第22話 将来の夢:警察官

クラスメイトがどんどん捕まっていく。

まあどうでも良いのだが。

そう思いながら病院と警察にそれぞれ行ってから解放された。

それから私は表に出ると。


「やあ」

「...あ。山田くん...」

「大丈夫かい。俺も今終わったところでね」

「...うん...」


私が言葉に詰まっていると山田くんが口を開いた。

「君が心配している程俺は最悪じゃない。...むしろ良かったよ。君達を救えて」とニコッとする山田くん。

その言葉に私は「...でも邪魔じゃなかった?」と聞く。

山田くんは首を振った。


「...これで確信が得られたからね」

「...何?...どういう確信?」

「彼はあくまで無罪だという確信。...そして...彼はあくまで罪を着せられたっていう確信が持てた気がするよ」

「...どうして...?」

「...あの事件の後に高橋に多少は聞いたんだよ。...まあなかなか口を開かなかったけどね。...だけど聞いた限りでは...無罪だと思うよ。暁月くんはね」


高橋は不貞腐れた様に話したらしい。

私はその言葉を聞いてから山田くんを見る。

「信じるの?」という感じで、だ。

すると「当たり前だろう。クラスメイトなんだから」と柔和になる。

驚きながら私は山田くんを見る。


「推測は正しかった」

「...山田くん。貴方は...」

「俺は家族が既に闇バイトで捕まっているからね。...まあ取り調べも厳しかったよ」

「...そういう意味じゃなくて...何でそんなに信じてくれるの?」

「何で信じるかって?それは簡単だね。俺はそういう気配の人には優しくなるから。...ただそれだけだ。あと俺は警察官を目指しているんだ」

「...」


私は静かに山田くんを見る。

山田くんは「さて。じゃあ後は会長と...暁月くんを待たないとね」と笑みを浮かべてから私を見る。


「愛しい存在なんだろう?彼は」

「...私が好きな人です」

「...だろうね。...今回もデートしていたんだろう?」

「そうです」

「...俺はまあ何というかデートというよりかは会長と一緒に買い物中、だったよ。...助けられて良かった」

「...」


山田くんは椅子に腰掛ける。

横の椅子に私も腰掛ける。

それから取調室のある方向を静かに見る。

すると山田くんは「...しかし懐かしいな」と呟く。


「...懐かしいっていうのは...」

「弟が捕まった時に事情を聴かれたからね。だから懐かしいんだ」

「...何で弟さんは捕まったんですか?」

「若いけど年齢を偽って競艇に嵌まった。自滅した」

「...」


私は衝撃を受けながら話を聞く。

すると山田くんは「俺は...弟。アイツを救えなかった。だから救えて良かったよ」と笑みを浮かべながら私を見る。

そして山田くんは肩をすくめた。

その姿に私は「その。...何というか」と言う。


「同情はしなくて良いよ。...同情は必要は無い。アイツが全て悪いから」

「...同情のつもりは無いんです。...だけど何でそうなったのかなって。素朴な疑問です」

「競艇以外の話。真実は闇の中だな。だって全く話そうとしないからね。彼は」

「山田くんが警察官を目指したきっかけは?」

「それはまあ...その通りだけど弟がきっかけだね。博打にのめり込んだ真実が知りたいんだ。...それは競艇とか否定する訳じゃ無いんだけど。真実を明らかにしたい」

「...」


山田くんは「その前に正義を証明して...闇バイトに応募する人達を減らしたいんだよね。とにかく...絶望する人を減らしたい」と話す。

それから苦笑いを浮かべながら自嘲する。

私はそんな姿に天井を見上げる。

そして前を見た。


「君達がそういう事態に陥った理由も明らかにしたいのさ。...クラスメイトだからね」

「でも私達の問題は...明らかにならないよ」

「なるよ。...真実はいつも一つって言うだろう。どこぞの名探偵が言っていたけど。...その通りなんだ。真実は一つしかない。だから明らかにしたい。俺も協力するよ」

「でも貴方はあくまで関係無いんだよ?この事件に」

「...彼は本当に俺の様だからな。...だから救いたいってのもあるのさ」

「...」


私は山田くんを見る。

山田くんは私に笑みを浮かべてからそのまま前を向く。

すると横から「お待たせ」と声がした。

顔を上げるとあーちゃんが居た。

刑事さんも居た。


「協力有難うな。君達の協力でどうにかなりそうだよ。この街の...悪事がね」

「アハハ。大袈裟ですね」

「いや。明らかになるんだ。な?...昴」

「え?」


咄嗟に私達は山田くんを見る。

「いやいや。おじさん。黙っていてくれって言ったよ」と山田くんは苦笑い。

おじさん!?

そう思いながら私達は目を丸くする。


「おじさんに憧れたんだ。...それで警察官を目指しているってのもある」

「俺は羽鳥陽介(はとりようすけ)だ。宜しくな。皆の衆」


羽鳥さんという中年ぐらいの刑事は「それで、だ。...山斑くんももう直ぐ来ると思うから」と歯を見せて笑顔になる。

私は仰天しながら山田くんを見る。

山田くんは「すまないな。隠していて。ただ迷惑になるかなって思って。...おじさんにも迷惑がかかるかなって思っていた」とまた苦笑いを浮かべた。


「オイオイ。亡き者にされたら困るんだが。昴」

「いやいや。亡き者にしてないよ。おじさん。だけどまあ彼らには面倒かなって思って言ってなかったんだ」

「ひっでぇな」


そして羽鳥さんは書類を確認する。

それから「んじゃまあ。俺は忙しいから」と笑みをまた浮かべる。

山斑くんが戻って来るのを確認してから「全く。昴。やんちゃすぎるなよ?」と首を振る。

山田くんはその言葉に「はい」と返事をした。

「それでは皆の衆。また会おうぞ」とニコッとしてからネクタイを締め直してそのまま去った。

私達は顔を見合わせてから最後に山田くんを見る。


「...山田くん。もしかして弟さんの時に助けられたの?おじさんに」

「おじさんはヒーローだよ。...俺にとってはね」


ニコッとする山田くん。

私達はそのまま警察官に連れられて山斑くんと一緒に警察署を出る。

それから歩いた。

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