第21話 激昂

美術館の中を巡ってからそのまま休憩がてらファミレスで食事をした。

それだけで楽しい時間だったと思う。

そう思いながら俺は柊子を見る。

柊子も笑みを浮かべて楽しそうだった。

俺はその顔を見てから外に出てから歩く。


「あれぇ?本当によく会うねぇ」


美術館から近所のショッピングセンターに行こうとした時。

背後からそう声がした。

見ると豊島数多が...外出着らしきものを着ておめかしして居た。

一体何なんだコイツは。

どうしてこうも会う。


「豊島...」

「...というかこの前から何をしているの?秀水柊子。もしかして付き合っているの?ソイツと」

「付き合ってないけど...友人として支えている」

「そうなんだ。まあどうでも良いけどね」


態度が相変わらず悪い。

その言葉に俺は「お前というクズは人を燃えさせるのが得意だな」と言う。

ネイルを見ながら豊島は「まあね」と言う。

そんな豊島に「お前自身のその人格は親父のせいか」と聞いた。

すると...豊島の手が止まった。


「...は?」

「俺はな。...コイツとお前の情報を共有した。...お前の親父が自殺した事とかをな。...お前に復讐する前提で俺達は動く事にした」

「はぁ?勝手な真似をすんなよ。レイプ魔の癖に...アンタ何様」

「...」


俺は静かにその顔を見る。

どんどん豊島の顔がキツくなる。

かなり怒っている様に見える。

俺はその事に「お前もう自立しろ。...親から。...情けないぞ」と言う。


「...アンタ...犯罪者の癖に生意気だね」

「お前とは彼氏彼女の状況だった。...手に取る様にお前のことは分かるんでな」

「死にたいの?...ねえ?私のお父さんを出した理由は?」

「お前は俺を犯罪者にして下落した。地に落ちた。...だからどうあっても俺は情けをかけるあれは無いが...俺は今は幸せだ。俺がお前の親父を出したのはお前に最後に伝える為に言ったんだ。ヒントをな。自立しろ」

「...アンタねぇ...」


そして豊島は歯を食いしばる。

それから俺を睨み始めた。

俺は痛くも痒くも無くなってきたその視線に「...お前の事を心配しているんだが。ラストチャンスだぞ。お前が変われる」と言う。

だが豊島は「アンタの事、ネットにバラしてやっても良いんだけど」と怒り狂う。

俺は「やってみろ。...ただしそれでお前に非があった場合。お前が地に落ちるだけだぞ。そもそも今までどうしてやってない」と威嚇する。

すると豊島は「ああもう面白くないね!!!!!」と激昂してからそのまま踵を返してから俺達を見てくる。


「...アンタもう変わりなよ。...豊島」

「せいぜい負け犬同士で笑い合って。勝つのは私だから」

「勝つも負けるも無いけどな。全部お前が導いた事。...もう俺達に近付くな。お前の事は許さないし許せないし。...今日で全てが終わりだ」

「...クソッタレが...」


豊島は息切れしながらそのまま踵を返す。

それから去って行った。

俺はその姿を見てから「...大丈夫か」と柊子に聞く。

すると柊子は「格好良かったよ。あーちゃん」と笑顔になった。


「...私を守ってくれて有難う。あーちゃん」

「守って...無い。くだらない事に終止符を打っただけだ」

「...くだらない事...そうだね。確かに」


そして柊子と一緒にショッピングセンターに行った。

それからの帰り道で事件が起こった。

その事件とは...飯島と高橋だった。

何をしに来たかと思ったら仕返しと言っていた。



「良い加減にしろよお前。腹が立つ」

「...お前らがな。しつこいぞ。それに何の真似だ」


俺と柊子は6人組に囲まれていた。

飯島と高橋。

大学生4人組。

しつこいなコイツら。


「後輩が世話になってまーす」

「コイツ?このヒョロガリ?」


ムキムキな大学生がそう言う。

いかにもパワーがありそうな4人組。

俺はその姿を見ながら盛大に溜息を吐く。

すると飯島と高橋は隠れながら「お前があまりにしつこいから豊島さんの知り合いに頼んだんだ」と言ってくる。

は...?


「豊島の知り合いって何...」


静かに怒り出す柊子。

俺はその姿に「...飯島。高橋。どういう事だ」と聞いてみる。

すると大学生が俺の胸ぐらを掴んだ。

それから締め上げる。


「テメーがマジに犯罪者の癖にウザいって事だよ。皆、な」

「そーそー。良い加減にしろ」


そして俺を地面に叩きつける。

俺は尻餅をついた。

どいつもコイツも汚い真似を。

そう思いながら俺は「どうでも良いけど。...柊子を逃しても良いか」と大学生達に話した。


「は?逃すか。...犯すに決まってんだろ」

「そうそう」


犯すってこの野郎。

すると柊子はそのまま背後から来た別の大学生2人に捕まった。

俺は「柊子!!!!!」と絶叫する。

そうしていると目の前の大学生が胸ぐらを掴んできた。


「お前の相手は俺だっての」

「このクソ野郎が!!!!!」


俺は抵抗する。

だが柊子は服を破られそうになっている。

マジにどうしたら良い。

そう思っていると。


「はいそこまで」


と声がした。

俺は「!?」と思いながら目の前を見る。

大学生の後ろ反対側。

そこに...何故か山田が居た。

そして山斑が居る。


「...警察には通報したから。もう逃げられないよ」

「おとなしくその子とその男を離せ」


山田は飯島と高橋を見下す。

「君ら本当にしつこいね」と言いながら笑顔になる。

飯島と高橋は汗を浮かべて顔を見合わせてからニヤッとした。


「お前もついでに死んどくか?」

「うーん。まあ君達が死ぬんだよ。...社会的に」


そんな話を聞いていると「きゃー!」と柊子を引きずって行っていた。

その事に俺はすぐに駆け寄ろうとしたが。

そんな前に山斑が大学生をぶん殴っていた。


「テメェ!!!!!マジに一体誰だよ!!!!!」

「高校生徒会長。...以上。...貴様ら年上だろう。社会的に死ぬぞ」

「はぁ!?ざけんな!殺すぞ!!!!!」


そして山斑にスタンガンを持って襲いかかる大学生。

今度はスタンガンかよ。

そう思っていると山斑はスタンガンを持っている手を捩り。

そのまま警察の様に地面に叩き伏せる。


「それで?まだ戦うか?」


と言う山斑。

すると大学生は「この!」と言いながら残る4人で襲いかかる。

警棒を持っている奴とか居たがそれを次々にやって来た山田が空手技で倒した。

そして気絶している大学生達の背後に最後に残された飯島と高橋を見る山田。

あまりの事に怖気付いている。


「あくまで逃げないでほしいね。君達は重要参考人だ」

「このクソッタレどもが...!」


するとサイレンが聞こえ。

飯島と高橋は唖然とする。

直ぐに警察がドタドタと来る音がした。


その音を聞きながら山田が「大丈夫かい」と心配げに言ってくる。

山斑も手を叩きながら俺達に訝しげな目を向ける。

俺は上着を柊子に被せながら「強いんだな」と言う。


「まあね。俺は黒帯。そして...会長も黒帯だから」

「何で分かったんだ。この場所が」

「たまたま秀水さんの悲鳴が聞こえたからね」

「...」


俺は山田を見据える。

そして「...」となってから考える。

たまたま、ね。

偶然にしては怪しいが。

今は感謝するしかないか...、と思った。

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