第4話 本を読む

「おはようございまーす! 村長いるー?」

「いるぞー。どうしたんじゃこんな朝早くから?」


 朝早くから村長の家を訪ねている。目的はもちろん魔法についての本だ。そのために今日だけ家事の手伝いを免除してもらうことができた。


「母さんが、魔法についての本が村長の家にあるって言ってたから来たの!」

「ふむ、確かにあるが随分古い本じゃよ?」

「それでもいいの!」


 そんなやりとりをしつつも本を見せてもらうことができた。村長は古い本だと言っていたが、見た目は全然きれいだ。


「古い本とか言ってたけど、普通じゃん。もしかしてボケて違う本持ってきちゃった?」

「違うわい。それに古い本と言ってもスキルで『品質保存』等の、保存を良くする性質が付与されてるから見た目は良いのじゃよ」

「『品質保存』?」


 スキルについて調べたことがあるが、聞いたことなくて疑問に思っていると村長が説明してくれた。といっても村長も詳しくなくて、召喚獣の進化が4段階目以降でできるようになるらしいとしかわからなかった。まあ村にいる召喚獣は基本3段階目までの進化で、1人くらいは4段階目の召喚獣がいる程度だ。しかも4段階目でも覚えるかはわからないらしい。


「そんなのがあるんだね」

「うむ。そこを目指すなら精進、おっと頑張るべきじゃろうな」


 こちらが5歳児で精進がわからないと思ったのか、わかりやすいように言い直したな。まあ普通の5歳児ならわからないだろうから、それが正しい。というか普通の5歳児だと思われてはいないだろうが、それでも私を普通に扱おうとしてくれるのは助かるな。どうしたってボロは出るだろうし。


「それじゃあ読むね。村長ありがとう!」

「わかっているとは思うが、傷つけないように読むのじゃよ」

「はーい!」


 村長が家を出ていくのを見送る。そんなわけで本を読み始めたが、難解な表現がされていたりして読みにくかった。まあ簡潔にまとめるとこうだ。

 ・魔法は共通認識、または世界法則が大事。

 ・条件付けができるが、その分性質を変える時間がかかる。


 まず『魔法は共通認識、または世界法則が大事』だが、例えば赤だと火を連想するのは大体の人がそうだろう。これが共通認識だ。そして世界法則は、前世の化学っぽい。といってもあくまでぽいであって、前世の化学とは違う。前世だと大火事に水をかけてもほとんど意味はなかったが、この世界だと水がかかった部分はすぐに鎮火する。

 他にも水を土は吸収しちゃうし、どんな土でも風に飛ばされる。そして風は火を強くする。わかりやすく火→風→土→水→火と矢印の方向に強い。


「ふむふむ。つまり属性に相性があるのね」


 そして条件付けだが、これはなかなかに難しい。例えば召喚獣に害を及ぼさない火魔法なんかと水の中でも燃える火魔法ができる。だが前者は結構簡単に条件付けできるが、後者をやろうとすると時間がかかるし威力も低くなる。

 他に例として上がっていたのは、ロックオンだ。これは対象を補足しないといけないし威力も少し低くなるが、それでも当たりやすくなるとして使いやすいと書かれている。あとは木だけを燃やすとか、同じ土を集めるとかの簡単なのが載っていた。


「でも結局私向けのは載ってないなぁ」


 近接戦で使える魔法があればよかったけど、載っていない。まあ仕方ないな。ほとんどの人が遠距離魔法だろうし、そこにわざわざ近接魔法とか載せたって使うことはないだろう。


「お、読み終わったかいな?」

「うわっ!? びっくりしたよ村長!」

「ふぉっふぉっふぉ、すまんのう」


 そうして考え事をしていると、後ろから村長に声をかけられた。村長が帰ってきたことに気づかず驚いてしまって、恥ずかしい。それにしてもまだそんなに時間経ってないと思うけど何かあったのかな?


「それでどうしたのさ村長、まだそんな時間経ってないよね?」

「いや……レイちゃんもう夕方じゃぞ?」

「えっ!」


 こちらを見る村長の眼差しは呆れているようだ。まさかそんなに時間が経っていたとは。まあそれだけ集中してたってことだけど、村長が帰ってきたことにすら気づかなかったのはダメだよなぁ。とりあえず村長に本を返しながら言う。


「まあとりあえず読み終わったよ。おかげでだいぶ魔法についてわかった」

「それはなによりじゃ。じゃがそれにしてはあんまりスッキリしてないようじゃが?」

「まあねえ、ほら私の召喚獣でこの子でしょ? だからそれ用の魔法について知りたかったんだけどね」


 そう言ってソードをポンポンと叩く。まあ望みは薄かったけど、それでもあんまり成果を得られなかったのは残念だ。それを見た村長はなにやら優しい目つきをしている。なんだろう?


「レイちゃんはその召喚獣に不満はなさそうじゃな」

「ないよ。絶対ない」


 不満なんかあるはずがない。ちゃんと来てくれただけ嬉しいし、何よりこの子を活かせないのは私の責任だ。そりゃあドラゴンとかに憧れはあるけど、それでも私の召喚獣はこの子だ。それを伝えるとなぜか頭を撫でられた。


「なに?」

「いやなに。まあ残念なことに人によっては、召喚獣を大事にしない人間もいるからのう。それだとどんな召喚獣でもロクな進化をしない。だからレイちゃんがしっかり召喚獣を大事にしていて嬉しいのじゃよ」

「ふーん。そんな人もいるんだね」


 まあ私にはあんまり関係ないだろうし、別にいっか。


「それじゃあ村長帰るねー! ありがとう!」

「うむ、気を付けて帰るのじゃよ」


 明日からも家事を頑張って、強くならないと!

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召喚獣は剣でした!? 天星 水星 @suiren012

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