第17話 雷雨

クラスに戻った。

それから私達は授業を受けた。

とんだ事件だが今は忘れる事にしたい。

そう思いながら私達は授業を受けてから家に帰る為に歩いていた。

そして私は...出会ってしまった。


「あれぇ?犯罪者じゃーん」

「...お前。何をしに来たんだ。豊島」


ファーストフード店の前を歩いていると豊島数多が居た。

リア充4人と一緒に歩いている豊島数多。

私はザワッと...血が騒いだ。

だが豊島は私には目もくれない。

というか初めから相手にすらしてない感じだが。


「コイツ?もしかして数多ちゃんをレイプしようとしたの」

「...」

「そうそう。この男だよ。私をレイプしようとしたの」

「...俺は...」


そう言いながらあーちゃんは横を見る。

この場所で言い返しても反応が無いと思う。

そう思いながら私は静かに豊島数多を見ていると...あーちゃんは「...」となってから歯を食いしばってから踵を返した。

それから「クソッ」と言ってから駆け出した。

リア充達は「負け犬」と言いながらそれを笑う。


私はそれを見てから悔しくなったが。

あーちゃんを追わないと。

そう思いながら駆け出して行くあーちゃんを追う。

それからあーちゃんは住宅街の真ん中の道で崩れ落ちた。


「...クソ!」

「あーちゃん...」

「あの女...あの女!見る度に腹が立つ!!!!!」

「...あーちゃん...」

「何でアイツだけ幸せそうなんだ?俺は...不幸な目に遭っているってのに」

「...」


曇天が広がり始めた。

そして雨が降る始める。

私はその光景を見ながらあーちゃんの手を引いた。

「このままじゃ風邪ひいちゃう」と言いながら、だ。

するとあーちゃんは私の手を握った。


「...道の真ん中じゃ迷惑もかかるしね」

「そうだな...」


そしてそう言いながら私はあーちゃんを引き連れてから公園に来る。

丁度、雨除けがあった。

それからその場所のベンチに腰掛ける私達。

数秒間無言だったが。

やがてあーちゃんが切り出してくれた。


「...すまない。...逃げたのはアイツが恨みで逃げ出したんじゃない」

「...」

「多分...恐怖があった。...また壊されるんじゃ無いかってな」

「...それは私達の関係を?」

「...そうだな。だから逃げたんだ。あの女はサイコパスだ」

「そうだね...」

「...せっかく築いたお前らとの関係を壊したくない」


そう言いながらあーちゃんは肩を震えさせる。

雨がかなり降り出してきた。

私はその事に灰色の空を見上げてからあーちゃんを抱きしめた。

それから頭を撫でる。

するとあーちゃんは今までになくされるがままになっていた。


「...俺は根性無しだよな」

「恐怖は人間の。...生き物の本能だよ。...何が悪いの?逆に」

「...いや。こんな俺。つまり男なんて見たく無いよな」

「私はあーちゃん。...貴方は根性無しじゃないって思っているから」

「...だが...」


あーちゃんは唇を噛み締める。

そんなあーちゃんを見ながら私は「...」となってから「ねえ。あーちゃん」と言う。

するとあーちゃんは雨を見る中で顔をこっちに向けた。

それから「なんだ」と今にも吐きそうな顔をする。


「...私ね。...あーちゃん。...あーちゃんに昔会ったんだ」

「...そうか...は?会った?会ったってのは何だ」

「小学1年生の頃。私は初恋をしました」

「初恋...初恋?誰に」

「...それは内緒です。貴方に贈る問題です」

「...」


しっかり考えるあーちゃん。

それから数秒してかぁっと赤くなってから私を見る。

「嘘だろお前」と言いながら、だ。

私はその表情に「この場所だったよ。...あーちゃんと別れたの」と少し寂しげな顔をする。

あーちゃんは「...」となって考え込んでいる。


「あーちゃん。私ね。10年間...恋をしてない理由を教えようか」

「...!?」

「...私は昔から心に決めた人が居るんです。その人に裏切りをしてはいけない。だから10年間。ずーっとずーーーーーっと男の子と付き合わず淑女で居ました」

「...じゃ、じゃあまさか。お前は...初恋をして...10年間ずっとそのままで今に...も、もし俺に嫌われたらどうする気だったんだ。寧ろ俺には...アイツが居るって...事を」

「私ね。あーちゃん。...10年間で知っているよ。貴方が...あの女に嵌められた事。全部調べた。何故かって?豊島数多は仮にも昔、私の幼馴染で友人だったから」

「...は...?」


凍りつくあーちゃん。

私はあーちゃんが付き合い始めて地獄を見た2年間から豊島を恨んでいる。

2年間ずっと恨んでいる。

あの女を地獄に落とす算段をずっと考えていた。


「あーちゃん。私は貴方が好きです」

「...お前...俺はもう彼女は作らないから。それは応えられないのに」

「応えられると思ってないから」

「...じゃあ...何で」

「私の夢は豊島数多を倒してあーちゃんと結婚する事。これが夢なの」

「...」

「私はこの730日で。...毎日、貴方を地獄に落とした彼女を殺したいって思った日はないんだよ」


暗黒の笑みでニコッとする私。

稲妻が鳴り始めた。

あーちゃんは「...そんな事になっていたんだな」と悲しげな顔で私を見る。

私は肩をすくめて笑みを浮かべる。

それから「私ね。...山田昴くんの考えは半分認めたいって思う」と言い出す。


「...一緒に地獄に落とそう。豊島数多を。私の幼馴染で友人だけど...もう関係無い。死んでもらいたいしね」

「...柊子...」

「復讐しよう。あーちゃん」

「...」


稲妻が落ちる。

そして雨が土砂降り。

今の感情にピッタリだな。

アイツには目にものを見せてやる。

そう思いながら私は豊島数多を恨んだ。

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