第48話 遊ぶな(怒)


俺自身が...秀水柊子という大切な女性を好きかといえば...まだ鈍感な面がある。

いや、好きなんだけど。

だけどこれは恋愛感情では無いと思っている。

だからまあ好きという点についてはおかしいと思っている。


「お疲れ様。あーちゃん」


そう考えながら俺は柊子をジッと見る。

すると柊子はジッと見つめられたせいか「あの」と言う。

それからモジモジし始めた。


「...は、恥ずかしいかな?そう見つめられると」

「あ、す、すまん」

「もう。あーちゃんのエッチ」

「いや...悪かった」


俺はそう言いながら後頭部を掻く。

それからいつ用意したかも分からないタオルを受け取った。

良い香りがする。

何というかフローラルな香り。


「柊子」

「...うん?何?あーちゃん」

「お前は俺が好きなんだよな」

「そう...えぇ!!!!?そうだけど!?この場所で聞くの!?」

「いやすまん。...実は...」


全てを説明する。

すると柊子は頷きながら笑みを浮かべる。

そして水筒を飲む。


「そうだったんだね」

「...そうだな。...それで何となく考えていた」

「そうだねぇ。...今直ぐに返事が欲しいって訳じゃないよ?そんなに必死に考えなくても良いんじゃないかな」

「でもなぁ」

「...うん。...私はいつまでも待ってるよ」


柊子は笑みを浮かべてから水筒を置く。

それからニコッとした。

俺はその姿を見ながら「...」となる。

そして柊子を見る。


「何か山田に指摘されてから...気になっているというか」

「山田くんは山田くん。あーちゃんはあーちゃん。...別々だからねぇ」

「...そうかな」

「そうそう。...今はあまり気にしない事だね」


そして柊子は俺の方にかかっているタオルを取る。

それから何も考えない感じで自らの額の汗を拭った。

その姿を見てから俺は「...」となってから赤面をした。


「...?...あーちゃん?どうしたの?」

「い、いや。何でもない」


何だ今の無茶苦茶なハンマーで殴られた様な衝撃は。

そう思いながら俺は首を振る。

いつもの接触だ。


だから気にする事は何らない、筈だが...山田め。

山田のせいで意識した。

そうしていると...


「やあやあ」

「...?...田城くん?」

「やってますね。...相変わらず」


ニヤニヤしている坊主頭の野球部員。

田城良次郎(たしろりょうじろう)が俺達の元にやって来た。

仲間を4人程引き連れている。

何だコイツはニヤニヤして...何かあるのか。


「さて。...暁月くんよ」

「...あ、ああ。何だ」

「...こっちに来てくれるかな」

「あ?何でだよ?」


そして田城の周りの奴らが俺を担ぎ上げる。

それから俺は誘拐された。

俺はそのまま校舎の裏側まで誘拐される。

何するんだ。


「実は山田から頼まれている事があってな」

「お前のせいで心配どころじゃないんだが。...何だよ」

「ああ。実は...空き教室にちょっと行ってほしいんだ。山田から頼まれたものがあってな」

「...あー...成程な。分かった」


俺は田城の言葉に従ってから空き教室に来る。

すると何故か分からないが柊子が居り「え?」となる。

それから振り返ると手を振るクラスメイト。

そしてガチャンと鍵をかけられた。

嘘だろオイ?


「しゅ、柊子。これは一体」

「わ、私にも何がなんだか」

「...!?...騙したのかアイツ!?」


そして空き教室に俺と柊子が閉じ込められる。

と同時に...空き教室のスピーカーが鳴った。

するとこんな声が聞こえてきた。


(やあ諸君。...グルグルゲームにようこそ)


田城の野郎は何を考えているのか。

もろ田城の声だ。

はぁ?グルグルゲームだ?

何を授業中にふざけてやがる。


(その部屋から出たくば私の指示に従え。活かすも殺すも自由だが)


「おいこの馬鹿野郎。あくまで体育祭の練習途中だろうが」


俺は言う。

だが当然、無視で話は進む。

それからスピーカーからこう聞こえた。


(そこから出たくば右奥の所にあるものを使うが良い)


右奥だ?

そう思いながら右奥にあるロッカーを開く。

するとそこに機械がある。

これは何だ。


「...何だこれ?」

「これ...鍵が付いてるけど...心拍計だね。...だけど裏面が何か改造されてる」


するとその心拍計を取った瞬間。

スピーカーからまた声がした。

田城の声でこう声が。


(その心拍計は相手の温度で簡単に上昇していく。互いの値が100を超えたらその心拍計の鍵が開く様になっている)


こんな時間に何をしてんだよマジに。

この暇人が。

こんなもん作ってよ。

そう思いながら俺はスピーカーを見る。

するとこう聞こえた。


(因みに保健室の要らないものを改造したのは山田達だ)


親指を立てている様な姿が浮かぶ。

マジに何をしてんだ...。

そう思いながら俺達は心拍計を身に付ける。

そうしているとまた声がした。


(早く戻りたいならその心拍計を100以上に簡単に上げる適切な手段がある)


「あ?」


(心臓をドキドキさせれば良い。...つまり何が言いたいか分かるか)


分からんわ。

今の時間で遊ぶな。

そう思いながら俺はハッとする。

何故なら柊子の心拍計が上がっている。

は?


(それは愛。つまり緊張と重なっている。...つまり何が言いたいかは...)


「まさか...」


(そう。互いに吊り橋効果になってもらう。それがこのゲームをクリア出来る唯一の手段だ)


田城の野郎は後でぶっ飛ばすとして。

柊子の心拍数が徐々に上がっていっていた。

俺はその姿を見ながら赤くなる。

吊り橋効果...だと。

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