第3話 魔法を知る

 次の日、朝起きて家事を手伝ってから母さんに魔法について習う。ちなみに父さんは狩り人なので、近くの森に朝から行っている。いつもご苦労様です。


「いいレイ、魔法を使うにはまず魔力操作が大事よ!」

「はい、母さん!」


 そんなわけで魔力操作の練習だ。まず体の内にある魔力を指先に集められるように練習する。昨日は契約紋に魔力を通せたが、これは契約紋自体に魔力を通しやすい機能があるからだ。おかげで魔力を通せたが、そのせいで手の甲の契約紋に魔力が流れやすく指先に集めにくい。


「そういえばどうして指先に集めるの? 体の中でグルグル回してもいい気がするけど」


 母さんにそう聞けば、普通の答えが返ってきた。


「それは魔法を使うのなら、手を向けて使うのが使いやすいからね。例えば体の中でグルグル回しても、それで魔法を使えるようにならないでしょ?」


 まあ確かにその通りだ。基本的に薪に火をつけるのも魔法だし、それなら指先に魔力を集めるだけでいいのか。しかしそれだけで終わらなかった。


「それに指先に集めるってことは、契約紋の影響を受けて集めにくい。つまりそれだけ難しいってこと。そんな中での練習の方が上達しやすいっていう理由もあるわね」


 思ったよりスパルタな理由だった。まあでも確かにそっちの方が上達しそうだ。これが魔力を操れないのなら違ったかもしれないけど、拙いながらも操れるのならこっちの方が良いのか? とりあえず理由を聞いてすっきりしたので、指先に集めるように練習した。


「うぐぐぐっ!?」


 それにしても魔力が重い。いや実際に魔力に重さがあるわけではないが、魔力を動かしづらいのが重い物を動かそうとしてる感じなのでそう表現した。それに不安定な感じもあって、一直線に進めようとしてもゆらゆら揺らめいている。おかげですごく神経を使う。


「まあ最初はそんなものよねえ……」

「あっ!」


 母さんの言葉に意識を向けた途端、契約紋のほうに魔力が流れて失敗した。くそっ難しい。契約紋に流れた魔力は、腰に差しているソードに渡していく。これはあらかじめ魔力を召喚獣に渡せるように設定しておいたのだ。こうすることで私の魔力をソードが食べて、少し経験値を獲得できる。といってもこれだけでレベルが2になるのは1か月もかかるらしい。だからあまり期待しないようにって言われている。

 そんなわけで魔力を指先に集めては失敗して、ソードが食べることを繰り返した。そのうち魔力が少なくなると、外に出てソードを振って少しでも慣れるようにする。これを繰り返して少しでも強くなるように頑張る。たまに心折れそうになる時があるけど、その時は素直に休んでソードとスキンシップを取ったりする。まあ傍目からみると、剣と会話してるやばい奴だけど。


 そうして1か月が経ち、ソードがレベル2になった頃には魔力を安定して指先に集められることができた。


「よしこれでどうよ!」

「あら、意外と早かったわね」


 最初のころは私の様子を見ていた母さんだったが、大丈夫だと判断したのかあんまりみないで内職を始めた。これも大事な収入源なのでぜひとも頑張ってもらいたい。それじゃあいよいよ魔法について習うのだ!


「わかってるわよ、ちゃんと魔法について教えるわ」


 よほどキラキラした目で見ていたのか、そういわれてしまった。


「それじゃあ魔力を指先に集めて」

「ほいっ」


 言われた通りに魔力を指先に集める。それでこれからどうするのだろうか?


「そこから魔力の性質を変えるの」

「性質を……変える?」


 言われたことを考えるけど意味がわからない。


「なんといえばいいかしら。例えば火魔法を使うとして、火ってどんなイメージがある?」

「それは、熱いとか赤いとか?」

「その通りよ。そして魔力の性質を熱いとか赤くなるように念じるの」

「そんなことでできるようになるの?」


 思わず言ってしまったが仕方ない。なんせこれはできると思えばできるという根性論に似た答えなのだ。


「ええ、詳しいことは頭のいい学者さんが本にしてた気がするわ。たしか村長のところにあったかしら?」


 あとで一応村長のところに行って確認してみよう。それはそうとして、実践してみるがほんのちょっぴり赤くなった……気がする。


「まあこれは慣れね。ある程度は慣れれば、それなりの速度で変えられるようになるわ」


 ほらこの通りのばかりに、指先に魔力を集めてすぐに1センチくらいの火に変わるの見せられる。慣れるとこんなに早いのか。


「といってもこういう小さい魔法ならこんなに早くできるけど、大きな魔法程性質を変えるのに時間がかかるの」


 それじゃあ私の場合、大きな魔法は使えないかもしれない。接近戦でそんな魔法を使える時があるとは思えないからだ。まあそれでもできれば使える時が来るかもしれないから習得はしておこう。


「それと火魔法の時はしっかり周りに燃えるものがないか注意しなさいね?」

「はーい」


 まあそれはわかる。私も火に巻き込まれたくはない。

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