第3話

「ダーリン、そろそろ寝て、明日一緒にお出かけしよ☆」

「はい、大丈夫です」

「決まりー☆」

押し入れから布団を出そうと向かう。

「ダーリン、二人で一緒に寝るんでしょ?」

「えっ、それは流石に」

「いいじゃんいいじゃん☆もっと暖かくなるよ」

「そういう問題ではなくてですね…」

すっぽり布団に入って、手招きしてくる。

「一緒に寝ようよ、私がしっかり癒してあげる♡」

「それは流石に遠慮いたします」

彼女は膝を打ったような表情を浮かべた。

「ダーリン、布団の上に寝転がって」

「はい?わかりました」

それなら差し支えないので、布団の上に背を向けて寝転がる。

すると、すーちゃんは僕の背中をさすりだした。

「どう?気持ちいい?」

確かに、手のひらの感触と温もりが心地よくて、かなりリラックスしている。

「はい、気持ちいいです」

「良かった☆もっとしてあげる」

今度は背中をほぐしだした。

今まで体にたまっていた毒素が全て抜け出していくような感じだ。

次第に眠気がどんどん出てくる。

「ダーリン。もっとリラックス☆」

(あぁ、これはもう寝てしまう…)

僕の意識は落ちた。

目を覚ますと、体がいつもより暖かった。

隣に目をやると、すーちゃんが幸せそうな表情で寝息を立てていた。

体はすっかり楽になった。

すーちゃんがほぐしてくれたおかげだ。

「ありがとう」

「…んっ」

ゆっくりとその瞼を開けた。

「ダーリン、おはよう」

「おはようございます」

すーちゃんは思い切り、背伸びをして、布団から出た。

「ダーリン、今からとびきり美味しい朝食とお昼のお弁当を用意してあげる☆

最高のデートにしよ♡」

(この方、デートする事前提で話している…)

しかし、そうはいかない。

「申し訳ないんですが、今日会社に行くんです」

「えっ!?今日休日だよ!?」

「はい、そうなんですが、今日仕事をしておくと、後々楽になるので」

「だーめ!休日はちゃんと休まないと!」

「いいえ、僕は差し支えないので、申し訳ないのですが、出社します」

忽然、頬を暖かい両手に包まれた。

「ダーリン。仕事をきちんとやるのも確かに大切だけど、体を休ませる事も大事。

無理は駄目」

説得力のある言辞だった。

「はい、わかりました」

「わかってくれてありがとう。今から朝ごはん作るね」

勝手場に向かった。

上機嫌に鼻歌を歌う。

さくさくと朝食が仕上がり、テーブルの上に並べられた。

今日の朝食は味噌汁とご飯に昨日の唐揚げだ。

「いただきます」

シズル感を強く感じながら、朝食をありがたく口にする。

「ダーリン」

「どうしました?」

「顔が嬉しそうだよ☆私も嬉しい」

あまりの美味しさに表情に出ていたのか。

「そんなに美味しいの?」

「はい。とても美味しいです」

「それは良かったー☆夕飯もとびっきり美味しいのを作ってあげるね」

判然に言うと、とても嬉しい事だ。

こんな佳肴を頂けるなんて、果報に相違ない。

朝食を終えると、僕達は出かける支度を始めた。


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