豊島数多だった。


「...」


爆発物でも入っているんじゃなかろうな、と思ったが...こうして警戒しまくっても先に進まないし意味が無いと思い俺は開けてみる。

そこには手紙が入っていた。

便箋である。

俺は直筆のその文章を読んでみる。


(晴矢へ)


と始まった文章には日頃の事などがしっかり色々書かれており。

俺はしっかり読み進める事が出来た。

そして最後にこう書かれている。

それは。


(秀水は元気か)


そういう感じで、だ。

俺は「...」となってから郵便受けを改めて見る。

それから俺は唇を舐めてから「大丈夫じゃないな」と言葉を発する。

そして俺は空を見上げる。


「...はぁ...」


溜息を吐くとそれが空に溶ける様に消えた。

それから俺はその便箋を見てから「やれやれ」と呟く。

そして俺は玄関を開ける。

そうしてから玄関に腰掛けてからまた便箋を読む。

そこにはこう書かれている。


(こうして落ち着いて書けるのも捕まってからだった。捕まって良かったと思う)


「そんな幸せって...」


俺はそう呟きながら文章を読む。

玄関は寒かったけど。

何だか心は暖かくなる。


「...」


文章を読み進め俺は何だか気分が少しだけ軽やかになった。

正直...罵倒されたらどうしようかと思っていたが。

上手くいってんのなら良かったよ。

思いながら俺は手紙を畳む。

それから俺は天井を見上げてから柊子の事を思う。


「...一体何処にいるんだ...」


そんな事を呟く。

それから俺は首を振ってから立ち上がろうとした。

するとインターフォンが鳴った。

俺は「?」を浮かべてドアを開ける。

そして驚愕して目を開く。


「...お前...柊子!?」

「...うん。ただいま。...あーちゃん」

「心配したんだぞこの野郎!!!!!ふざけるな!!!!!」

「...あーちゃん。...実はね。最後の別れをしに来たの」

「は?」

「...私、実は婚約しないといけなくなった。それをしなかったら私は...親に殺される。それも貴方が」

「...え...」


俺はまさかの言葉だったその言葉に見開く。

それから「...」となる柊子。

そして「...ゴメン。これが最後の別れになるけど」と言ってから踵を返した。

俺は愕然としながら追いかける。


「ざけんな!どうなってんだ!柊子!!!!!」

「...ごめんね...あーちゃん。...本当にごめんなさい...」


号泣してからそのまま前に止められていた車に乗る柊子。

そしてそのまま車は発進してしまった。

そのまま去って行く。

どうなってやがる!!!!!ふざけるな!!!!!

しゅうちゃん!!!!!


「クソが!!!!!」


俺はそう吐き捨てながら靴を脱ぎ捨て必死に車を追うが。

追い付けなかった。

それどころか転んで足から血が吹き出た。

クソがクソがクソが!!!!!


「...何でこんな事に!!!!!」


そう思って俺は地面を叩く。

クソ!何だと...結婚!!!!?

冗談じゃないぞ!


「...」


俺は地面を叩きまくる。

怒りしか出ない。

どうなってんだよマジに!

そう思っていると車が通りかかった。

そしてその車が止まる。


「乗って!」

「...え...羽鳥さん...?!」

「良いから。乗って。早く。追うよ!」


そして俺はそのまま車に飛び乗る。

それから横を見ると泉が、山田が、会長さんが乗っていた。

どうなってやがる...?

そう思いながら俺は見ていると「実は俺が頼んだんだ。...おじさんに」と山田が答えながら俺を見る。


「君の家に行こうとした前で良かった」

「...タイミングと都合が良すぎるぞ」

「まあまあ。それは置いておいて。...追うよ」

「...いや。追うってオイマジか」

「そうだね」


車は暴走する様に走り出す。

そして猛スピードで前の車を追う。

羽鳥さんは「まあなんつうかデカ。警察から逃れられるって思うなよ!」と言いながらガコンガコン、ドライブレバーを駆使してからスピードを出す。


ハンドルが右左に行ったり来たりする。

信じられない手捌きだった。

だがその分、俺とみんなも右左にガックンガックン。


「ちょ、ちょい。おじさん...これ警察に捕まる...」

「大丈夫だ。捕まってもデカだしな」

「いやいやそれは...おじさん。マジにつかま...うわ!」


キキィ!!!!!、といってから車はカーブを曲がりまくり物凄いスピードで追う。

そして目の前の車もドリフトする様に逃げる。

俺は何だか気分が悪くなってきた。


「大丈夫か」

「...ああ。会長さん...」

「...羽鳥さんは昔からこんなだからな」

「そうなんすね...」


そして車は蛇行する。

それから坂を下って行く登って行く。

スピードは70キロ以上。

捕まってしまってもおかしくない。


「どこまで行くんだあの車はよ」

「...知らないね...どこまで行くんだろう」

「捕まえてやるぜ。必ずな」

「執念持ってるね。おじさん」

「そりゃそうだろ。...影島も守りきれなかった。...だから今度は無くしちゃいけないんだ」

「...おじさん...」


車は跳ねまくる。

そしてタイヤがキィーキィー言っている。

ガクンガクン揺れまくる。

それから暴走は暫く続き県外まで行った。

何処に行くんだよマジに...柊子...。


「まさかの県外とはな。...高速道路乗って?何処に行くんだよ」

「...分からないね...」

「...とにかくまあ見失えないな。急がないと」


そして羽鳥さんはドリフトで追い始めた。

右左右左に車をかき分けてそのまま目の前の逃げる車両を追う。

それから俺達は目の前の車両を見る。

車両はあくまで逃げている様に見える。

柊子を連れ去っている。


クソ...待ってろ柊子。

絶対に捕まえる。

よく分からんキモ男なんぞと結婚させない。

絶対に!!!!!

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俺を弄び浮気した女に冤罪までかけられたので優しい美少女と幸せになります アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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