第41話 THE、恋


豊島数多が学校に来なくなった。

私は、まああいつだしな、とか考えながら生徒会室に向かう。

すると90度のお辞儀と共に遠山優樹菜さんが出て来た。

律儀なお辞儀に私は苦笑する。


「こんにちは」

「こ、こんにちは。遠山さん」

「以前も話したのですが私は年下です。呼び捨てで構いません」

「...いや。そういう訳にもいかないからね」

「...律儀ですね。秀水先輩」

「律儀とかじゃないよ。...ただ私は私なりにそう思っているだけ」


私は遠山さんを見る。

遠山さんは目を丸くしながら目線を逸らす。

それから苦笑した。

私はその姿を見ながら奥を見やる。

そこに「...来たかね」という感じでエ◯ァの碇ゲ◯ドウみたいな人が居た。


「会長。ゼー◯のキー◯・ローレンツですか?貴方は」

「詳しくは無いがそういうのがあるのか」

「そういうのも何も意識しているでしょう」

「意識はしてない。...良い。全てはそれで」

「会長。絶対に貴方はアニメオタクですよね?」

「ふむ。俺はアイドルオタクだ」


ドン引きする遠山さんだが。

何だかその言葉に残念そうな感じが見える。

一体何故、そんなに残念がるのか分からないけど。

そう思いながら山斑先輩を見る。

山斑先輩は立ち上がった。


「昴」

「...はい。何でしょうか?会長」

「書類を取りに来たのだな。確か」

「そうですよ。人類補◯計画書では無いです」

「それはそうだろうな。LC◯にみんな帰る気か?」

「うわ。アニメオタク」

「そういうお前も随分詳しいな。優樹菜」


アットホーム的な感じがする。

私は柔和にそう思いながら笑みを浮かべていると私を遠山さんが見てきた。

それから指を書類に指差す。

え?


「書類は片付きました」

「え!?片付けちゃったの!?嘘でしょ!?」

「はい。暇だったのでやっておきました」

「まあ彼女は本当に全ての書類をするのが得意だから。片付けるのも」

「そうだな」


私は驚きながら遠山さんを見る。

すると遠山さんは笑みを浮かべた。

それからこう答える。


「生徒会は命の洗濯です。...この場所に来る度に笑顔になって欲しいですから」

「?」

「...すまないが彼女には伝わらないと思うぞ。優樹菜」

「そうですね」

「...煩いですね。会長。ぶちのめしますよ」


遠山さんはハリセンを取り出す。

山斑先輩は慌てながら口籠る。

その様子を見てから山田くんを見ていると。

山田くんは笑みを浮かべて遠山さんを見てから笑顔になる。


「それにしても夫婦漫才の様だね」

「...ふ!?」

「ふむ?夫婦か...だが俺には既に初恋の」

「...」

「...ん?」


遠山さんは山斑先輩をハリセンで叩く。

それからそのまま赤くなって去って行った。

複雑そうな顔で生徒会室の奥に、だ。


「え?」

「あちゃー。デリカシーが無いですね。会長も」

「...デリカシーとはどういう事だ...」

「そのままです。まあ知らないならそれでも」


私は苦笑いで遠山さんを追って生徒会室の奥に行った。

それから書類を見る。

確かに印鑑も押されており整っている。

私はそれを見てから遠山さんを見る。


「...どうしました?」

「ああ。いや。遠山さんって...もしかして山斑先輩が好きなの?」

「ぶふぁ!」


遠山さんは噴き出した。

それから「ゲホゲホ!」と咳き込む。

私は慌てながら遠山さんの背中を摩る。

すると数秒して遠山さんはいつもの調子に戻った。


「...その...どういう意味ですか」

「...いや。ふと思ったんだけどね」

「私は...その。会長が好きでは無いです。ただ格好良いだけです」

「...」


それって好きと同じ言葉では?

そう思いながら私はクスッと笑う。

すると遠山さんは赤面しながら慌てた。

それからモジモジする。


「格好良いだけです」

「...そっか。...私、その気持ちがよく分かるかな」

「...!」

「近くても遠いから」

「...」


遠山さんは「...」となってから私を見る。

疑問符が浮かんでいる感じだ。

私はその姿に苦笑してから天井を見る。

そして目を閉じて開けた。


「...好きって良いじゃん」

「...秀水先輩?」

「告白の予定は?」

「...無いです。...会長は追っかけですし」


私はそんな遠山さんの残念がる姿に遠山さんの眼鏡を外した。

それから大きな瞳を見る。

メチャクチャ可愛い女の子だ。

眼鏡を取り返そうと慌てる遠山さん。

そんな遠山さんに聞いてみる。


「ねえ。もし良かったらだけど」

「は、はい?!」

「...一緒に買い物に行かない?」

「...そ、それはどういう意味ですか?」

「うん。山斑先輩に告白する為に可愛くなるって意味」

「で、でも。私は...可愛く無いですし」

「本気で言ってるの?...女の子の私でも可愛いと思っているよ?」


そして私は遠山さんを見る。

遠山さんに眼鏡を返した。

すると遠山さんはポツリと呟く。


「可愛くなくて良いんです」

「...それはどういう意味?」

「私は会長の側にいれればそれで良いんです」

「...駄目だねぇ」

「え!?」

「そんな考えは駄目だねぇ」


遠山さんの言葉を全否定しながら笑顔になる。

それから私は手を握る。

何というか遠山さんの手を、だ。


「...1度きりの人生だよ?人生楽しまないと。...ね?」

「...秀水先輩...」


それから書類を片付けたりの作業をしていると山田くんと山斑先輩がやって来た。

私達を見ながら「?」を浮かべている。

その姿に私は人差し指を口元に添えてからウインクした。

山田くんは「???」を浮かべながら山斑先輩と顔を見合わせた。

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