第44話 花束を
山田と山斑の出会いはこのゲームセンター。
そして当時は相当荒れていたらしく。
何故それを分かち合う事が出来たのか。
山田はこう語る。
「会長は話し合いという拳で殴り合って語る派だ。...それが何だか新鮮に感じてね」
という事らしい。
俺はその言葉を聞きながらクレーンゲームの親子連れを見ながら微笑ましくなっている山田を見る。
山田は俺を見ながら自らの髪の毛を指差す。
それから苦笑した。
「この髪は当時から変わってないんだ。...染めていてね」
「ああ。そうだったんだな」
「そうだね。...それで結論から言って何が言いたいかというと。こうなった以上は拳という暴力じゃない。話し合いの暴力で解決しないといけないだろうって言いたいんだ」
「...話し合いの暴力か」
「そうだね。...多分彼女も相当苦しんでは居るかもだけど同情は出来ない。こうなった以上は話し合いの暴力でしかもう解決は出来ない。...だけど当時と違ってオススメしないな」
「...」
「彼女は融通が効かないから」
そして山田はクレーンゲームを見てから100円入れた。
それからクレーンゲームをするとぬいぐるみが取れた。
山田は目を丸くしながらまた苦笑する。
「珍しいね。...こんな大きな景品が100円で取れるなんて」
「...凄いな。お前の操作能力」
「...違うね。...俺の力じゃない。運の力だね」
山田は大きな猫のぬいぐるみを見ながら無言になる。
俺はその姿を見ながら考える。
それから聞いた。
「なあ。...お前は...影島達也とはどうなったんだ」
「当然、仲違いだね。...まあ元から殺されてもおかしくはないって思っていたけど。
あくまででも人に対してそう思っちゃいけないけどね」
「...」
「...だけど俺は影島達也は気に入らなかった。殺されて当然だと思うよ」
「警察官になるんだろ。お前」
「それであっても人を憎むのは生物のサガだ。...俺は警察官になるけど...憎いものは憎いよ」
「...」
「俺は絶対に弟と影島達也は許さないな」
そして山田は側にあったビニール袋に猫のぬいぐるみを入れてから俺に渡してくる。
俺は「?」を浮かべて山田を見る。
山田は人差し指を唇に添えてウインクした。
イケメンの笑みだ。
「...これは彼女にやってくれ。...柊子ちゃんにね」
「...俺が取ったという事で、か」
「そうだね。俺を出されても意味無いから」
それから山田は俺にぬいぐるみを渡してから周りを見渡す。
俺はそんな山田に聞いてみる。
猫のぬいぐるみを見てから。
「...お前は彼女は作らないのか」
「それは出来ないね。...俺はあくまで会長と遠山さんの恋路が気になるけど。俺の旅路なんてどうでも良い」
「...」
俺は山田を見る。
すると「あれ?」と声がした。
山田はその方角を見る。
俺も山田の見ている方向を見る。
「昴くん?」
「...やあ。凪」
「どうしたの?珍しいね。君がこの場所に来るなんて」
「生徒会に入ればこんな場所に来る事は先ず無いと思うから」
「だね。...え?そちらは...」
「ああ。彼は...」
「暁月晴矢です」
「暁月くん?...あ。昴くんが言っていた...」
目の前のプチギャルな凪という女子は笑顔になる。
他校だというのに全く俺への嫌悪感を感じない。
それから俺に手を差し出す。
「昴くんがお世話になってます」
「...あ、ああ」
「私は井上凪(いのうえなぎ)です」
井上凪さんか。
俺はそう思いながら見ていると井上さんは久方ぶりの再会なのか嬉しそうに山田と会話する。
俺はその姿を見ていると井上さんが赤面しているのに気が付いた。
「...」
大切にしてくれる人は居るじゃないか。
そう思いながら俺は山田を見る。
山田は苦笑しながら反応しており。
暫くして井上さんは俺に向いた。
「じゃあまた。会いましょうね」
「あ、ああ」
「...」
山田はただ「...」となりながら見送る。
美少女でありコイツにうってつけの様な気がする。
だが山田は苦手そうな顔をしていた。
何だろう。
「...彼女は...その。...何かあるのか」
「...何もないよ。ゲームセンターで知り合った女子だ。...ただ俺が...最悪な事をしただけさ」
「最悪な事って何だ」
「彼女の意思を尊重せずに嫌い続けていた。告白も約束の場所に行かなかった」
「...成程な」
「最低だろ?拒絶したんだから」
「...いや。...それってお前なりの彼女を守る事だったんじゃないか?」
「...それはどういう意味だい?」
コイツは見ず知らずのうちに...彼女を守っていた。
そう思えたけどな。
思いながら俺は山田を見る。
山田は「...」とまたなってから首を振る。
それから苦笑した。
「...いや。俺は最低だよ。彼女の想いも何もかもを拒絶している姿を見せた」
「...」
「...それに過去が過去だ。俺には恋愛する資格は無いよ。...まあ彼女からは俺に対する好意が溢れているけどね」
「気が付いていたのか」
「それはあれだけ昔から好き好きコールをされるとね。...誰だって気が付くだろう」
「...」
俺は静かに山田を見る。
山田は井上さんが去って行った方角を見るのを止めてから俺に向く。
それから笑顔になった。
「じゃあ早速行こうか」
「行くってどこにだよ」
「プリクラを撮ろう」
「意味不明な事を言うな。流石に断るぞ」
「はは。冗談だよ。そういうのは柊子ちゃんにしてあげてくれるかい」
井上さんの事がコイツは好きなんじゃないのか?
そう思いながら俺は山田を見る。
山田は俺の考えを見透かしているのかどうか分からないが。
スカした様な笑みを浮かべた。
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