第28話 豊橋瑠美の交渉

そのままその日は放課後になった。

その事もあり俺は柊子と一緒に帰っていると。

目の前の電柱から...女子生徒が横に出た。

それは俺の通っていた前の学校の制服の女子。

これは...まさか。


「...来たか」

「貴方が暁月晴矢くんですか?」

「...そうだが。...お前は誰だ」

「私は豊橋瑠美です」

「...」


俺は静かに彼女を見据える。

ポニテの小顔の少女。

かなり人付き合いの良さそうな美少女だが...全く感情が無い感じがする。


確かコイツは...豊島と一緒に出会った時に居たな。

そう思いながら俺は見ていると豊橋は「裏切り者ですね。...貴方も大概」と静かな目で...柊子を見る。

柊子は「...」となってから豊橋を見る。


「裏切り者...というかそれ以前の悪意を持って接しているのはお前達だ。...一体何がしたいんだ」

「注意事項を伝えに来たんです」

「...注意事項とは何だ」

「あなた方が嗅ぎ回っている様ですけど。...私達は悪い事はしたく無いですから」

「...知っているだろ。...お前の友人の豊島が既にクソ悪い事をしているの」

「そうですね。でもそれはそれ。これはこれ。...私は貴方と仲良くなりたいんです」

「...」


すると柊子が「地獄に堕ちたらどうですか」と笑みを浮かべて差し出して来た手をパァンと弾いた。

それから柊子は豊橋を睨む。

豊橋は「...」となってから赤くなった手を撫でる。


「...そもそもあなた方が悪いんだけど。何をしたのか分かっているの?...アンタもそうだけど豊島から離れなさい。子供じゃ無いんだから」

「私は...あなた方と交渉がしたいんです」

「お前のその意思は伝わらない。お前自身の事かもしれないけどお前は...豊島側に付いている。お前は悪人だ」

「私は悪人では無いですよ?」

「嘘ばかり吐くな。...豊島が何をしたか知っているのかお前は」

「...知っていますよ?でも可哀想だって思いませんか?そんな豊島さんも」

「今となっては思わない。...性格がそうなっているのには可哀想だって思うけどな」


豊橋は「...残念ですね」と言う。

それから「豊島さんはあくまで可哀想なので私が居ないといけないんです」とニコッとする。

俺は「...」となってからそんな豊橋を見る。

豊橋は俺達を見ながら「私は...豊島さんを信頼しています」と笑顔になる。


「...どうして信頼とかいう言葉が出る」

「...確かにおイタはしましたけど...絶対的なカリスマだと思っています」

「...カリスマ?」

「私達を助けてくれたんです。...それはもう素晴らしい手腕でした」

「...俺に容赦無く罪を被せたクズがか」

「まあ確かにそうですけど...貴方も悪いのでは?」

「...俺はな。お前のその友人のクズにマジに殺されかけたんだぞ」

「でも貴方はレイプしたんですよね?」

「俺はしてない」


そう言いながら俺は睨んでいると「そういう事だよ」と背後から声がした。

背後を見ると...そこにクラスメイトの男子達が5人ぐらい居た。

俺を見て豊橋を見てから「やっぱり罪を被せているんだな」と言いながら睨む。

すると豊橋は冷めた目をした。


「...私は罪を豊島さんが被せたとは思っていません」

「知るか!」

「どっちみちにせよ山田によって証明されているしな」

「そうそう。帰れバーカ」


先頭に出ているコイツは確か坂田だっけ。

相手を威嚇してから舌を出す坂田。

俺はその姿を見ながら「...」となってから目の前の豊橋を見る。

豊橋は静かに怒っている様に見える。

だが踵を返した。


「また今度お会いしましょう」

「いやいや。会いたくないってよ。お前なんぞに」

「そうそう」


そして坂田達は豊橋を追い払う。

それから片手でハイタッチをする。

俺は「...どうして」と言う。

すると坂田達は「いや。どうしてって嫌なもんは嫌だろ」と顔を見合わせる。


「...お前の場合、特異だし...誰かが助けないとな」

「そーそー。山田がうっせぇし」

「困った事があったら助けろって言うしな」

「...」


俺は「やれやれ」と呟きながら「でも助かった」と坂田達に言う。

すると坂田達は笑みを浮かべて「気にすんな」と話をした。

それから「...まあ何かあったら言ってくれ」と言葉を発する。


「...正直だが出会った初めの方はお前を助けるのはどうかと思っていたんだけどな」

「俺もな」

「俺も」

「...だが...まあお前の性格。それから山田とか必死にお前を助ける姿を見たりしてな。...ああ。これは違うんじゃないかなって思って」

「いつまでも否定するのもなって」

「まあ悪い奴ならその。その道からぶん殴って連れ戻そうと思った。せっかく山田が期待しているにも関わらずそれを裏切る行為は許せないと思ってな」


坂田達は言いながら肩をすくめる。

そんな坂田達に柊子が「有難う」と笑顔になる。

すると坂田達はその姿を見てから「ところでお前らって付き合ってんの?」とニヤニヤしながら聞いてくる。

は?!


「いや。お前ら...」

「いやまあ俺ら結構気になってんのよ」

「そうそう。仲が良いしな」

「そうだな」


そう言う坂田達に俺達は顔を見合わせて赤面する。

坂田達は「成程」と笑顔になった。

それから苦笑しながら「いやはや。参ったよ。...イチャイチャだな」と言った。

俺は「違うっての」と否定するが坂田達は「そう言う事にしておいてやるよ」と去って行ってしまった。

ったくアイツら。


「...そう見えるのかな」

「見えるから言っているんだろ」

「あ、あはは...えへへ」

「...嬉しそうだな」

「そうだね...うん」


そして坂田達を見送ってからそのまま俺達も帰り始める。

すると...途中で俺は。

「家に来ない?」と柊子に誘われた。

何でだよ。

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