第40話 生徒会書記:秀水柊子


そのスタンガンの事件以降の6月になった。

同時に豊島が学校に来なくなった。

俺達は豊島の帰りを待ったが進展が無い。

一方、学校では体育祭の準備が始まっていた。


「もう直ぐ体育祭だけどみんな意気込みはどうかな」

「おう!」

「完璧だよ」


男子も女子もクラスメイトはそう答える。

目の前の生徒会副会長の山田が笑みを浮かべてから宣言している。

俺はその姿を見ながら大欠伸をしていると。

山田が「暁月くん」と声をかけてきた。


「...何だ?山田」

「君が体育祭の委員をしないか?」

「...冗談だろう。...俺がやったら大変な事に」

「それは無いと思うね。...それから女子の委員は上島さんか集水さんに任せたいんだけど」

「良いですよ」

「柊子。嘘だろ」

「あーちゃんがやるなら」


クラスは「それ良いかもな」とか。

「夫婦じゃん」と言いながら笑みを浮かべて小馬鹿にしてくる。

俺は盛大に溜息を吐きながら「分かったよ」と言いながら山田を見る。

山田は「俺は総合班長だ。...という事でやりますか。皆の衆」と話した。


「おぉ!!!!!」

「絶対に勝つぜ!」

「あたぼうよ!!!!!」


俺が体育委員で良いのかどうか分からないが。

まあクラスが意気込んでいるし...もう良いか...。

そうして俺は溜息を吐いていると「暁月」と声がした。

顔を上げるとそこに...吉田?だっけ。

ソイツが居た。


「...初めてだな。話すのは」

「ああ。初めましてだな。...どうした」

「...陸上部の人間だが。何か分からない事があったら聞いてくれ」

「...!」

「...俺は正直、レイプ魔だとされたお前の事をその事実で受け付けられらなかったんだ。だが実際は冤罪だった。...そのお詫びとして...今から仲を改善していきたい」


吉田は手を差し出す。

それから握手を求めてきた。

俺はその姿に手を差し出してから握る。

その姿を笑みを浮かべて山田が見ていた。


「...という事でみんな。暁月くんが分からない事があったら彼を助けてやってくれ」

「おう」

「だな」

「そうだね」


その中で。

クラス委員の玉城さんもホッとした様に笑みを浮かべている。

俺は少しだけ恥ずかしがりながらその姿を見つつ。

吉田を見る。

聞いた所だが吉田は陸上部の部長らしい。



「やあ」

「山田?」

「このクラスにもだいぶ慣れたみたいだね」

「...お陰様でな。お前の」

「ソイツは何よりだ。...それで知らせたい事がある」

「...ああ。どうした」


すると俺達の元に柊子がやって来た。

ニコッとしながら立っている。

俺は「?」を浮かべながら見ていると。

「彼女が生徒会に入る」と言った。

何?


「...お前...生徒会に入るのか?柊子」

「うん。この学校が好きになったから」

「...」

「...そのお知らせも兼ねてね。...彼女は良い子だね」

「まさか生徒会に入るとはな」

「そうだね。...だけど私、この学校の為ならって思って」

「...」


随分変わったもんだな全てが。

俺達が出会った頃も...ギスギスしていたのに。

全てが変わり始めた。

ギスギスしていた空間が解消されていく様な。

煉瓦の壁が壊される様な。


「...分かった。...俺の代わりに頑張ってくれ」

「書記はやった事が無いけどね。頑張る。あーちゃんも応援してね」

「...ああ」


そして山田は「じゃあ生徒会室にちょっと資料を取りに」と山田が柊子を見る。

柊子は「はい」と言ってから山田に付いて行った。

俺はその姿を見てから後ろに傾いていると。

「暁月くん」と声がした。


「...ああ。玉城。どうしたんだ」

「豊島...どうなってる?」

「申し訳無いが豊島とは連絡が取れない。...何がどうなっているかも分からない」

「...そうなんだね」

「だけど今度、家に行ってみようと思う。...アイツの家に」

「...危ないんじゃないかな。大丈夫?」


危ないとは思う。

だが...このままで居るのもな。

そう思いながら俺は天井を見上げる。

すると玉城が「...でも良かったよ」と言ってくる。


「暁月くんが死ななくて良かった」

「...そうだな。事件がデカかったもんな」

「...うん。本当に」

「...心配してくれて有難うな」


すると玉城は「...私、申し訳無いんだけど」と切り出す。

困惑する様な顔で、だ。

そして「...豊島は私は信頼出来ない。...そして彼女は最低だと思う」と話す。


「暁月くんが信頼したいのは分かる。...だけど無理だよ。きっと」

「...そうだな。多分無理だ」

「...どうするの?この先」

「正直、どうなるかは分からないしどうするのもかも分からない。...何も分からないけど...だけど立ち止まっていても仕方が無いかなって」

「それで...豊島に声をかけるの?」

「...奴をこの場に呼んだのは更生のチャンスがあったから。だけどそれ以外もある。...奴は...幼馴染だ。秀水柊子の親の事を詳しく知っているかも知れないから情報を聞き出そうと思ってな」

「え?」


俺は「柊子は親の事をあまり話したがらない。だから知れるかなって思ってな」と言いながら玉城を見る。

玉城は「...複雑なお家なの?」と心配げに聞いてくる。

その言葉に俺は考え込む。


「そうだ。...彼女はお嬢様学校の生徒だったんだが...俺を目標として...ゴリ押しで転校した」

「...そんなに...」

「柊子の家はかなり複雑だよ。...その事を奴にも聞きたくてな」

「...そうなんだ...」


まあこの作戦は上手くいくか分からない。

だから諦めてはいるけど。

ついでの様なもんだ。

そう思いながら俺は玉城を見る。


「でも心配有難うな。俺達の」

「それはまあね。クラスメイトじゃなくて私的にはもうお友達って思っているから」

「...」

「...何かあったら私に頼ってね」

「...分かった」


そして俺は「じゃあ」と笑みを浮かべてから言う玉城に手を振ってからそのまま窓から外を見る。

豊島数多。

奴は今どこで何をしているのか。

考えながら俺は眉を顰めた。

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