第26話 革命への一歩(下)

鮫島さんという朝に出会った女子に2人きりで暇な時に会いたいと言われたので学校の屋上に向かって歩いて行く。

しかし2人きりってまさか。

いやまさかな...愛の告白とか?

無いか...と言っても告白されてもな。


そう少しだけ不安定に思いながら俺は錆びた屋上のドアを押し開ける。

それから表に出ると8メートルぐらいある鉄格子が見えた。

そして生徒が座れる為の椅子。

その場所の先に...鮫島さんは居た。

鉄格子の先を見ている。


「鮫島さん」

「...その...来てくれたんですね」

「ああ。うん。それで話って?」


ゆっくり屋上のドアを閉める俺。

因みに鮫島さんは違うクラスに転校して来た様だ。

俺の居るクラスでは無い。


何事もなければ良いが。

そう思いながら俺は鮫島さんに笑みを浮かべる。

すると鮫島さんはビクッとして深刻そうに話した。


「...先ず最初に全面的に貴方に謝らないといけません」

「...謝る?何を?」

「...」

「...鮫島さん?」

「私は...豊島数多の...大親友だった人物です」


その言葉に俺は「...は?」となって愕然とする。

それから鮫島さんに「ちょ。待って」と言いながら「...豊島っていうのは...どうなっている...お前誰なんだ?」と動揺しながら言葉を発する。

すると鮫島さんは「その。私は豊島数多の...友人ですが。...後に...貴方の情報を漏らしたとかで裏切られて...豊島数多の友人に猛烈にいじめを受け転校したくて。知っているかもですが私は昔...今とは逆の性格だったんです。リア充だったんです。これでも...だけど今となってはもう面影は無いですけどね」と涙声になりながら話す。


「...確かにそう言われるとお前の事は...少しだけ見た気がする」

「...なんなら証拠の豊島数多とツーショットで撮った写真ならあります。...スマホに。これです」


そして指でツーショット写真らしきものを示す。

そこには確かに豊島数多と。

彼女、鮫島さんが写っていた...ってギャルじゃないか。

それも真っ黒なガングロの。


「...そんなに人って変わるものなのか。ガングロは一体どうしたんだ」

「鬱になってから全てを閉ざす為に改善しました。...ギャルメイクももう全部辞めて...私は陰で真っ当に生きていこうって思った...んですが。その時に貴方に出会ってしまった」

「...じゃあこの学校に来たのは」

「全てを0から仕切り直す為です」

「...」


俺は鮫島さんをまた見る。

鮫島さんは震えながら青ざめる。

それから唇をカタカタと揺らしながら「豊島は...何も悪い事をしていません」と語ってから「全て手駒です。彼女は何もしていない。気に入らなければ仲間同士で切り捨てる。彼女は心底、鬼畜です」と鮫島さんは震えた。


「...わ、私はもう彼女と関わりたくない」

「...そうだったんだな」

「私、イジメで性格が歪んで統合失調症を患ったんです。...鬱病も...その」

「...」

「彼女はお金が欲しいんじゃない。でも地位は欲しいんだと思います。...ただ女帝で居たいだけです。...何でそこまで歪んでいるのか分かりません。何が彼女をそうさせたのかも、わ、分かりません」

「まさか...サイコパスだな...」

「彼女が恐ろしいのは。み、見た感じ...一切、彼女は手を下してない。...彼女は内乱を起こしてそれを楽しんで見るだけ。王様の様に見下ろすだけ。ただそれだけだと思っています」

「...一つ聞いても良いか」

「はい」

「お前...俺だから話したのか」

「...はい」


そして鮫島さんは「...」となってからゆっくり俺を見てくる。

「でも良かったです。今の貴方が幸せそうで」と笑みを浮かべた。

その言葉に俺は彼女を見た。

それから空を見上げる。


「俺は...周りに助けられたんだ」

「...え?こ、この学校でも助けられた?」

「お前が聞いているか分からないけど。...豊島の垂れ流した嘘の影響力はこの学校の噂にも及んでいてな。...だから絶望的だった。だけど柊子もそうだけど...泉も。山田もみんな俺を助けてくれてな。ようやっと居場所を確立したんだ」

「...そうだったんですね」

「ああ。...正直、お前が豊島の友人という事で信頼に値しないかもだけど...だけどお前の様子を見る限り嘘は吐いてないと思う。...この学校は前のクソ学校とは違う。生徒同士で助けてくれる。だから...安心して良いんじゃないか」


正直、前の学校では...何も。

教師も見て見ぬ振り。

そしていじめの猛威が迫っていた。

だからこそ俺は逃げたんだけど...この学校に来て良かったと思う。


「...私は値しなくても良いです。...ゆっくり穏やかに過ごせれば...」

「...」

「...私は1人で大丈夫です」

「なあ。もし良かったらその事を柊子達にも話してくれないか」

「え?...な、何故?」

「俺はお前を信じたい。...豊島の友人だろうが...今は違う。今、お前は全てを引退して罪を洗っている。...柊子達も分かってくれると思う」

「...しかし私は...良いです。...豊島を止めれなかった罪を犯している私は...」

「俺は確かにそう思うけど。...その状況でもし俺の立場なら止めれないぞ」

「...全然違いますね。貴方...聞いていたレイプとか犯罪を犯した人間じゃないですね。...やっぱり嘘だったんだ」


鮫島さんは涙を浮かべる。

それから崩れ落ちて泣き始める。

俺はその姿を見てから地面に涙の雫を落としている鮫島さんから目を離してから向こうの彼方を見る。

怒りが湧いてくる。

絶望を叩き壊したい鐘の音が...俺の心に響いている。


「...その。暁月くん」

「...何?」

「わ、私は貴方を全然救えなかった事を...悔やんでいます。だからこそ...言わせて下さい。...ごめんなさい」

「...俺に対してのいじめの現場でお前は居なかった。...罪悪感をその時にはもう感じていたんじゃないか」

「...それは...」

「止めれなかったんじゃない。お前は何をどうしても止められなかったんだ。...俺はそう思いたい」

「...」


号泣してから丸くなって膝を抱え込む鮫島さん。

俺はその事に...静かに怒りを燃やした。

豊島数多...絶対に...許さない。

ジグソーパズルのピースがようやっと嵌まり込んだ。

そんな感じを受けた。

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