第36話 歪曲

豊島が帰ってから俺はまた部屋に戻ってから勉強をした。

それから1日経った。

そして俺はいつも通り柊子からお弁当を受け取り登校を...と思った矢先だった。

目の前に豊橋瑠美と。

もう一人誰か居るがそいつらが顔を見せた。


「お前は橋本未来か」

「初めまして。その通りだよ。橋本未来だよ〜」

「...何をしに来たんだ。お前ら」

「簡単に言いますね。あなた方がふざけているせいであの子が悩んでいます」

「あの子ってのは豊島か」

「そうです。何をしたか知らないですけど死んでもらえますか?」


そんな橋本の言葉に「死ぬわけ無いでしょう」と柊子が嘲笑う。

それから俺も「そうだな。今は死ねないね」と言いながら2人を見る。

2人とも笑ってはいるがかなり深刻めな感じの笑みだ。

つまり感情が無い笑みである。

恐ろしいな。

人じゃ無い様に見えるんだが。


「豊島さんはあなた方を嫌っています」

「...そうなのか。そりゃ困ったもんだな」

「何を吹聴したか知りませんがあなた方のせいとしか思えません」

「...」


すると柊子が「あなた達が悪いんだと思うんですけど」と言う。

そうしていると「黙れ」と橋本が言った。

変異した。

それから「アンタ達のせいで豊島は人格を失っている」と激昂する。

俺達は顔を見合わせる。


「全てアンタ達が悪い。レイプなんかしなかったらこうならなかった」

「逆に俺がレイプ魔にされなかったらお前らも出会わなかったぞ。...豊島に」

「確かにそうだけど。...だけどあの子の気持ちを考えた事あるの?」

「...お前らは何も分かってないな。アイツの感情を」

「は?...レイプ魔に言われたく無いです」

「...正直、豊島は救いようがあると思っている」


そう言いながら豊橋と橋本を見る。

豊橋と橋本は「...」となって眉を顰めている。

俺はそんな2人を見ながら「...お前らも正直イカれていると思っている」と切り出しながら「...俺もそうだがな」と言う。


「何というか影島もそうだが。アイツの為にならない事をしている。...お前らはな。...もうアイツを解放してやってくれないか」

「解放って何ですか?...私は彼女の為を思ってやっています。私が誰よりも彼女を知っている」

「...」


何を言ってんだコイツら。

俺は溜息を盛大に吐きながらそいつらを見る。

すると「...アイツはそんなやわじゃない」と柊子が言った。

「...数多は...アイツは貴方達から離れるべきだ」とも。


「...私達を悪人みたいに言わないでくれますか?」

「悪人だ。お前らは。...何というか恐らくお前らが豊島を洗脳したんじゃ無いのかって思う程だぞ」

「洗脳...酷い事を言いますね」

「いやいや。マジにな。...お前らがクソッタレと思う」

「...」


怒りを爆発させるぐらいの感じを見せる2人。

すると背後から「もう良い」と声が。

俺達はその姿を見る。

そこに...ショートヘアの豊島が居た。

髪の毛をバッサリ切り落としているし...何だ?


「...その髪の毛...どうしたの?」

「切った。ウザいから」


豊橋は絶句している。

俺は「...何しに来た」と言う。

すると「私、転校した」と言う。

は?...は?!


「昨日の今日で学校に申請書を出したの」

「...は!?」

「はい!?」

「...どこに転校するの?」

「...0からやり直す。...その為に学校を転校する」


すると背後から更に人が出て来る。

それは鮫島さんと山田だ。

どうなっている!?

そう思いながらその3人を見る。

山田が「やあ」と笑顔になる。


「...彼女はね。うちの学校に来るんだ」

「「「「...!?」」」」


俺達はまさかの言葉に顎が落ちる。

すると山田は冷めた目をした。

それから豊橋、それから橋本、と言う。

橋本は真顔のまま。

豊橋は「何」と聞き返した。


「彼女はうちの高校に来る。...もう関わらないでくれるかな」

「...」

「全部アンタが洗脳したんでしょうが!!!!?」

「違う。...全て豊島の意思だ」


俺達は唖然としながら顔を見合わせてから豊島を見る。

鮫島さんが隠れながら「...悪事は許せないけど。彼女は...目先を変えた」と言う。

山田も「悪事は許せないね。...だけどそれを仕組んだのは...君じゃないか?豊橋」と言いながら豊橋を見る山田。

は?どうなっているんだ。


「...君...相当な悪人だね。人を手を汚さずやっていたのは君だったんだね」

「...じゃあ何か。...山田。その。...豊島は何なんだ?一体」

「彼女は洗脳から逃れられなかっただけだよ。...殺人鬼の噂の弱みをつけ込まれた、というか」

「...豊橋。お前何をしている!?」


豊橋は「...」となってから「あーあ。バレちゃ仕方がないかな」と言い始めた。

それからゆらりとなる。

この女。

そう思いながら見ていると「まあ所詮は悪事の手駒だったから問題ないけど」とも言い出した。


「...そうだけど?豊島数多は弱者で洗脳しやすかったから。お金とかをまあ陰ながら貢いでもらったりした」

「豊島の親族がそんな感じで悪事を重ねていたのを利用して?...君、最低だね」

「お前がラスボスか」

「...ラスボス?は?...どう表現しても良いけどラスボスじゃないよ?」

「...瑠美。...アンタまさか私が怪我したのもザマァって思っていたの?」

「それどころか私は達也と付き合っているよ」

「...は...?」


そして豊橋は「アンタは使い捨ての手駒だった。...私達にとっては結構前から邪魔な存在だった。そして今に至っているけど。あくまで達也は私の彼氏。貴方は性的に使い捨てられただけ」と言った。

マジかコイツ...。

そう思いながら「アンタが離れるなら容赦はしない」と言う。


「母親を包丁で滅多刺しにして殺して。...まあ気が狂っているね。君も」

「...」

「刺し...!?」


豊島は絶句した。

流石の豊島も何も知らない様だった。

「あれは過失だよ?私は何も知らない」と素っ頓狂な事を言う。

コイツ...少年院に居たのか?


「豊橋はまあ少年院に居たんじゃないよ。法の裁きより保護観察処分になった」

「...!」

「...私は母親を殺したんじゃない。あの女は私を殺そうとした。だから私が彼女をぶっ殺したまでだから」

「...」


豊島の今置かれている環境に似たものがあった。

「まあ何れにせよ」と山田が言う。

それから「...豊島はもうこっちのものだ。...君らはどう足掻いても敵だ。敵機は撃墜するに限るね」と言いながら「去ってくれるかい」と笑顔になる山田。

そして豊橋達はそのままニコッとして去って行く。


「...覚えておいてね」


その言葉を残して、だ。

俺達は2人の姿が見えなくなるまで見てから。

そのまま踵を返した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る