第46話 陽が消える世界


学校が再開した。

豊島が捕まってから全ての差が生まれた。

私はその事を考えながら今日もまたお弁当を作ってあーちゃんの元に持って行く。

今日もまたあーちゃんに会える。

そんな幸せを噛みしめながらあーちゃんの家に向かった。


「ああ。柊子」

「あーちゃん。おはよう。元気?」

「まあな。...アイツが殺害した現場を見ての...精神面の負荷も無さそうだしな」

「そうなんだね...本当に大丈夫?」

「大丈夫だと思う。...多分だけど」


あーちゃんにお弁当を渡す。

それからお互いに見合ってから頷き合う。


「じゃあ行こうか」

「そうだね」


そして歩き出した。

すると深刻そうな顔の鮫島さんが通りかかった公園に居るのに気が付いた。

私達は「?」を浮かべながらその姿を見る。

それから声をかけた。


「鮫島さん」


するとあーちゃんの言葉にビクッとする鮫島さん。

そして顔を上げてから私達を見る。

私はますます「?」となりながら、何かがおかしい、と考えながら鮫島さんを見る。

鮫島さんは「...」となってから私達の顔を見た。


「どうしたの?鮫島さん」

「...その...言って良いのかどうか分からなくて。...最近、風の噂で把握した事なんですけど」

「...ああ。どうした?」

「...実は...あの学校に裏切り者が居ます」

「は?」

「何というか...豊橋達に対する内通者が居るかもしれないんです」


私達は「!」となってから鮫島さんを見る。

すると鮫島さんは「...」となってから顔を上げる。


「嘘か本当か分かりません。...だけどお伝えしようと思って...考えていたんですけど。...その前にあなた方が来てしまった」

「...そうだったんだね」

「...はい...せっかく居心地が良くなったのにそれを台無しにする様な...すいません」

「その...ソイツは...誰か分かるのか」

「...玉城さんかと思われます」

「え?」


青ざめる。

それから考えていると「ハロー」と声がした。

顔を上げると橋本が居た。

私達を見ながら嘲笑っている。

何をしに来たのだ。


「...何をしに来たの」

「舞台は整ったからね」

「...は?何の舞台が?」

「玉城さんの弱みを握ってね。...情報提供してくれたから。ね?」

「...」

「そういえば貴方は...お金持ちでしたね。...橋本未来」

「お金持ちだよ。アハハ」

「...」


私達は困惑しながら見る。

すると私を見てから橋本はこう言ってきた。

ニヤつきながら、だ。


「お金持ちだよね。貴方の家も。...何でそれなのに親に頼らないの?」

「...」

「お医者さんのご令嬢でしょ?何でそれで利用しないの?」

「黙れ。...私はそういうのは頼らず自立するって決めている」

「あっはっは。勿体なーい」

「...それで橋本。...玉城は何でお前の手に落ちた」

「彼女は患者さんの弟を守りたいんだって。...それで彼女を助けるって言ったけど。その分、情報をもらった」

「...とことんのクズだな。...ふざけた真似を。どうせお前は助けてないだろ」

「闇バイトよりマシでしょうよ」

「言葉巧みに情報を抜き取る点はそれらと何ら変わらないけどな」


そして橋本を見るあーちゃん。

するとその橋本は私を見た。

そうしてから笑顔になる。


「実は叔父様からお金を貰っちゃった」

「は?」

「...1000万円。アハハ。...貴方のお父さんって良い人だね」

「...お前...」


頭を痛め橋本を見る私。

あの男ならやりそうだが。

まさかこんな馬鹿に1000万円も金をやるとは。

何をしているんだ。

というか何が起こっている。


「アンタ何がしたいの」

「私、叔父様を好きになっているんだぁ」

「...金蔓って思っているだけだろ。頭が能天気だな」

「お父さん公認だからね」

「...他人を不幸にした蜜の味は美味しいか。...お前マジにクズだな」


あーちゃんは怒る。

私は鮫島さんを見てから橋本を見る。

橋本はニヤニヤしながらこう言う。


「不幸じゃないよ。...そもそも騙される方が悪い」

「...お前もそうだが豊橋も。...取り敢えず何回か死んだらどうだ」

「私が死んでどうにかなるの?アハハ」

「...どうにでもなるさ。社会はそういうもんだろ」

「でも死ななーい」

「...だろうな。...俺が豊島だったらお前もぶっ殺しているだろう。仕留めきれなかった事を悔やんでいるだろうな」

「アハハ」


そんな橋本を見ながら鮫島さんは震える。

それから橋本をかろうじて睨んで反論する。


「じゃあ...貴方に情報提供したのは騙されたって事ですか?玉城さんは」

「あ、今朝がた彼女が自殺を図ったの知らない?」

「...自殺...は?」

「つい今朝がた情報を知り合いから仕入れたというか入ったんだけどね。たまたま」

「...貴様...」


全然知らない。

どうなっているの。

そう思いながら私は青ざめる。

すると橋本は「ほら」と言ってからスマホを見せる。

デコレートされたスマホの奥。


マンション前で倒れている玉城さんが写っていた。

野次馬の中で、だ。

救急車で運ばれていっている。


「...お前...ネット上にこれを全部バラす。お前の様など腐れは死ね!!!!!」


あーちゃんが見た事もないぐらいキレる。

飛びかかろうとした。

その姿を押さえ込む私。


「あーちゃん!駄目!!!!!先に手を出したら負けだよ。落ち着いて!!!!!」

「ざーんねん。アハハ」

「...でも貴方は痛くないんですか。ネット上にこんなのばら撒かれたら...」

「私には味方が沢山居るから」


その自信はどっから湧くのか知らないけど。

私は静かにあーちゃんを抑えながら見る。

橋本はニヤつく。


「というかそもそもアドバイスだけしただけ。...何もしてないしね。私」


そう言いながら橋本は歪んだ笑みを浮かべる。

どうしてコイツはこんなに歪んでいる。

そう思いながら私は橋本を見る。

橋本は薄ら笑いを浮かべた次に口角を上げた。


「...人助けをした何もしてない私が何で裁かれるの?」


言いながら橋本は高笑いをした。

それから去って行く。

私は静かにそれを見送るしかなく。


因みに玉城さんだが腰の骨を折る重傷。

全治6ヶ月だった。

判明された遺書にはこう書かれていた。


(私は愚かです。死を持って償います)


と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る