第11話 俺はそうは思わない

5月23日。

結論から言って事件発生後、1週間が経過した。

ゴタゴタがあり新しいクラスにはなった。

何だか不思議な感じがする。


だがやって来た新しいクラスはクラスメイトの間で険悪なモード?のままだった。

俺というインシデントが居るせいだろうが...。

そう思いながら俺は溜息を吐きながら外を見ていると。

こんな声がした。


「やあ」


と、だ。

俺はかけられた声に顔を上げる。

そこに高身長でイケメンと称される生徒会副会長の山田昴(やまだすばる)が居た。

茶髪をしている。

少し着崩している服。


生徒の模範とはならない様な奴だが。

周りのクラスメイトがビクッとする中。

山田は俺に声をかけてきていた。

すると当然、一緒のクラスになった秀水と泉が反応する。


「...何だ。山田」

「いや。...是非君と仲良くしたくてね」

「ご冗談を。俺のクソみたいな素性知っているだろ。...正反対のお前とは仲良くならないよ」

「君の素性は知っている。...だからこそ声をかけた」


そう言う山田。

俺は「?」となりながら山田に視線を合わせる。

そして山田は苦笑して肩をすくめる。

「このクラスの奴らは良い奴ばかりだ。...だからこそ俺は...君に肩の力を抜いてほしくてね」と笑顔になる。


「...いや。結局同じだ。...何処に行っても扱いはな」

「そうか。でも玉城さんから聞いたよ」

「...は?」

「君、クラスメイトに襲われそうになった玉城さんを守ったってね」

「...それがどうした」

「...君は悪い奴では無いと思うんだが。少なくとも俺の目からしたらね」


何を根拠に言っている。

そう思いながら俺は警戒している秀水と泉を見ながら山田を見る。

山田は「...俺は悪い奴と悪い奴じゃ無い野郎の目ぐらい見抜ける。...その上で君に言うけど。この状況下。...君、本当にレイプしたのかい?」と言う。

俺は「!!?!!」となる。


「怪しいんだよね。これまでの君の行動でしかもその性格でレイプしたって言うのが。...逆説だけど...あくまで何か着せられたとかそういうのは無いのかい」

「どうしてそう思う」

「あくまで俺のカンだけど。そして出来の悪い弟を持っている俺からしてみて。...その経験を活かすとね。どうも君がそんな事をしたってのが疑いが持てるんだ。君、校舎前とかあちこちを時折、清掃しているだろ」


見ていたのかコイツ。

そう思いながら俺は山田を見る。

山田は「そんな事をする様な奴がレイプしたとは思えない」と笑みを浮かべる。

俺はそんな山田の姿に「...」となって山田を睨む。


「...どっちにせよ俺はレイプ魔だ。それは...抜けないだろう」

「いや。...この学校では無罪放免の可能性はある。...俺が宣言する様に言えば良いんだ。生徒集会で」

「...何...」

「君は悪行をしているとは到底思えないね」


そう言うとクラスメイト達が「ああ。確かにな」とか言い始めた。

山田の意見に賛同する様に、だ。

すると女子が「知ってる。私、秀水さんにとても優しいの」と笑顔になる。

別の女子は「上島さんにも優しいよね」とニコッとした。


「...という感じのクラスなんだ。この1週間、君を観察させてもらったが。...あくまでこのクラスは君の事を認めている」

「...あのな...それであっても」

「君、あくまで自分を否定してないかい。自分で」

「...」


山田の言葉がイライラする。

自分で自分にムカついている。

すると秀水が「どうして...」となる。

その言葉に山田が「ああ。これは罠とかじゃないよ。仮説を立てた結果さ」と笑みを浮かべて秀水を見る。


「仮説ってのは」

「...俺は...信じたいんだ。クラスメイトを。だから観察していた。ずっとね。声をかけるタイミングが無かったけど。これは良い機会だ」

「...」


俺は山田を見る。

山田はまた笑みを浮かべて俺を見る。

それから「...今度、実はクラスでカラオケ大会するんだ。合流したクラスメイトと交流会みたいな。君も来ないかい」と言う。

クラスメイトは俺に視線を向けてくる。


「...俺は...いいよ」

「...まあ無理には言わない。...来てくれるなら有難いから。...そこら辺は自分で決めてくれ」

「...ああ。...なあ山田」

「...うん?」

「俺がもし本当に女性をレイプしたレイプ魔だったらどうする気だ」

「君はそういう事はしないよ。さっきも言ったけど見る目はある。俺は...これよりもっと酷い案件を知っているから」

「...どういう事だ」

「さっき出来損ないの弟が居るって言ったよな?山田智昭(やまだともあき)...彼は...金が無いと闇バイトに応募して強盗をしてそのまま捕まったんだよ。...俺の一家は...絶望的だった」


俺達は唖然としながら「それは言っても良いのか」と困惑する。

すると山田は「このクラスだから信じて共有しているんだよ。...普通のクラスじゃ無理だと思うから。君達が前に居たクラスとかはね。俺達は俺達自身を家族って思っているから。だからこういう案件も徐々に共有している。このクラス以外は無理だろうけど」と笑みを浮かべながら手を差し伸ばす。


「...君の姿を見ているからこそ言える事だ」

「...」


秀水も泉も山田に注目する。

それからクラスメイトを見渡す秀水と泉。

俺はその姿を見つつ...山田をまた見た。

悩む展開だった。

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