第20話 豊島数多が狂った日
俺自身は...そうだな。
最低と思うかもしれないがマジに勇気が持てないのだ。
勇気が持てないとはどういう事かというと。
俺自身が丁度、豊島のクソ野郎に裏切られてから全く恋に集中力が無くなった。
恋とはなんなのかを考える日々なのだ。
だから最低だろうけど応えられない。
アイツの想いに応えれない。
だから苦悩している部分もまああるんだが。
だけどアイツも分かった様に動いてくれているから。
なのでまあ...更に苦悩はしている。
困ったものだ。
俺はどうしたら良いのか全く分からない。
豊島に嵌められてから絶望していた中。
全員が優しく俺に接してくれる。
それがまた俺の苦悩になっているのかもしれないがその上には更に山田達の存在がある。
山田も玉城もそうだが。
みんな優しいから。
俺はマジに苦悩している。
応えたい。
だけど応えられない。
そのもどかしい感じが俺を支配している。
本気で困っている。
思いながら俺は目の前の柊子を見る。
俺は馬鹿野郎なんだよ柊子。
きっと俺は。
そんな俺。
その中で俺達は移動していた。
それは何処かというと美術館に向かっている。
柊子はあくまでお嬢様。
だからこそ美術館に向かっている部分もある。
全然嫌じゃ無い。
寧ろ絵を見て癒しを得たいとも思っていたし。
「なあ。柊子」
「何?あーちゃん」
「俺と一緒で楽しいか?」
「私は楽しいよ。十分。私は...貴方と一緒ならどこでも楽しいから」
「...有難うな。柊子」
「私、あーちゃんと一緒に動くのが好きだから」
「お前本当に容赦が無くなったよな。お前が俺を好きと言ってから...」
俺は苦笑い。
それから柊子を見る。
すると柊子は俺にニコニコしながら駆け出す。
それから背中に手を回して俺に向いてきた。
その姿に俺は少しだけ動揺する。
「私は告白したからには貴方にとって大切な存在になりたい。だから頑張ります」
「...」
かつてからずっと。
過去からずっと俺を好いている。
その事に俺は...。
そう思いながら俺は柊子を見た。
柊子は俺の元に戻る。
もう良いのかもしれない。
俺は柊子を信じても良いのかもしれない。
そう考えながら俺は足を止める。
すると柊子は俺を見た。
「柊子」
「うん...どうしたの?」
「俺さ。お前を信じて良いか分からなかった」
「うん」
「その中で。今までで俺はこの先、お前を信じても良いかなって思ったんだ」
「あーちゃん...?」
「お前はよく俺を助けてくれるよな。有難うな。だからこそ話したい。お前だから。何故俺が...豊島数多と付き合ったのか」
俺がそう話すとビクッとした様に柊子は反応してから俺を見る。
その姿に俺は「アイツはかなりのあくどいゴミ屑だったけど。その前はただの女の子だったよ。お前も知っての通りな。生真面目な生徒だった」と話す。
すると柊子はその言葉に「...」となりながらも静かに聞いてくれた。
そんな柊子に俺は「それで...アイツの気が狂ったのは知っているかもしれないが原因は親父が自殺で死んだから。大好きだった親父がな。それからおかしくなった。まあアイツも被害者かもしれないけど。...あくまでやりたい放題だったから同情は出来ないんだが」と側にあるベンチに腰掛ける。
それから柊子をまた見た。
「そんな事。私、幼馴染ですが一言も聞いていませんよ。豊島から」
「...そうだな。俺もたまたま知っただけだから。たまたまだったけど。お前が信頼できるか分からなかったから話さなかった」
「だけど今ならって事だったんですね。今の貴方ならって」
「...もう少し早めにこの事は話すべきだった。だが俺はお前をマジに信用してなかった。アイツには一切同情出来ないが粛正するならそれなりに一気に粛正しないと話にならないと思う」
「優しいなりに苦悩していたんだね。あーちゃんは」
「...これは優しいとは絶対に言わないだろ。お前...」
「私からしたら優しさだと思う。それもかなりの優しさだと思うよ。絶対に」
「...」
俺は静かに柊子を見る。
それから俯きながら「優しさってなんだろうな。柊子」と聞く。
すると柊子は「優しさってとても大きな事だと思う。優しいっていうのはつまり...心から愛そうとした。大きな事。自信を持って良いんだよ。あーちゃん」と言った。
「だけど奴は裏切った。私は絶対に許さない。彼女は全てを裏切った。正義の為にもちゃんと粛正すべきだと思う」
「...そうだな。確かにそう思う。粛正しないと話にならないだろうな」
「...あーちゃんはどう思うの?」
その言葉に言葉が詰まる俺。
それから俺は顔を上げてから柊子を見た。
柊子は俺をジッと見てくる。
俺はその真剣な顔に「あの女を助けたい気持ちはさらさら無い。だが俺はこの胸に燻る忌々しい観念は避けたい気はする」と正直な胸の内を語った。
「だが彼女は間違いなく粛正すべきだと思う。救いようが無いから。解らせてやるのも優しさだと思う」
「じゃあ満場一致だね。私達は解らせてやるって。豊島に復讐するって」
「そうだな...うん」
それから俺達は頷き合った。
そのまま美術館に向かう。
そうしてから展覧会を観たりした。
何かその。
胸につかえた何かがスッキリした気分だった。
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