第三章 上下が入れ替わる世界

第42話 排除


豊島数多が学校に来なくなったので俺は豊島数多の家にプリントを届ける名目で豊島数多の家に来た。

相変わらず荒れた様な感じの家だ。

一見すると普通だが普通とは感じられない気配がする。


「...インターフォンも壊れているのか」


俺はそう呟きながらドアをノックしてみる。

するとドアが開いた。

それから「!!!?!」という感じで驚愕した豊島が出て来る。

豊島は俺を見ながら「...」となる。


「...何の用事だ。...何をしに来た」

「見て分かる通り学校帰りでな。...お前にプリントを届けてほしいって先生とかから頼まれてな」

「...」

「...プリントは届けたぞ。じゃあ帰る」

「待て」

「...何だよ」

「私は...アンタに酷い事をした。それでもアンタは私をどうも思わないのか」

「それは今までの疑問か?...そうだな。回答をするならお前からやられた事はまじに怒りに思っている、が」

「...?」

「何れにせよこれは優しさとかじゃない。お前がまた暴走したら止めようが無いから先手を打っているだけだ」


俺の言葉に「...」となってから俺を見る豊島。

それから目線を逸らす。

その際に...首に傷があった。

傷っていってもそれは字と思うが。


「まだ母親から暴力はあるのか」

「ああ。...だから出て行く」

「出て行くって言ってもアテはあるのか」

「学校側と交渉している」

「...寮に住める様にって事か?」

「そう。...そういう感じだけど。何か文句ある?」


その言葉に俺は首を振る。

正直、寮とかはシステムがよく分からん。

だけどコイツを親からシャットアウトしてくれるんなら良いんじゃねーか。

そう思いながら俺は豊島を見る。

豊島は「...」となってから俺を見ていた。


「...何だ」

「アンタは過保護だと思う。...アンタは違うって言うかもだけど。...私は絶対に過保護だと思っている」

「言っている通り、俺はお前を保護してない。...そしてお前が死のうが生きようがどうでも良い。だがお前に簡単に死んでもらっちゃ困る。こんなの世の中だし」

「...あっそ」


そして豊島は俺を一瞥する。

それから手をヒラヒラさせた。

俺は「?」を浮かべて豊島を見る。


「早く帰ってくれる?...死にたくなければ」


俺はその言葉に納得しながら目線を豊島から外しそのまま踵を返す。

それから歩き出した。

そしてそのまま家に帰宅...しようとした。

だがそうはいかなかった。


「よお」

「...何だ影島」

「あのクソッタレは元気か?」

「よくそんな事が言えるな。仮にもお前の彼女だったんだぞ」

「俺にとっちゃ手駒だ」

「...そうか。いっぺん死んだらどうだ。...2回でも良いけど」

「俺はそんな気はないな」


本当に何の用事だ。

そう思いながら俺は見ていると影島は肩をすくめた。


「いや。まあお前に用事というか。...実際は豊島に用事だったんだが」

「...あ?もう近付くなって言ったろお前にも」

「そうもいかない。スタンガンを持って来たアイツには警察に捕まってもらいたいのもあって様子見で来たんだが」

「...ああ。そういう事か。損害賠償的な?」

「...お前も分かるだろ。アイツに損害賠償を請求したいの」

「分かるっちゃ分かるが。...確かにその通り」

「なら話は簡単だ。金を巻き上げるべきだ。アイツから」


何を言ってんだコイツ。

そう思いながら影島を見る。

それから考える。


「今のアイツには力がないから無意味だ」

「俺達は遊ぶ金が欲しくてな」

「とことんゴミクズだな。それなりに死んで良い」


そして俺は手を挙げる。

それから挨拶してから去ろうとした。

すると影島はニヤニヤした。


「どっちにせよアイツは悪の道に転落する」

「...どうしてそう言える」

「それを仕組んでいたからな」

「お前らが裏切ったのも少しだけでも計算のうちってか?」

「そうだ。...アイツの心はボロボロだしな」

「...どういう意味だ」

「お前らを倒すって事だよ。つまりはな」


そうしていると豊島の家から悲鳴が聞こえた。

俺は「!!!?!」となりながらそのまま影島を見る。

影島は肩をすくめている。


「お前何をした」

「...良いか。1つ言うがお前らに復讐はまだ終わってないんだ」

「...」

「アイツの心はまあこれまでの事もあって多分ボロボロだ。SNSに嘘情報を流しても信じると思うぜ」

「...貴様...」


俺は踵を返す。

それから豊島の家に行くと。

玄関先で豊島の母親らしき女性が倒れていた。

そして豊島は睨む様に母親を見ている。

手には包丁が握られていた。


「お前...豊島...何をしたんだ」

「刺した。...この女は別の男と浮気したって話だから」

「...」

「...私はもう我慢ならない」

「お前...」


そして影島がやって来る。

影島は苦笑しながらこう呟く。


「やれやれ。やっちまったな」

「...何。影島」

「お前のお母さんが浮気したって情報は嘘だぞ」

「...は?」


豊島は包丁を持ったまま血を見る。

そして俺達を見据える。

影島はその姿にニヤニヤする。


「全部俺達がお前に流出させた様に見せかけたフェイクだ」

「...じゃあ...SNSに挙がっていたのは...」

「全部、嘘だ」

「...」

「我ながら上手くいったろ。全部お前を落とし込む...」


そこまで言った所で影島の腹にとんでもないものが刺さった。

素早かった。

豊島が飾られていた刀?を抜刀した。


まさかの真剣の日本刀だった。

そして「て、テメェ!!!!!」と影島は口から苦悶の表情で血を吹き出す。

俺は慌ててから豊島を止めるが。


「...もう良いわ。お前も死ね」


と言ってから影島の喉に日本刀を突き立てた。

影島は反応が薄くなりそのまま息絶えた様に見える。

俺は「...」となってから見ていた。

そして影島の日本刀を取り上げて包丁も取り上げた。


結論から言って近所が通報し。

豊島は捕まった。

その中で豊島の母親は重傷を負い。

影島は殺害された。

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