第16話 道標


何かがおかしいと思ったが職員室に用事があったので泉ちゃんに任せた。

そうしたらとんでもない事件が起こっていた。

それは...かつてのクラスメイト達がナイフを持って山斑くんに襲いかかったという。


私は取り押さえられてそのまま生徒指導室に連れて行かれた岸本の情報を聞いてからそのまま保健室に向かう。

一刻も早く...あーちゃんに会いたい。

そう思いながら。

そして保健室のドアを開け放つ。


「あーちゃん!」

「あ、ああ。...お前か」


あーちゃんは顔に大きな絆創膏を貼ってから治療を受けた傷を見せる。

私はそんな姿に「...」となってから涙を浮かべる。

何も守れなかった。

こんな事になるとは思ってなかったから。

思いながら私は唇を噛む。


「...柊子。...お前のせいじゃないよ」

「だけど...何も守れなかったよ。...危ない目に、酷い目に...遭わせちゃった」

「...あくまで相手は俺が邪魔だったんだからな。...まあこんな目にも遭うだろう」


念の為の救急車が来たが。

あーちゃんは「でかい騒ぎにしたくない」と言って断っていた。

それで保健室で治療を受けて今に至っている。

泉ちゃんは保健室の先生に聞いていた。


「おばさん。結局大丈夫なんだよね?」

「言語機能的には大丈夫だとは思うわ。...平手打ちだったみたいだけど脳震盪などは起こしてないと思うわ」

「...」


私はあーちゃんをつい抱きしめてしまった。

それから慌てるあーちゃんの後頭部を撫でて「ごめんね」と言った。

あーちゃんは「おい...人前でする事じゃない」と言う。

だけど私はあーちゃんを抱きしめた。


「...あーちゃん。...この学校にはまだ飯島も居るし...高橋もそのままだし...」

「...そうだな。第三者委員会とか学校が調べてはいるけど」

「私、凄い不安...」

「大丈夫だろ。先生達も...今は守ってくれるし」


そんな言葉を発したあーちゃん。

私はその姿を見ながら「...」となって複雑な顔をした。

それから私はあーちゃんを見ていた。

保健室のドアが開いた。



保健室のドアが開いた。

そして今度は山田が顔を見せた。

山田は「その。大丈夫かい」と言ってから俺を見た。

そんな山田に「それこそ山斑は大丈夫なのか」と聞いてみる。


「会長なら強いから無事だけど。...会長は君の事を心配していた」

「...俺は別に大丈夫だ。...見た通り死んでないし」

「...すまないな」

「何がだ」

「俺達に関わった事でも起こった事件でもある。...そう思っているから」

「...」


山田は少しだけ深刻そうな顔をする。

俺はその言葉に悩む。

それから顔を上げてから「山田」と言う。

すると山田は「何かな」と笑みを浮かべた。


「...俺はお前のせいとは思ってない。...お前はあくまで俺を助けようとしてくれた」

「!」

「前の何も変わらない俺ならお前を恨んでいた。...だけどお前は俺を必死に助ける。その姿だけは俺の中では認めざるを得ない。今までの姿からしてな」

「...」


その言葉に山田は「...そうか」と少しだけ嬉しそうな顔をする。

俺は「その上で」と話す。

それから「まだ学校にはうじゃうじゃと俺に対しての反発心を持つ敵が居ると思う。泉と...柊子の安全を一番に考えてほしい」と言った。

柊子も泉も驚愕する。


「え...」

「...俺は泉も柊子も大切な存在だって最近、思い始めた。だからこそ失いたくないんだ」

「...あーちゃん...」

「俺は...間違っているのかな」

「正しいと思う。...だがもうこんな事件は起こしたくないし。...俺は君の期待に応えられる様に全力を尽くすだけだな」


そんな山田の言葉に対して俺は「ああ」と返事をした。

それから山田を見ていると泉が「...変わったね。晴矢」と言ってくれた。

俺は「何も変わっちゃいない。...だけど俺だけがガキのまま停止する訳にはいかないだろ」と言う。


「...ガキじゃないよ。...でも有難う。...まあでも私は良いけど柊子ちゃんを守らないと」

「...え?何でお前より柊子なんだ」

「鈍感だねぇ」

「...は?」


意味が分からない。

先生も山田も泉も苦笑する。

柊子だけが真っ赤になっていた。

これは意味不明だ。

どうしてこうなった。


「なあ。どうなっているんだ」

「え?こんな中でわ、私に聞く?...どうなっているって...まあ内緒だけど」

「いや。内緒ってなんだ...」

「内緒は内緒だもん」

「...???」


俺はよく分からないまま「ならまあ良いが」とだけ返事をする。

それから俺達は見合っていると。

先生が「どうする?戻る?」と俺に聞いてきた。


「...そうっすね。今は戻ってみます」

「そうなの。...じゃあ無理はしないで...戻りなさいね」

「...はい。有難うございます」


そして次の時間に間に合わせる為に立ち上がる。

それから俺は先生に挨拶をしてから頭を下げつつ保健室を後にした。

すると泉が「大丈夫?」と聞いてきた。

俺はその言葉に「ああ」と返事をしながら苦笑する。


「こんなんで勉強の時間を飛ばしたくないしな」

「...そっか」

「それに今の所は居心地は良いしな。一応。...あの学級がな」

「...そっか。うん。分かった」


泉は納得した様にようやっとニコッとする。

それから俺はその姿を見てから笑みを浮かべそのまま教室に戻った。

で。

教室の奴らは皆...俺達を心配していた。

心配するに値する俺なのかどうか分からなかったが。

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