第47話 暁月晴矢×秀水柊子=?


橋本は最低な野郎だった。

だがまあ予想範囲内だが...まさか玉城を騙すとは思わなかった。

橋本に騙され玉城は自殺未遂を起こした。

玉城は全治6か月だそうだ。


「...そうなんだね」


体育祭の予行練習の中。

その休み時間の中で山田はそう言う。

それから山田は「...」となってから考え込む。

そして水を飲んだ。


「俺的に言うと橋本も被害者だと思うけどね。まあどうか分からないけど。だけど橋本は豊橋の大親友だ。何かしらあってもおかしくはないからね」

「そうなんですね...」

「ああ」


山田が疑問符を浮かべていた柊子に反応する。

すると山田は苦笑して前を見た。


「会長から聞いたかな」

「何をですか?」

「いや。...豊橋の事、それから橋本の事を。...会長から聞いてないのかなって」

「...私は聞いてません」

「そうか...君は?」

「...この前、豊橋と会長さんが話していた。会長さんとは話したな」

「...やはりね。そうなんだ」


それから山田は「...」となってから考えた。

そして山田は後ろの地面に手を突いてから空を見上げる。

そうしてからこう言った。


「俺達にもあまり話したがらないんだ。その事実をね」

「...そうなのか」

「ああ。...だから珍しいかな。会長が君に自らの事を全部話すのはね。相当信頼されているんだな。君は」

「分からないな。その辺りは。...俺は信頼されているのか?」

「されていると思うけどね。...まあ俺は会長じゃないからよく分からないけど」

「...」

「...それはそうと。...君は随分長い事、柊子さんと一緒に居るけど。そろそろ柊子さんを好きになったりしないのかい?」

「...そろそろとか無いだろ。...俺は...よく分からない」


柊子は「だね」と言いながら苦笑する。

俺はその姿を見つつ山田を見る。

山田は苦笑して肩をすくめる。


「そうだな。...質問がおかしかった。...すまない」

「...そういうお前は...」

「その質問は無しだ。...まあ俺は俺なりに進むさ」


そして山田は先生に呼ばれて行ってしまった。

俺はその姿を見ながら考える。

そもそもこの湧き上がる感情が、好き、なのかすら分からないが。

そう思いながら俺はスポーツドリンクを飲む。


「...山田くんは相変わらずだね」

「そうだな。スカし具合が半端じゃない」

「...でもああいうのって必要かもね」

「...どういう意味だ」

「いや。大人になるのに必要じゃ無いかなって」


そう言いながら柊子は山田が去った人混みを見る。

そしてまた体育祭の予行練習が始まった。

6月なのであまり暑くないがそのうち暑くなるんだろうな。

堪らない。



私は男子チームの別れている班が練習する姿を見つつ水道水を飲む。

それから溜息を吐く。

そして顔を上げる。

すると横に「やあ」と山田昴が顔を見せた。


「何?」

「いや。君にちょっと聞きたいんだけど」

「...?」

「柊子ちゃん達と仲が良いんだよね。君」

「...そうだけど」

「...彼はもしかして柊子ちゃんが好きなのかな」

「もしかして...?...どうか分からないけどそうなの?」

「いや。雰囲気的にそう見えたからね」


山田昴は肩をすくめる。

それから苦笑した。

私はその姿を見ながら「...」と考えてから山田昴を見る。

そして山田昴に聞いた。


「だとしたらどうするの?」

「...俺としては彼にも。彼女にも幸せになってほしいからね」

「つまりくっ付けたいの?」

「回りくどくなってすまない。...そういう事だね」

「...少し無理があるんじゃ無いかな」

「...そうかい?」

「いや。壁が有ると思う」


そして私は栓を閉めた。

それから私は顔を上げる。

私は山田昴を見つめる。


「...貴方はどうしたいのか知らないけど...」

「俺は相変わらずだよ。...ただ2人には幸せになってほしいんでね」

「それは...自分が失敗したから?」

「どこで聞いたのか知らないけどそういう事だ。後悔はしてほしくないからね」

「...とは言ってもね...」


私は考える。

するとクラスメイト達がやって来た。

男子と女子達が4人ずつ。

私は「?」を浮かべてその姿を見る。


「山田ぁ。聞いたぞ」

「暁月達を幸せにするってな」

「そうそう」


余計な情報が漏れてしまった。

そう思いながら私は山田昴を見る。

山田昴は私を見た。

私はその姿にクラスメイトに向く。


「...内緒にしていてくれる?」

「当然」

「ゴチよ〜」

「ゴチってなんだ」


クラスメイト達はそう言いながら苦笑し合う。

私はそんなクラスメイト達を見てから目線を逸らした。

そして戻してから山田昴を見る。

山田昴に言う。


「私は...そういう気はないけど。...だけど幸せになってほしいのは事実だから」

「...そうだね」

「...山田昴の提案に乗ろうと思う」

「じゃあ暁月達を幸せにする計画だな」

「そうだねぇ」

「...んじゃ上島がそれこそ班長で」

「確かにね」


何で私?

そう思いながら私は目を丸くして慌てる。

すると山田昴が「はいはい。どうどう」と宥めた。

それから全員に宣言する。


「今はまあ状況的にまだ無理かもだけど...彼達には幸せになる権利がある」

「だな」

「確かにな」

「...玉城さんもそう望んでいると思うから。...幸せにしてやろう」

「「「「「オッケー」」」」」


山田昴は笑みを浮かべて手を叩く。

それからみんな持ち場に戻った。

その日。

私達は決意する事になった。

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