第47話 暁月晴矢×秀水柊子=?
☆
橋本は最低な野郎だった。
だがまあ予想範囲内だが...まさか玉城を騙すとは思わなかった。
橋本に騙され玉城は自殺未遂を起こした。
玉城は全治6か月だそうだ。
「...そうなんだね」
体育祭の予行練習の中。
その休み時間の中で山田はそう言う。
それから山田は「...」となってから考え込む。
そして水を飲んだ。
「俺的に言うと橋本も被害者だと思うけどね。まあどうか分からないけど。だけど橋本は豊橋の大親友だ。何かしらあってもおかしくはないからね」
「そうなんですね...」
「ああ」
山田が疑問符を浮かべていた柊子に反応する。
すると山田は苦笑して前を見た。
「会長から聞いたかな」
「何をですか?」
「いや。...豊橋の事、それから橋本の事を。...会長から聞いてないのかなって」
「...私は聞いてません」
「そうか...君は?」
「...この前、豊橋と会長さんが話していた。会長さんとは話したな」
「...やはりね。そうなんだ」
それから山田は「...」となってから考えた。
そして山田は後ろの地面に手を突いてから空を見上げる。
そうしてからこう言った。
「俺達にもあまり話したがらないんだ。その事実をね」
「...そうなのか」
「ああ。...だから珍しいかな。会長が君に自らの事を全部話すのはね。相当信頼されているんだな。君は」
「分からないな。その辺りは。...俺は信頼されているのか?」
「されていると思うけどね。...まあ俺は会長じゃないからよく分からないけど」
「...」
「...それはそうと。...君は随分長い事、柊子さんと一緒に居るけど。そろそろ柊子さんを好きになったりしないのかい?」
「...そろそろとか無いだろ。...俺は...よく分からない」
柊子は「だね」と言いながら苦笑する。
俺はその姿を見つつ山田を見る。
山田は苦笑して肩をすくめる。
「そうだな。...質問がおかしかった。...すまない」
「...そういうお前は...」
「その質問は無しだ。...まあ俺は俺なりに進むさ」
そして山田は先生に呼ばれて行ってしまった。
俺はその姿を見ながら考える。
そもそもこの湧き上がる感情が、好き、なのかすら分からないが。
そう思いながら俺はスポーツドリンクを飲む。
「...山田くんは相変わらずだね」
「そうだな。スカし具合が半端じゃない」
「...でもああいうのって必要かもね」
「...どういう意味だ」
「いや。大人になるのに必要じゃ無いかなって」
そう言いながら柊子は山田が去った人混みを見る。
そしてまた体育祭の予行練習が始まった。
6月なのであまり暑くないがそのうち暑くなるんだろうな。
堪らない。
☆
私は男子チームの別れている班が練習する姿を見つつ水道水を飲む。
それから溜息を吐く。
そして顔を上げる。
すると横に「やあ」と山田昴が顔を見せた。
「何?」
「いや。君にちょっと聞きたいんだけど」
「...?」
「柊子ちゃん達と仲が良いんだよね。君」
「...そうだけど」
「...彼はもしかして柊子ちゃんが好きなのかな」
「もしかして...?...どうか分からないけどそうなの?」
「いや。雰囲気的にそう見えたからね」
山田昴は肩をすくめる。
それから苦笑した。
私はその姿を見ながら「...」と考えてから山田昴を見る。
そして山田昴に聞いた。
「だとしたらどうするの?」
「...俺としては彼にも。彼女にも幸せになってほしいからね」
「つまりくっ付けたいの?」
「回りくどくなってすまない。...そういう事だね」
「...少し無理があるんじゃ無いかな」
「...そうかい?」
「いや。壁が有ると思う」
そして私は栓を閉めた。
それから私は顔を上げる。
私は山田昴を見つめる。
「...貴方はどうしたいのか知らないけど...」
「俺は相変わらずだよ。...ただ2人には幸せになってほしいんでね」
「それは...自分が失敗したから?」
「どこで聞いたのか知らないけどそういう事だ。後悔はしてほしくないからね」
「...とは言ってもね...」
私は考える。
するとクラスメイト達がやって来た。
男子と女子達が4人ずつ。
私は「?」を浮かべてその姿を見る。
「山田ぁ。聞いたぞ」
「暁月達を幸せにするってな」
「そうそう」
余計な情報が漏れてしまった。
そう思いながら私は山田昴を見る。
山田昴は私を見た。
私はその姿にクラスメイトに向く。
「...内緒にしていてくれる?」
「当然」
「ゴチよ〜」
「ゴチってなんだ」
クラスメイト達はそう言いながら苦笑し合う。
私はそんなクラスメイト達を見てから目線を逸らした。
そして戻してから山田昴を見る。
山田昴に言う。
「私は...そういう気はないけど。...だけど幸せになってほしいのは事実だから」
「...そうだね」
「...山田昴の提案に乗ろうと思う」
「じゃあ暁月達を幸せにする計画だな」
「そうだねぇ」
「...んじゃ上島がそれこそ班長で」
「確かにね」
何で私?
そう思いながら私は目を丸くして慌てる。
すると山田昴が「はいはい。どうどう」と宥めた。
それから全員に宣言する。
「今はまあ状況的にまだ無理かもだけど...彼達には幸せになる権利がある」
「だな」
「確かにな」
「...玉城さんもそう望んでいると思うから。...幸せにしてやろう」
「「「「「オッケー」」」」」
山田昴は笑みを浮かべて手を叩く。
それからみんな持ち場に戻った。
その日。
私達は決意する事になった。
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